備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

柚子あれこれ

2018-11-27 12:08:45 | 料理・食材


過日、敷地の柚子を採取する。一本の木ではあるが、レジャーというよりは収穫労働。


途中でサルの集団が見に来る。窯場の渋柿を全て食べて、満腹なお腹をさすりながら睥睨されている。

うっかりその場を離れようものなら奪取されるかも知れない。
遠巻きに対峙する緊張感の中、一気に集めて家へ。へへん、サルに勝ったぜ!(柿は毎年、完全敗北)

多かったのでご近所まわりにお裾分けなども。
この日は、これだけで疲れて終了。


さて、後日に加工する。
遅くなるとコンディションが悪くなるので、時間勝負である。


まずは、ウチのメインである『柚子酢』を。
酢といっても果汁100%搾り汁。お鍋の季節には必需品である。
経験上、冷蔵庫に入れておけば3年は大丈夫。むしろ1年超えてからの方がマイルドかな。

梅の季節には『梅仕事』などという雅な言い回しはあるけれど、そんな雰囲気ではない。疲れても働く。
いや、働け!
 
家庭内ブラック手工業の始まり~~~。2升近く作った。


一段落したら、細君はマーマレードを。(写真は失念)
山の一軒家の明るいキッチンで、小鳥のさえずりに耳を傾け、紅葉を眺めながら、ハーブティーを飲み……じっくり弱火で。( ← 字面だけなら、なんてステキな!)
実態は、ブラックだけど……。
休日の朝に小鳥がさえずるより早くから始めて、落ち葉に埋もれた庭を見て、水分補給。離れられないコンロ前……である。


残った皮は、白い部分を外して干す。
柚子皮の『陳皮(チンピ)』は細かくして、七味に混ぜる予定。香りが良い。

干し場は、軽トラの荷台。サルに見つからず、イノシシも盗らない場所。


あとは、ペットボトルに種と水を入れて「化粧水がナントカカントカ……」も。
小生は管轄外にて。


ということで、諸々出来ましたっ。


以前、子供達に『6次化産業』の話をしていたところ、自主的にラベルも作って貼られる手際の良さ。



さぁ、冬の美味しいもの! 来いっ!


(……疲れた)














第11回 ふるさとあっ晴れ認定委員会

2018-11-26 11:43:57 | Weblog


『ふるさとあっ晴れ認定委員会』が開催され参加致しました。
2015年から始まり今回で第11回目。
地元の逸品などを掘り起こし、全国にPRする活動です。
今回のテーマは『瀬戸内』。エリアとして広くアピールしていこうという趣旨です。


10件の「えぇとこ」「えぇもん」「うめぇもん」がノミネート。
3件が「あっ晴れ!大賞」に認定されました。


以下、個人の感想です。
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【あっ晴れ認定大賞】

●備前おさふね刀剣の里 備前長船刀剣博物館 (えぇとこ・瀬戸内市)
 海外からの集客力、刀剣ファンに対する活動、施設の充実などが高評価。


●段落ち抜染デニム (えぇもん・福山市)/山陽染工 株式会社
 素晴しい技術力の高さに注目。可能性を多く感じました。


●ウシオチョコラトルのチョコレート (うめぇもん・尾道市)/USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)
 「素材を活かす」事を忠実にキチンと。コーヒー豆とコラボしたチョコは実に秀逸でした。


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【あっ晴れ認定】

●神勝寺 禅と庭のミュージアム (えぇとこ・福山市)          
 異なる時代の建築の歴史性、禅画墨蹟・現代アートなどを『庭』がつなぐ。立地のローカルさにこそ大きな意味がある。


●因島はっさくオランジェット (うめぇもん・尾道市)
 因島発祥の柑橘である八朔。その皮を手間を掛けて加工して美味しく。パッケージで商品メッセージが伝えきれていないのが残念。


●創作ちりめん (うめぇもん・尾道市)
 ベースとなる柔らかな塩味のちりめんジャコ。そこにトッピングされる地元特産品。
「創作」という語感の華やかさに比して、しみじみとした美味しさである。


●尾道レモンカード (うめぇもん・尾道市)
 カードとは、イギリスのレモンバター。尾道のレモン果汁にバターや和三盆を混ぜ合わせたペーストで使い道は広い。
 認知度が上がると他に無い製品なので高いシェア率が得られるかと。


●オオニシブロイラー (うめぇもん・尾道市)
 今の40代あたりのソウルフードらしい。駄菓子屋ルートで売られていて、子供にはご馳走だったのだろう。
 程よく濃く甘い味、身離れも良く個包装なので、新幹線内でのおつまみに最適かと。かなりお求めやすい価格にも驚き。


