備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

鹿のアヒージョ 

2018-12-08 16:41:52 | 料理・食材


先日の『鹿のアヒージョ』。

今期、初登場ジビエです。
備前産、未経産のメス1歳。

シカは脂が少ない赤身。
最近は、『脂がしんどいお年頃』であるので、赤身は大変喜ばしい。
獲れたコンディションと年齢・性別によっては、爽やかな香りさえ感じる。

先日、イタリアン・シェフと呑んでいた時に、ジビエの話になりました。
「害獣駆除の有効活用ではなくて、積極的に美味しく食べる工夫をするべきだ」という意見に、激しく頷いたものです。もうムチ打ち気味。
きちんとすれば美味しいのです。野生のものは個体差がありすぎて難しいけど……。


さて、今回使った部位は、ワナに掛かった側の後ろ足の良いとこどりと前足でした。
良い部分を切り出していましたが、いつもより若干アクが出る。なるほどなぁ。

ワイン片手にヒョイヒョイとアク掬いをする。
「いつか無くなるでしょ」という悠長な心構えで。(途中で延々と続く気がしたけど)

アクが無くなったら、ローリエを入れる。
白ネギ、マッシュルームも追加。

煮立たせずに、しばし待つ。火力は抑えて。
あくまでもオイルで『煮る』という事。揚げてはいけない。

アク掬いが終わると、作業がなくなっってしまった。

片手にはワイン。

「ん~~~~~」

……となると、やっぱり焼くよねぇ。・・・・・・仕方ないよねぇ。


スライスした鹿肉をオリーブオイルで浸してから焼くのがウチの流儀。
作業の一番初めに仕込んでおいた。こういう段取りの良さは、我ながら素晴しいぞ。( ← 全く「仕方無さ」がない)

アヒージョとは味を変えたいので、細君管轄のローズマリーを無断拝借する。
香りを纏わせるようにして焼いていく。

焼いた後には、油と肉汁のミックスしたものがフライパンに残っているので、デグラッセする。
日本酒を入れて、醤油、味醂。最後にワサビを溶かし込む。ハーブは使ったが概ね和風の方向へ。


『備前産 鹿のソテー ローズマリー風味・ワサビ醤油ソース掛け』の出来上がり。

ローズマリーが野生味を添える。
ガツンとした味と香りだが、スライスしたサイズ感が丁度良かったみたい。
あくまでも食前のおつまみ。本命のアヒージョを前にして、お腹に溜まるのは宜しくない。

しかし、旨し。

おつまみ焼肉で吞んでいるうちに、アヒージョも完成。


さぁ、ジビエシーズンの幕開け。

テーブルに出した途端、子供たちが一瞬でさらってしまう勢い……。
丁寧にアクを掬ったおかげで、首尾よく出来たようです。
この後は、いつも通り、ご機嫌なワカランチンにて終了しました。

残ったオイルは翌日のパスタに使って、ひとまずキリをつけておいた。


冬野菜も育ってきたし、「お楽しみはこれからだっ!」だな。


(*^ー')b



『アーティストが作った料理 作家が作った料理』

2018-12-02 12:24:00 | 料理・食材

上記画像は、公益社団法人岡山県文化連盟のサイトから。

『アーティストが作った料理 作家が作った料理』というイベントへ参加しました。
岡山で行われているアートプログラム『芸術文化交流実験室』の一環です。(PDF:リーフレット
内容は、トークセッション&ワークショップです。


今回は、『食』がテーマ。
アーティスト、工芸家などモノ作りの人々で料理をする人は多い。中には、日記に書いたり出版したりする人もいる。
「そのような著作物からレシピを紐解いて作ってみよう」という企画です。
個人的な読書会などでは、本の内容を題材としたオヤツや料理と一緒に語り合う事もあるけれど、それのイベント版という感じ。( ← 読書会の経験は無いけどね)

別の参加動機としては、このところイベント主催が増えたので、お客さんとして行った自分が何を感じるのかを確認しに。
ちょっとズレているけれど、イベント構成、話術、自己観察を別件テーマに抱えてました。


