脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

かなひろいテスト―興味深い前頭葉機能テスト

2016年02月01日 | 前頭葉の働き

慢性疲労症候群が子供にも見られるそうですね。
理化学研究所や大阪私立大学の研究チームが患者の脳の働きを調べたそうです。(日経新聞、1月24日の記事)
「ひらがなの文章を見せ、文中に含まれる母音を探すとともに内容を理解するテスト」を行い、fMRIで脳の働きを観察したそうです。

「まあ、かなひろいテスト!」このテストは、エイジングライフ研究所が二段階方式で用いている前頭葉テストです。
認知症にかかわっている方たちにとっては「かなひろいテスト」は「認知症」のテストと思っている人も多いでしょう。
そうではないのです。
「かなひろいテスト」は前頭葉の働きのうち、意欲や注意集中・分配力にターゲットを絞った、あくまでも前頭葉のテストです。
今回、小児を対象に「かなひろいテスト」が使われた記事を読んで、懐かしいことが次々に浮かんできました。

もう30年も前のことです。
懸案事項だった小・中・高校生へのかなひろいテスト を実施することになりました。
それぞれ1校全員に対して実施します。
小学校1年生には、どのくらいやさしく丁寧に説明すべきか迷った記憶があります。思いがけず、説明に対してはスムーズに理解してくれました。

1年生から6年生。
どういう成績になったと思いますか?

正答数で比較してみます。
1年生12。6年生24。きれいに2倍。それだけでなく、まったく直線的にスコアが増えていくのです。
中学生もそのまま増加し、高校3年生で44。
今度の6年間は約2倍ですね。もちろん直線的に増加することは同じです。

20歳代はその能力を維持し、その後は、正答数は直線的に低下していきます。
60歳代になると24が平均値。6年生(12歳)と同じです。
さらに年齢を重ねるごとに、正答数は低下していくのです。
「かなひろいテスト」は、本当に興味深いテスト!
「人が生きる」ということを脳機能的に表現しているように思いませんか?

肺活量も、筋肉量も、骨塩量も、免疫力も、運動能力や内臓機能と言ってもいいでしょう。成長に従ってそのスコアを伸ばし、ピークを迎えたところ(これが、結構若い年代)からなだらかに低下していく。その先には人生のゴールが待ち受けていますよね。
命に限りがある以上、能力が低下していくことを恐れることはない、ともいえるのです。
「この能力変化もかなひろいテストのカーブと同じ!」と驚くことがたびたびあります。
逆ですね。
脳機能に関しても、かなひろいテストがターゲットにしている注意集中・分配力が、体の他器官と同じようなカーブを持つことの方が当然なのでしょう。
体が限界を迎えたときに、脳機能も限界ならば、こんな幸せなことはありません。そこまでは脳機能を持たさなくてはいけないのです。

体がまだまだ健康を維持しているのに、脳機能が老化を加速させてしまうのが認知症。
老化の加速は、脳機能の場合まず前頭葉に起こります。社会生活だけが困難になる小ボケ。
小ボケの段階は自覚もありますし回復が容易ですから、この段階で見つけることこそ大切なことなのです。具体的に言えば、それは「かなひろいテスト」を用いて、正常な老化の状態にあるかどうかチェックすることです。認知症は前頭葉テストである「かなひろいテスト」を使うことで、簡単に早期発見を図ることができるのです。
「かなひろいテスト」を用いなくては、認知症の早期発見はできません。CTやMRIで脳の形を調べても、前頭葉の働きはわかりませんから。

 


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