備前焼 やきもん屋 

備前焼・陶芸家の渡邊琢磨(わたなべたくま)です。陶芸、料理、音楽、路上観察……やきもん屋的発想のつれづれです。

街角の現代華道

2013-04-26 20:57:16 | Weblog


外出先の駐車場植え込みに打ち込んであるパイプ。そこから花が一輪。

これは、なかなかな現代華道です。(いや偶然ですし)


まずはその器。
素材感剥き出しの切立の素朴な円柱形でありながら、口辺は圧力を感じさせる形で処理。
基本は姥口ながらも敢えて均等に潰さずに、外方向への歪みを2ヶ所作っている。この作為を感じさせない思い切りの良さに作者の技量が伺える。
山道と突起がある事によって狭小空間に広がりを与えているのは確かだろう。実体はミニマムなのに印象に残るスケール感は次第に大きく感じる。
特に下から上へ視線を移す場合、目線に従って単調さから一気に破調・破綻へと変容するダイナミックさには心地良ささえ感じる。
単純に見れば『静から動』であるが、しかしながら、この外見に付随してメッセージ性を感じずには居られない。
静から動、安定から破調、平穏から破壊……。
昨今の自然災害に関する「喉元過ぎれば…」という我々の無自覚さ、無関心さ、蒙昧さへの警鐘ではないだろうか。『無常』の提示とも言うべきか。
さらには、円柱の其処此処に現れる小さな錆が、次第に口辺部分に至って、密度を増す様子からは切迫感さえも感じとれる。
一見、無造作に見えつつ計算と想いが凝縮した逸品と言えよう。

そして、花。萎れかかった長実雛芥子(ナガミヒナゲシ)が一輪のみ。
器のダイナミックさを花の先端を垂らす事によって再び『静』へと鑑賞者の気持ちを回帰させる仕掛けになっている。
そしてこの萎びた風情は、一般的な花を生ける行為に内包される無意識的な『美しさへの求道心』を見事に裏切っている。
この風情こそが作者の真骨頂であろう。
ここには、時間経過のみならず夏へ向かう気温上昇、地面からの輻射熱、生暖かな風を感じさせるには充分な気配がある。

そぎ落としたストイックさが饒舌な事もあるのだ。

この器と花の関係性こそが、鑑賞のポイントである。


……とか、チラッと思ったけれど、そんな事は全く無く。ただの偶然。


最近「花入、作らんと~~」と思っているから、見た造形に無意識に理由を求めるのでありまして。

(^。^ゞ 恥ぃ~~。


ちなみに雛罌粟(ヒナゲシ)と言えば、
「おっっかのう~え、ひぃっなげしの花でぇ」とか、
飼育係じゃなくて……いきものの係のバンドが歌っていたりとか、
古くは戦前の海外歌謡の「アマポーラ~、ア~マポォォラァ~」とか、
CMでちっちゃい漫才師さんが叫ぶ「車にポピィ~~」とか
「ひょっとして兄妹か?」みたいなアニメ映画の「コクリコなんとかから」とか、
明治文豪の小説『虞美人草』など、
あちこちで異名が散見されます。


ヒナゲシ、アマポーラ、ポピー、コクリコ、虞美人草……。

沢山の異名がある事で、如何にこの花が愛でられてきたかが判ります。かわいい花。
もっとも、このナガミヒナゲシは近年の帰化植物らしいです。初確認は1961年とか。


さてさて、仕事せななぁ。花入、花入。


あっ、
本日より『ギャラリーしょうざん』さん(備前市香登)にて、
『備前焼作家集団けらもす』でグループ展をしております。これ大事。


_________


■ 備前焼作家集団けらもす展 ■

会場 : ギャラリーしょうざん
日時 : 4/26(金)~5/6(月) AM10:00 ~PM5:30

住所 : 〒705-0012 岡山県備前市香登本599
電話 : 0869-66-7000

_________


是非、御高覧の程。m(_ _)m
時々、会場に居ます。




草刈シーズン前に旨し

2013-04-19 19:36:22 | 料理・食材


ここのところの陽気で、家の周囲の雑草がモーレツに勢いを増している。
三つ葉を植えている辺りもすっかり草に覆われそう。そろそろ一度草刈をして三つ葉を優位に立たさねば。
ガーデニングも畑仕事も植物のエコヒイキから始まる。この場は各種薬味の植物が大事。
そろそろ草刈機をスタンバイせねば。

草刈機でなぎ倒してしまう前に、ひとまず三つ葉をザル一杯採集する。
今日の場合、雑草であるかないかは「食えるか食えないか」である。

ちょうど頂き物のちょっと上質な塩鮭が御在宅中。
少し焼いて酢飯に混ぜ込んで、三つ葉をふんだんに使ってみよう。
勿論、鮭の皮も刻んで入れる予定。ここ数年皮の美味しい塩鮭にすっかり出会わないけれど、これはどうかなぁ。

