教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

日本の半導体はなぜダメなのか?(上巻)

2010-03-11 00:00:16 | 経済/経済/社会
ひところの日の丸半導体の勢いに比べれば、いまの日本の半導体産業はもう目も当てられないくらいに落ちぶれている。
国籍別のシェアでいうと、そろそろ全盛期の半分を割ったんじゃなかろうか。

ちなみにわたしも電気屋に一枚噛んでいるもんで、こういうのは実にお恥ずかしい話だという感じもする。
その業界人にやや近い立場の者から見ても、日本全体の将来ならともかくとして、もう日本の電気屋には未来はないと感じるものがある。
株やっている個人投資家という立場から見ても、日本の電気屋で買ったのはザイン(6769)とJパワー(9513)のみであって、大手メーカーなど全く買う気が起きない有様だ。

では、なんでこうなってしまったのか?

この問題はバブルが弾けてから延々と議論され続けてきた。
いわば古くて新しい問題だと言ってもいい。

数年に1度の頻度でいかにももっともらしい説が現れては消える。
そんな中、未だにそれについての議論は収束してはいない。

それを順を追って思い出し、今の現状分析を行ってみよう。
そして最後に個人的見解を述べてみたい。



まず、落ちぶれ始めたころ。
1990年代前半に出てきた説はこうだった。

1980年代後半の日米半導体貿易摩擦問題によって、当時は日本の輸出関連企業が叩かれていた。
中でも半導体業界は叩かれまくっていた。
アメリカ政府がなりふりかまわずおかしな規制を始めそうだと業界は感づき、当時はしかたなく自主的に外国製の半導体をムリヤリ買って使おうとしていた。

今の欧米製はともかくとして、あの頃の外国製半導体は一部をのぞいて多くは納期や品質がクソだった。
日本のセットメーカーはそんな半導体じゃあ使えないからというので、製品を買う立場から技術指導を行った。
日本の製造装置メーカーも、自分たちの商品である半導体製造装置の使い方を伝授するという方法で指導を行った。

結果、日本の技術は流出した。
だから日本のシェアはどんどん落ちていったのだ。

・・・という説が当初のものだ。

当時これはもっともらしく聞こえる唯一の説だった。
しかしこれでは現状の説明はつかない。
首位から落ちぶれてなお今も落ちぶれ続けていることの説明ができないのだ。



そうこうしている間に別の説が言われ始めた。
1990年代後半に出てきた説である。

アメリカの半導体産業が絶不調だったときでもインテルだけは別格だった。
それは、日本のお家芸だったDRAMから早々と撤退し、高付加価値のCPUに特化したからだった。

今も昔もDRAMに比べればCPUはべらぼうに高く売れる。
CPUは論理回路の設計能力が問われるため、いいものを作れば高く売れる。
対してDRAMは規格品でありコモディティーでしかないために、高くは売れない。

コモディティーなんだったら先進国で作るよりも、低コストに作れる発展途上国で作るほうが有利になる。
そのほうが電気代も土地代も人件費も安上がりになる。

DRAMだけで勝負してもいずれ他の誰かに負けるのは歴史の必然なのだ。
だから日本もインテルを見習って、高付加価値の半導体にシフトするべきである。

日本はセットメーカーが使うための専用の半導体をよく設計している。
だから作ろうと思えばCPUも作れる。
もともとDRAMは得意分野だ。
だからその両方を併せ持つ商品を作れば絶対勝てる。

・・・というのが2つめの説だ。

それはシステムLSIなどと呼ばれた。
1chipの中にCPUもDRAMも周辺回路も全て入れたような、1個あれば機能が完結する半導体である。

日本の大手半導体メーカーは1社の例外もなく全員ともシステムLSIに活路を見出した。
結果、製品になったシステムLSIは良いモノができた。
絶対勝てると踏んだのは間違いではなかった。
システムLSIの分野では日本の独壇場だった。

しかし儲からなかった。
キホン的にシステムLSIとは顧客ごとに仕様をすりあわせて作るものだ。
だから1製品あたり1個のシステムLSIを開発せねばならなかった。
開発費用ばかりが常にかかり続け、かといって汎用品ほど売れるものでもない。

結局のところ、勝負に勝って商売に負けた的な、原因は分かっているような分かっていない様なというもどかしい気分を味わいながら落ちぶれていった。



21世紀に入るかどうかのころ、また新たな説が現れた。

その説の論者は半導体など作るだけなら誰でも作れるのだといった。
誰でも作れるのならば、スケールメリットがあるほうが当然勝つ。
スケールメリットを生かすためには莫大な投資を行いライバルに生産キャパで圧倒するしか方法がない。

そんなことは誰でもわかる。
大手メーカーの経営者なら当然だ。

しかし、お金が無い。
半導体業界にはシリコンサイクルという独特の好不況の波がある。
シリコンサイクルの谷のときは特にお金が無い。
そんな中、大赤字でもガンガン設備投資をするのはかなりの度胸がいる。
大手半導体メーカーの経営者はそれにビビってしまった。
不況で投資を減らしてしまった。

ところが海外はそうではなかった。
大赤字でもガンガン設備投資していた。
日本の大手半導体メーカーはシリコンサイクルの谷が来るたびにおいていかれた。
不況のほうが製造装置を買い叩けるから、なおさら差が開いた。

・・・というのが3つめの説だ。

これを改善するためには度胸がある経営者に首をすげ変えれば良い。
ただそれだけだ。

・・・つうか、そんなんで良いわけあるか(笑)。
しかしそれでも当時はもっともらしく囁かれていたんだよな。



2000年代の半ば、そしてまた新たな説が現れた。



(次回へつづく・・・)