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外国映画主要作品日本公開史 * 1962年公開 (その3)

2015-03-17 02:47:12 | 外国映画公開史

外国映画主要作品日本公開史 * 1962年公開 (その3)

▼参考資料・スクリーン1962年ベストテン
①野いちご…イングマール・ベルイマン
②情事…ミケランジェロ・アントニオーニ
③ニュールンベルグ裁判…スタンリー・クレイマー
④太陽はひとりぼっち…ミケランジェロ・アントニオーニ
⑤怒りの葡萄…ジョン・フォード
⑥尼僧ヨアンナ…イエジー・カワレロヴィッチ
⑦ハスラー…ロベール・ロッセン
⑧夜…ミケランジェロ・アントニオーニ
⑨ウンベルトD…ヴィットリオ・デ・シーカ
⑩死んでもいい…ジュールズ・ダッシン
⑪噂の二人…ウィリアム・ワイラー
⑫ボッカチオ'70…デ・シーカ、フェリーニ、ヴィスコンティ
⑬史上最大の作戦…ケン・アナキン、A・マートン、ベルンハルト・ヴィッキ
⑭オルフェの遺言…ジャン・コクトー
⑮或る種の愛情…ジョン・シュレシンガー
⑯私生活…ルイ・マル
⑰ハタリ!…ハワード・ホークス
⑰ファニー…ジョシュア・ローガン
⑲血とバラ…ロジェ・ヴァディム
⑳逃亡者…ジョン・フォード

▼参考資料・映画の友1962年ベストテン
①野いちご…イングマール・ベルイマン
②ニュールンベルグ裁判…スタンリー・クレイマー
③怒りの葡萄…ジョン・フォード
④情事…ミケランジェロ・アントニオーニ
⑤太陽はひとりぼっち…ミケランジェロ・アントニオーニ
⑥尼僧ヨアンナ…イエジー・カワレロヴィッチ
⑦ハスラー…ロベール・ロッセン
⑧夜…ミケランジェロ・アントニオーニ
⑨ハタリ!…ハワード・ホークス
⑩ウンベルトD…ヴィットリオ・デ・シーカ
⑪噂の二人…ウィリアム・ワイラー
⑫死んでもいい…ジュールズ・ダッシン
⑬或る種の愛情…ジョン・シュレシンガー
⑭私生活…ルイ・マル
⑮生きる歓び…ルネ・クレマン
⑯オルフェの遺言…ジャン・コクトー
⑰ボッカチオ'70…デ・シーカ、フェリーニ、ヴィスコンティ
⑱史上最大の作戦…ケン・アナキン、A・マートン、ベルンハルト・ヴィッキ
⑲ファニー…ジョシュア・ローガン
⑳終身犯…ジョン・フランケンハイマー

▼参考資料・キネマ旬報1962年ベストテン
①野いちご…イングマール・ベルイマン
②ニュールンベルグ裁判…スタンリー・クレイマー
③怒りの葡萄…ジョン・フォード
④情事…ミケランジェロ・アントニオーニ
⑤太陽はひとりぼっち…ミケランジェロ・アントニオーニ
⑥尼僧ヨアンナ…イエジー・カワレロヴィッチ
⑦ウンベルトD…ヴィットリオ・デ・シーカ
⑧夜…ミケランジェロ・アントニオーニ
⑨ハスラー…ロベール・ロッセン
⑨噂の二人…ウィリアム・ワイラー
⑪死んでもいい…ジュールズ・ダッシン
⑫或る種の愛情…ジョン・シュレシンガー
⑬私生活…ルイ・マル
⑭アレキサンドル・ネフスキー…セルゲイ・M・エイゼンシュティン
⑮生きる歓び…ルネ・クレマン
⑮ハタリ!…ハワード・ホークス
⑰史上最大の作戦…ケン・アナキン、A・マートン、ベルンハルト・ヴィッキ
⑱終身犯…ジョン・フランケンハイマー
⑲脱獄…デヴィッド・ミラー
⑳オルフェの遺言…ジャン・コクトー

この年からATG(アート・シアター・ギルド)がスタート、商業的には成り立たない良質の映画を堪能することができるように
なりました。記念すべき初回はポーランド・カードル派のイエジー・カワレロヴィッチによる『尼僧ヨアンナ』でした。
人間が閉ざされた環境で自然な欲求を抑圧されたらどうなるのか、その中でか弱き人間はどう生きるのかというテーマの
もとに二重三重に屈折したポーランド社会の情感がにじみ出ており、誠実な尼僧の安らかな微笑みが瞬時に一転して神を
冒とくしてみだらな言葉を吐くシーンの欲望のすざましさにより抑圧され鬱折した人間の性を見事に映し出していました。
また、ATGの最大の功績はベルイマンの『野いちご』を配給したことでしょう。荒涼とした人生の想い出を一日の出来事に
まとめ、夢と現実、過去と現在を複雑に絡み合わせながらその内面の孤独と挫折感を独特のリアリズムタッチとみずみずしい
映像美で描き上げた映画史上最高の傑作でした。主人公イサクが見た恐ろしい夢のシークェンスはドイツ表現主義を思わせ、
ベルイマンのサイレント映画芸術への敬意の表れのようでもありました。
ATGは他にも『ウンベルトD』『もだえ』『オルフェの遺言』などの優れた非商業的作品を公開しています。
私がATGの神戸における拠点であるACKG(アートシネマ神戸グループ)でATGのお手伝いをするきっかけはこれらの優れた
作品群に感動覚えたことにほかなりません。
更にこの年にはミケランジェロ・アントニオーニの愛の不毛三部作が一挙公開されました。彼の作品には物語性はありません。
映画は感情を映像で表現するものであるという作風は知的リアリズムと称されます。その論理であれば下手なストーリーは
逆に不要なのでしょう。三部作の中でも『情事』は傑出していました。表向きでは繋がっている男女も、実際は互いに隔絶し
浮遊の個にすぎないという愛の不毛を、背景の自然を巧みに利用しながら映像化しています。ラストシーンは冷ややかな
カメラが二人を傍観するように冷酷に締めくくられています。映像美学と映像表現の教科書的な作品でした。


↑はイングマール・ベルイマン監督の『野いちご』