混ぜご飯……というか混ぜ寿司。
ご飯さえ炊ければあっという間に出来るメニューである。お弁当メニューにも最適。明日の子供のお弁当はこれで決まりだ。
食材の置き換えでバリエーションは自在。鯵、ツナ缶でもOK。紫蘇、荏胡麻でもOK。
調味料次第で和洋中韓印……ん~~、亜細亜、南北亜米利加、欧羅巴、阿弗利加、何遮爾な味付けにも。(よく知らないけど)

昔でいえば、『かてめし(糅飯・糧飯)』の範疇かな。「如何に美味しく増量するか」である。
お米って偉大。現代の日本で良かった。

本日はワールドワイドな展開ではなく『和』です。
米酢が些か足りなかったのでレモン果汁をプラス。
レモンの香りと少しの塩気、摘みたての三つ葉の瑞々しさが良い。
歯応えとして、ちりめんじゃこ(頂き物)と白ゴマも投入。皮も忘れずに。


頂き物と摘んだもので本日のご飯が完成しました。




ん~~、旨しであるよ。

なかなか良い組み合わせでした。しかも、このエンゲル係数の低さ! (自己満足~~)



『牛窓クラフト散歩』へ

2013-04-14 22:22:32 | Weblog


今日は牛窓へ。(日生でカキオコも頂きましたが)

牛窓はかつて5年ほど住んでいた町。
その頃は鄙びた雰囲気と都会人への不器用なアピールが綯い交ぜになった時代だった気がします。
幼少の頃から住んでいた神戸では自室から毎日海を眺めていました。なので、海が見える場所に住む憧れはありましたが、縁あって現在の山奥へと移住しています。
それだけにちょっと独特な思い出がある町。

久しぶりに来た牛窓の印象は『光の多さ』でした。波に煌めく光は山暮らしにはない。意識しない視野の端に感じる光が眩い。
「海は良いなぁ」

かつて住んでいて土地勘があるだけに尚更その想いは募る。相変わらず電線は邪魔だけど。
曇った時に垣間見える日常性もまた良い。



さて、今日の訪問は『牛窓クラフト散歩』というイベントに合わしての事。
会いたい作家さんや見たい作品があって訪れた。……というか知り合いのギャラリーの企画によるものであったというのが最大の理由。
作家とギャラリーという関係抜きで知り合った方であるので、純粋にその企画を見ておきたいという想いでもあった。
随所に「なるほど~」と勝手に思いつつ、今日は完全に観光客目線でした。
作家さんとも多く出会いました。「あらあら」「やぁやぁ」という挨拶でそそくさと。


歩く速度で見る風景は、住んでいた時には気付かなかったものへ目が行きます。

かつての商店の微妙な波打ち具合の窓ガラスに、手仕事の痕跡を見てその時代を感じたり。手の込んだ建具の意匠に目が行ったり……。

いや、そもそも木製サッシが現役なのが凄い事です。

映画のロケ地でもあった路地の看板に、今や幻の商品を想像してみたり。



最後に訪れた作家さんの所では、暖め中の構想の話を少し。
未知の企画について話している最中に、旧知の地元の方と10年振りに再会。時間軸が行ったり来たりしました。
その後、ご自宅でコーヒーを御馳走になり、更にはお土産もたんまりと頂戴しました。

今日はウロウロとしているだけで「有り難や~~~」な一日でした。


さて、明日からはガッツリとがんばろっ! と。



春の芹

2013-04-11 19:47:16 | 料理・食材


新年度がスタートしたので地区総代もボチボチお役御免が近づいてきた。思えば知らない事ばかりで(いや、今もそんなに変わってないんだけど)「前例に倣う」という慣習に則り、無事に終了しそうです。
今日はおそらく最後になるであろう総会の委任状配りをしました。

そのうちの一軒は、小生と同じくアイターンの方。「やぁやぁ久しぶり」と立ち話。帰りがけに「芹いる?」と訊かれて「はい」と即答。見れば田圃の片隅でガッツリと繁茂している。
遠慮なく大量に頂きました。まぁまぁ太くなってきているけれど全く問題ない。


さて、何にするか。
芹は、和風のおひたしだけでなく中華料理でも美味しい。
中華料理では葉物を茹でる時に、油を入れたお湯を使う事がある。見かけの綺麗さもあるけれど味わいにも関わる。