街中の商業施設のカフェスペースに集合する。


まずは、パウル・クレーの研究者がお話を。
バウハウスへ招かれるまでの主夫としての料理作りがメインでした。
なかなか身につまされるし、共感もするし……、心中穏やかならずでしたが。

内田百閒にも触れられましたが、そもそも畑違いゆえご愛嬌。地元サービスですな。
『餓鬼道肴蔬目録(がきどうこうそもくろく)』あたりから何か出てくるかな?とも期待しましたが……。


休憩を挟んで、次はワークショップ。


ほぼ初対面な方々で、7人ごとに3チームに分かれる。
全員に小さなカップが配られる。「クレーの遺したレシピから作られたスープ」との事。

講師から「では、スープを試食して食材を想像して下さい。水以外は6種類あります」

トロみがあり、タマネギ、大麦が入っている。
柑橘の香り。
味は薄いが、旨味はある。
動物性はない。

班ごとに食材を想定したら、手順も推測して料理再現という流れ。
食材を当てても正解に辿り着くか否か……クイズみたいで面白い。

我々の班の食材は、タマネギ、大麦、ジャガイモ、オリーブオイル、白ワイン、レモンとした。
どのチームもトロみが悩ましいようで、他の班では、蕪とかコーンスターチとかも。
我々は、ジャガイモを摩り下ろしてトロみ対応する事に。

予め準備された食材以外が出てきた場合は、スタッフが買出しに走る手筈になっていたようです。
我々の出したジャガイモ、白ワインは想定外食材だったようで。

まぁ、大丈夫さ。

こういう事に興味がある方々が集まっているので、調理はサクサクと進む。
メンバーは、小学校の家庭科教諭、自治体職員、マスコミ、主婦、料理人などとの事。

皆で分担して共同で作る。

トロみの再現はバッチシ。
あとは塩分を入れたらかなり近いが、食材に入れていないしなぁ。メンバー全員が「塩、塩、塩」と。
日本の料理酒なら塩が入っているけれどなぁ……。
最後にレモンを加えてフィニッシュ。


全部で3つのスープが出来た。
それぞれに微妙に異なる仕上がりながら、どの班も「ウチのが美味しい!」と。
手前味噌ならぬ手前スープ。
面白い。


講師からレシピ発表!
食材は、タマネギ、大麦、オリーブオイル、レモン、塩、胡椒。
あんなに悩んだ『トロみ』の正体は、「スープを前日に作ったところ、一晩たったら出ていた」というオチ。
大麦由来なのだろうな。
若干「それは無理ィィィ!」という思いも無くは無いが、まぁ、笑えるオチとして。


他のレシピ再現は、予め講師が作っていらっしゃいました。

ライ麦パン、英字ビスケット、カリフラワーのサラダ、洋ナシのコンポートなど。
『食とアート』というよりは『あの人が食べたあの料理』という感じで。
百閒好みもあり。


頂いた後に解散。


外はすっかり真っ暗。

高まるクリスマス・ムード。

寄り添うカップルの無言の笑み。忘年会のおじさんの大声。
町のコントラストが面白い。

脇目に眺めつつ通過する。




帰り道。どうも主催者側で発想するのが癖になっているようで……、歩きながら企画を考える。

・美術館で絵画鑑賞があれば、尚の事盛り上がるかなぁ。

・内田百閒ゆかりの場所をツアーして、途中でお茶して、最後に料理を頂くお散歩企画とか。

・プロ料理人と作品のコラボ。
 『カンディンスキー・モチーフの平皿スイーツ』
 『点描モチーフのランチ』
 『スプーンを額縁に』
 『野獣派モチーフの刺身盛り合わせ』
 『アーティストによるお弁当・盛り込み対決』

・超絶リアルな美術作品と精進料理。
 「さて、どちらが食べられるでしょう?」

・以前、自分でやった『備前擂鉢ワークショップ』の改良点も。


なかなか、面白く学びました。(主催者の意図とズレている点はご容赦を)


皆様、有難う御座居ました。m(_ _)m