久し振りの「かくしゃくヒント」です。
北九州市若松区にある響灘緑地グリーンパークのバラ園技術顧問 小林博司さん。81歳。この「グリーンパークローズ」は小林さんが育種されたのですって。
バラが新品種と認められるには、気の遠くなるような過程があると聞いたことがあります。
たまたま出来上がるようなものではないのだそうですよ。まず、自分の作りたいバラが鮮やかにイメージされているはずです。(それだけで豊かな右脳の証明ですが)花びらの形、色、そして数。葉も色や艶や大きさ。香りだって関係あるかもわかりません。そのイメージがあるから努力が続けられるのでしょう。
入口で「ローズフェアが終わったばかりで」と申し訳なさそうに言われたのですが、とんでもない!立派に咲いていました。
一つずつ近寄って確かめます。写真家秋山正太郎さんは霧吹きで水滴を付けてバラを撮影したそうですが、朝方の小雨が撮影効果をあげてくれます。
グラデーションのある花もきれいに咲いています。
清楚な白。
伊豆の踊子を発見しました。よく病気に弱いと耳にしますが株そのものが元気で葉もつやつやしていました。
そこに、小林さん登場。この腕が小林さん。
ここから会話が始まりました。
「もう、50年近くなるかな。家を建てて庭がちょっとばかりできたので花でいっぱいにしようと思ったんです。そこでバラ。植えてみると今度はきれいに咲かせたい。それであちらこちらのバラ園に行っては研究したんです。広島にも行きましたよ。
ところが何も教えてくれない!そこでどうやったかというとゴミ捨て場に行って、袋を見るわけですよ。肥料や薬やそれを表にして研究しました」と笑いながらお話が弾みます。
実は平成27年から3年にわたって「バラの育て方講座」を開かれたそうで、その記念誌を見せてくださいました。
この記念誌で、小林さんのお人柄がもっともっと迫ってきました。
「バラを育て出して多くの人たちとの出会いが有り共に勉強して来ました。平成27年から始めて育て方講座で出会った皆さんとの3年。多くの感動を戴き大変心豊かに過ごすことが出来ました。これからも皆さんとの出会いを大切にし共に楽しい人生を過ごしていきたいと思っています」この巻頭言で一番迫ってきたのは「共に楽しい人生を過ごしていきたい」というところです。そう、人生は楽しくなくっちゃあ!
受講生の皆さんのページもありました。
皆さんのコメントからは楽しかった教室の様子が伝わってきました。そして皆さんがさらに一層のバラ好きになられた様子も。受講して仲間ができて楽しいと書かれている方が何人もいらっしゃいました。
どんな教室だったのかは、裏表紙の言葉が象徴的に語ってくれます。
「あなたと過ごした時間は私達の宝物です」
小林さんのお宅の写真も発見しましたよ。すごい!
話は小林さんとの会話に戻ります。響灘緑地のオープンは1992年だそうですが、バラ園のオープンは聞きそびれてしまいました。
「ここにバラ園ができることになった時に、実は若松区役所に勤めていた関係で『バラやってるんだから、ちょっと行ってやってこい』と言われてここに来たんですけど。それからずーと。定年になっても結局、来続けています」
私「秋バラはけなげに咲いて好きなんですが、ここのバラたちはとっても元気ですねえ。株も元気で花も多い」
「秋バラを咲かせるのは簡単、簡単。夏の手入れひとつ。株を元気にしてやっておくとちゃんと咲きます。ここのバラたちは元気でしょう」と先に立って案内してくださって、グリーンパークローズのところに連れて行ってくれたのです。
実はここへは中学校の同級生の岩男さんが連れて行ってくれました。先日フェイスブックで「友だち」になっていましたが、会うのは55年ぶり。ちゃんと分かり合えるだろうかとちょっと心配でしたが、運転席の笑顔を見てほんの少し時間がかかりましたがもちろんわかりました。面影は半世紀たってもちゃんと感じられるものだと感動しました。
笑顔のお二人。岩男さんも海外から帰国後は地域の皆さんとカラオケを楽しんだり介護予防の体操教室に行ったり、サイクリングが趣味です。先日もしまなみ海道までサイクリングに行ったんですって。(フェイスブック情報)
こういうイキイキとした笑顔を見ていると、私達はほとんど同時に「認知症にはなりそうもないなあ」と思うものです。イキイキとした表情は、その人の前頭葉が元気がいいことの証明です。
前頭葉が「何をして楽しもうか」とワクワクしているんです。
ちょっとためらいもあったのですが、思い切って伺ってみました。
私「公務員時代、変り者って言われたでしょ?」
「ああ、そうだよ」とこともなげに言われて言葉は続きました。
「公務員って、だいたい新しいことをやったり挑戦してみたりってしないんだよね。ボクは人と同じ事やるより、何か工夫して独自のことがやりたい方だったからね。それに組合もやったし、『やめます』って言おうかと思うことも何度もあったけど、仲間がね~『小林さんにやめられたら困る』って言ってくれた。ま、いずれにしても変わった公務員だったことは間違いないけど。何度も変わってるって言われたよ(笑)」
認知症への近道は「生きがいも趣味も交遊もなく、運動もしない」つまり脳を使わないナイナイ尽くしの生活をすることなのです。ナイナイ尽くしの生活は、もともと持っている脳の老化を加速させます。
逆に、認知症の予防は、いかに脳を使うかということにかかっています。そうすることで脳の老化はなだらかになり、年齢に比べてより若い脳機能を保つことができるのです。その状態を「かくしゃく」と言いますね
自分らしく、楽しく、仲間と一緒に。
小林さんの生き方は、お手本のように脳の元気を保つ生き方でした。とっても嬉しかったです。