●和氣“syuwasyuwa”りんごのうた(うめぇもん・和気町)
 シードルとしては、酸味と甘味が強くて炭酸は軽め。飲み応えが強いので料理に幅広く対応できるだろう。
 瓶のエチケットのデザインがカワイイ。備前焼シードルボウルとのセットもあるが、パッケージが残念。


●自然酵母・瓶内熟成のkotiビール(うめぇもん・備前市)
 まさに驚愕。自然酵母の発酵で、こんなにも爽やかな香りと味わいのクラフトビール。瓶のデザイン・色も良い。
 かつての『地ビール』ブームでの高くてイマイチなお土産イメージとは隔世の感。

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商品の良さはどれも素晴しいものでした。
パッケージを含めたデザインで、「内容を伝えられているか?」「手にとってもらえるか?」という部分が評価上のポイントになったかと思います。
オンリーワンな技術力と突き抜けたマニアックさはやはり高評価に。
足を運ぶ価値あるローカルさこそ最大の武器であり、アピールすべきところかと。


ワタクシ事ながらも非常に勉強になった一日でした。


皆様、お疲れ様でした。


有難う御座居ました。m(_ _)m




 



備前産素材で、フレンチ&イタリアン

2018-11-21 12:15:20 | 料理・食材


過日の事。
倉敷でのグループ展会期中でしたが、細君とディナーへGO~~。
岡山の玄関口のホテルにて、『備前の里海里山の恵み』が主題で開催されました。

シェフは、岡山を代表するイタリアンシェフとフレンチシェフ。
イタリアンとフレンチの融合コースというのが興味深い。コースの組み方は、どのようになるのだろうか?
予想するにイタリアンシェフのスペシャリテ『リゾット』が出るだろう事にも期待大である。

スタートは、シェフのご挨拶から。開始前から作り手が楽しんでいる感じが出ている。

満席一斉スタートなので、時間配分が出来ているのだろうなぁ。余裕感じるなぁ。自信もあるだろうし。

開始!


『ブイヨン・ド・レギュ-ム』

このレストランのお決まりのスタート方式。本日のブイヨンを小さな器で頂く。
瀬戸内ブルーを意識した瑠璃釉の伊万里、島のようにひとつ備前が。
野菜エッセンスが複合した奥深さ。戻り香が心地よい。口の中が温まって期待が高まる。
幕開けにふさわしい一品。


『お魚と野菜の一皿』

フレンチシェフの「野菜の素材感をダイレクトに味わって欲しい」との事からサラダから。
混ざっているのはコハダ。コハダにしては味が濃い。口の中でペターっと広がって行きそうな脂を野菜がキュッと纏める感じが面白い。
ドレッシングの油を魚の脂に置き換えるという感覚なのか。足し算なのか引き算なのか判らない絶妙なバランス。
シャキン!とした葉物に対して、根菜類のホッとする食感。

野菜なのにワイン切望。

ワイン。

岡山で注目されているワイナリーのもの。


『蛸とトマトの一皿』

黒いのはイカ墨。トマトビネガーは初めて。トマトの香りが強く立つ。
注目したのは蛸の切り方。蛇腹の切れ込みに味が入り、噛み切りやすく、野菜と合わせても口の中でタコだけが残らない。
複数の素材が乖離しないカットなのか。
これ、今後、拙宅でも真似するわ。



『海老とお米の一皿』

イタリアンシェフのスペシャリテ。この日はこれ目当て。個人的にはメイン相当だ。シェフのリゾットを頂くのは3回目かな。
お米は岡山産『ひのひかり』。大粒の品種でスープの吸い込みも多いので、ふっくらと。
上に掛かっている『ゆかり』の様なものは、スマックという中東のスパイス。味は……ゆかり。
……ということは、自宅で再現する時には、ゆかりだな。
 (厚さのあるエビに火を通しつつ、堅くならない方法は後でシェフに訊いた。これも真似するぅ)

「しかし、和食ならご飯が出たら終わっちゃうしなぁ。途中でお米が出て、この先はどうなるのだろう? お米は野菜という西洋感覚なんだろうなぁ」と要らぬ心配をして、内心ドキドキ。
さてさて……。


『貝類と蕪の一皿』

「そう来るか!」という一品。「……これ、茶碗蒸しだわ」
出汁で味覚をリセット。箸休め的な一品を挟んで落ち着いてメインへという事ね。生の蕪の清涼感ある香りで嗅覚もリセットされる。
前の皿からは『味のグラデーション』となり、次の皿へは『味のコントラスト』になっている。最高の脇役プレーだなぁ。
出汁の余韻をもってメインを待つ。高まる期待。
ワクワク!