今日はそれですな。

脂(油)を加える事で、舌上に味が残りつつ、鼻腔を香りが抜けるという効果が生まれる。肝心なのは、何をどれだけ……である。
冷蔵庫を見繕うと、ミンチさんが御在宅。冷凍庫の鶏ガラと共にシンプルな肉団子スープに仕立てる。最後に芹を大量に投入~~。
鮮やかな色になったらOK。余熱でも火が通るので、あとは素早く頂くべし……である。


大量である。……で、

いささか芹の量が多かった。(いや、気付いてたけど)。
鍋蓋を開けると香菜(ツァンサイ)の如く、むせ返るような香りが。う~~む、料理屋なら別鍋で仕上げるパターンだったのかも知れないな。既に時遅し。
「これもまた春」という解釈で、美味しく頂きました。


「香り」と言えば聞こえが良いけれど、多すぎるとアクである。量が肝心。まぁ、今回は単純に野菜の量であったけれど。

他の山菜でも美味しく頂く為には、どこまでアクを抜くか? どこまで下処理するか? が大事。
アクを消しすぎると野趣に欠ける。いつも悩ましい。

特に蕨(ワラビ)は注意。
重曹は簡単だけれども、量と時間を間違えると歯応えが柔らかくなりすぎる。茹で過ぎた場合は、もう包丁でトロトロに叩いて三杯酢で。これはこれで好き。
幸いにも、小生はやきもん屋であるので灰があるので、毎年これが大活躍する。結局のところ「昔ながらの方法が確実」という結論を毎年感じて春が終わるという次第。
それでも茹で過ぎる事があるけれど。

筍の場合は田舎の立地として簡単。
鍋を火に掛けてから取りに行く位が良い。掘って、即、処理すると面倒な事にならない。
ただし、コイン精米機の米ぬか(無料)がこの時期だけ密かに奪い合いになる。毎年、筍が出てきてから「あっ、そういえば」という段取りなので苦労する。
淡竹(ハチク)なら問題ないんだけどねぇ。


さてさて、山菜の成長と共に散歩に出かける距離が長くなってきました。
番犬福助クンにとってはラッキーな時期です。


すっかり陽も暮れて、ゆるゆるとやっていますが、やはり春は日本酒ですなぁ。








湯郷 陶器のお茶会 

2013-04-05 12:22:59 | 展覧会・ご案内


え~~と、昨日は湯郷でした。
湯郷温泉アートプロジェクト 陶器のお茶会』です。

湯郷温泉の宿泊施設やギャラリーや各種施設のあちらこちらに県内の陶芸家の作品を展示しています。
今日、帰り道にさらっと見て回りましたが、それぞれの空間の特徴を活かしつつ展示が出来ていたと思います。

小生は、ガラス作家さんのアトリエ・ギャラリーをしばし、3人で占拠しています。
快く場を提供してくださったアミーゴに感謝。
作品を見ながら、バランスを取りつつディスプレイ。初めての組み合わせの面々でしたが、なかなか上手くいったと思います。


さて、一緒に展示しているのは、ピーマンさん……じゃなくて加藤直樹さん。
アートです。完成度高いです。一緒に作業しながら「ぬぉ~」と言ってました。
朽ちていく風物や髑髏が良いです。メメント・モリです。


そして、小峠貴美子さんはお人柄の雰囲気に通じるふんわりとした粉引きと染付がめっちゃラブリー。
豆絞りみたいな水玉は以前から注目していたので今回はすごく楽しみでした。
バリエーションがあって楽しい空間です。



そして、この場を提供していただいたガラス作家の岡本常秀さん。

濃密な作風ですが、意外と(?)クールな仕事もされていて「ほほぉ~」と新たな発見。
鉱山ガラスという名前で、そのものズバリ材料の採取地から命名されていました。


もう、どれもこれも「欲しい~~」となっていました。ちょっと鼻息荒かったかもよ。

拙作は、このところお気に入りの『柊鰯』をずら~~と窓辺に並べてみました。
今回は加藤さんの窯で焼いてもらった白があります。なんだか神格化というか……釜揚げか?
通りすがりの猫に見られました。猫に気に入られたらホンモノですが、気がついたら居ませんでした。┐('~`;)┌


搬入後は各会場でバラバラに展示しているヤキモノ屋さんが一同に会しての呑み会。

忙しいので不参加の予定でしたが、搬入していて「これは参加せねば!」という心持ちになって急遽、強引に参加させて頂きました。
関係各位の皆様ワガママでゴメンなさい。「いや、ビールが旨い!」と久々に痛感。


さてさて、本日は昼前に帰宅して、今から犬島へ搬入。

明日から天気が大荒れとか……。
一応、先に表明しておきますが、小生は「晴れ男」ですから。(誰じゃ~~)