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アニメ感想:化物語 第2話「ひたぎクラブ 其ノ貮」

2009年07月12日 18時47分55秒 | 2009夏アニメ
限りなく会話劇で恐ろしくアニメ的でない物語を演出が支えるという構図は1話同様。特にAパートは新房監督らしさが溢れ、見応え聴き応えがあった。
一転、一気にシリアスなBパートの演出は物足りなさを感じた。シリアスになり過ぎない空気感を出したかったのかもしれないが、主人公の暦によるひたぎの過去の説明描写は精彩を欠いた。

「蟹」の演出は最近の流行という感じでもうひとつといった印象。特に蠢く漢字は、『蟲師』で初めて見たときは衝撃的だったが(それ以前にあったのかもれしないが)、このところ見かける機会が多く既に陳腐化してしまった。

解決が決して救いとなっていない点は好感が持てる。だが、最大の問題は、ひたぎがツンからデレになってしまったことだ。これにより作品の魅力が99%減少した(笑。デレは敗北だよ。

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感想:『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』

2009年07月12日 15時13分14秒 | 本と雑誌
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初桜庭一樹。

ライトノベル作家から直木賞受賞作家へと変貌を遂げた著者の転機ともなった作品。初刊行は富士見ミステリー文庫レーベルだが、本作はライトノベルではないと言えるだろう。少女小説の枠組みと少女マンガの感性を強く感じた作品だった。

日本海沿岸の地方都市が舞台。エンターテイメントの系譜として大都市型と地方都市型が存在するが、この作品は後者の典型例だ。舞台の閉鎖感、町の外の存在、日常の風景の随所にその空気が感じられる。個人的な好みでは地方都市型の作品は好きではないが、地方都市でなければ成立しない作品となっている。

昨日の記事で書いた西尾維新などと共にゼロ年代を代表する作家であり作品であることは間違いないだろう。現代の空気を端的に捉えていて、それは虐待やひきこもりといったテーマ性ではなく、クラスの雰囲気や主人公の心性においてよく現れている。
ただ社会や世界に対する主人公の距離感は、西尾維新や谷川流とは明確に異なる。それは主に主人公の性差や著者の性差に基づくように感じられた。少女マンガに連綿と続くリアルさをしっかりと受け継いだ作品に思えた。どうしても観念的な要素が強くなる男たちに比べて、観念的になり切れなさを滲ませる女たちという構図は、少なくとも近代日本では普遍的なものであり、現実でもそれは未だ引きずる問題と言えるだろう。

この作品の特徴として、冒頭に結末が示されている点が挙げられる。海野藻屑という現実離れしたキャラクターに強い存在感を与える手法となっている。一方で、ラストがやや弱くなってしまう弊害は避けられなかった。それでも、藻屑と主人公のなぎさとのやりとりが読み手の知る悲劇へと突き進んでいく切なさとなって心に届いてくる。

なぎさの兄については、ラストは正直ファンタジーに感じられた。一方、先生の存在は非常に強く印象付けられた。最近というかここ十数年、大人の存在の希薄な作品が多いだけに、ある意味救いのようにも感じた。
いろいろと欠点も目立つ作品だが、それでもなお一読に値する作品と言える。