『渡り蟹と木ノ子の一皿』

濃厚ッ!!
本日、一番の濃厚なソース。渡り蟹はパイ包みにする事で形も取れて無駄が無い。しっかりとした塊になるパイ包みって良いなぁ。
これまでの素材を感じる淡い味、香りなどから、一気に渾然一体とした濃厚さへ。
打ち上げ花火を見るような破綻無いアッチェルランドな展開。
いやはや……。


『みかんと白インゲン豆の一皿』

野菜に拘りたいフレンチシェフが、白インゲン豆を形を残して甘く炊いたとの事。想像すると愉快にも。
そして、この時期には酸味がある温州みかんは、直接産地で特に甘いものを選別し、丸ごとコンポートに。見ただけで判る丁寧な仕事。
アイスでクールダウンされて、大輪の花火がスッと消え、印象だけ残ったかのような充足感。

一幕のドラマのような美味しい時間でした。

一品の存在感と順番に役割があって、それぞれが確立しつつ全体を作る。
きっと、あの人なら「我々の間には、チームプレーなどという都合のよい言い訳は存在せん。有るとすればスタンドプレーから生じる、チームワークだけだ」って言うんじゃないかな。( ← 違っ!)


お皿チェンジの間にはシェフ二人が漫才、……じゃなくて、解説してくれるのも楽しくありました。


それにしても、普段買い物先で見かける備前の食材が、斯くも変わるプロの技術の凄さ。


細君もご機嫌にて、良い時間でした。 

有難う御座居ました。 m(_ _)m






















映画 『ずぶぬれて犬ころ』

2018-11-14 17:32:50 | Weblog


最近、映画を観る事が少なくなった。もともとお気楽なドンパチSF映画を観る事が多かったけれど、それでさえも。
久し振りに映画を見た。良かった。

先日、『岡山映画祭2018』という映画のフェスがあった。
数年前に袖触れ合う程度のご縁ながら、同じアートプログラムでご一緒した監督さんも出品されている。

『ずぶぬれて犬ころ』という一般初公開の作品。

内容は、現在いじめにあっている少年が、住宅顕信(すみたくけんしん)の俳句に出会い、彼の短い生涯をたどる物語になっている。
住宅顕信は、岡山県の僧侶にして自由律俳人で、1987年に25歳の若さで亡くなった。生前残した俳句は281句。



小生が大学入学の頃、バブル期のイケイケ空気感の中『サラダ記念日』がブームになっていた。
キラキラした『自由律俳句』の世界を横目で眺めつつ、現代音楽の不協和音に身を沈めていた日々だったか。
刹那的な輝きのバブルを少し味わっていた生活。

卒業して弟子入りする。程なくバブル崩壊。
全く畑違いの分野に身を投じた生活は、楽しかったけれど漠然とした不安もあった。不景気も感じていたし。
その頃に、ちょっとした住宅顕信ブームがあった。

久し振りに聞いた自由律俳句という言葉。
『サラダ記念日』のキラキラした世界ではなく、地面に近い視線、冷たさ、自暴自棄さえもあるその句に目を惹かれた。
自身の抱える不安感と共鳴したのかも知れないなぁ。

それから随分と時を経た。今回の映画は、再び目の前に現れた住宅顕信だった。
監督も知っているし、句も知っている。

見に行った。


映画は、実に淡々と描かれていた。
俳句という削った文学に対して、映像の削り方が対峙しているかのようだった。
いじめシーンであってもカメラはぶれることなく固定され、視点の高さもほぼ変わらない。
場面転換での旋律と言うにはあまりに短い数音のピアノが効果的。その前後にあるセリフの声の高さとピアノの音が近い。一旦、声が音に置き換わる事が場面を繋ぐ接続詞のようだった。
過去と現代を行き来する事で、冗長さが無くドラマが進む。

ラストシーン。
現代軸側の少年が横断歩道で見せる視線。顕信の句を知った者の生きる覚悟があった。
少年はまだ不安定さはあるけれど、自分で歩ける強さを秘めた。大丈夫。
生涯は信号のように期限があるけれど、二つの時間軸がひとりの中で合わさって映画が終わる。

余韻。

ちょうどオーケストラの指揮者が交響曲の最後の一音を止め、自分の動きも止めて、しばし後にゆっくりとタクトを下ろす……。その間合いを見るようだった。


来春には、一般公開されます。岡山では、シネマクレールとか。
ご機会ありましたら是非。


今回は終わってから座談会なども。

主演された俳優さんが、「知ることによって生き継がれていく」という趣旨で話されたのが印象的でした。
「このあとは、多分、岡山ラーメン食べて帰るんだろうなぁ」などとも。


久々に良い時間でした。

有難う御座居ました。