脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症高齢者による交通事故防止のカギは、前頭葉機能検査

2016年11月19日 | 正常から認知症への移り変わり

高齢者による悲惨な交通事故のニュースが続きます。ようやく、はっきりと「認知症」と言われるようになってきました。
それでも、解説番組などでは、「運動能力の低下」とか「単なる、アクセルとブレーキの踏み間違え」のように言われています。なぜ、「脳のはたらき」に問題があるといわないのでしょうか?
実は、私たちの区分でいうところの小ボケ状態ですら、自動車の運転には危険が想定できますから、運転は禁止といってきました。
小ボケ状態というのは、家庭生活には問題ないのですが、社会生活にはトラブルが出て、ついていけません。脳機能からいうと、前頭葉機能だけに障害が起きていて、いわゆる認知機能には問題がまだないレベルです。ということは普通の認知機能検査をしても、このレベルは発見できないということです。 
この社会生活の困難さを反映する前頭葉機能検査を実施しないと小ボケ状態は見つけることができません。もちろん症状から言ってもよほどアンテナを立てておかないとこのレベルは見逃されてしまうのです。それほど「一見、普通」。特にしゃべらせたら、その時々にはほんとに立派なことを立派に話せます。
一連の事故を起こしてしまった人たちは、報道から判断する限りでは、小ボケ状態にとどまっていることはないと思います。つまり脳機能から判断して運転できないレベルの高齢者がたくさん運転している・・・ほんとに怖い状態です。

この社会問題を解くカギは脳機能(前頭葉機能)を知るところにあります。2012年5月17日に書いた記事を転載しておきます。

「生涯現役」その2
正常から認知症への移り変わり「スピードが遅すぎて怖いんです」(クリック!)
小ボケの人たちが日常生活の「運転」という分野で起こす様々なエピソードを読んでみてください。運転するときに前頭葉機能がどのように関与しているのかがよくわかると思います。

5月13日に、こんな新聞記事がありました。
「84歳、新東名を逆走」という見出しで、
「富士市の男性(84)が、富士市内を走行中、誤って新富士ICから新東名に進入し、約14キロ離れた新清水ICでUターン、路肩走行して下り車線を逆走し新富士ICを約4キロ通り過ぎた所で発見された」

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上図のようなことですね。

記事によると
「運転していた男性は保険代理業の仕事で同市内を走行」
「男性は調べに『道を間違えたので戻ろうと思った』と説明」
「路肩を70~80キロで逆走していた」
「高速隊は『本人や家族には免許を返納するように説得したい』としている」

普通にこの記事を読むと、
「保険代理業の仕事をしている!現職でもこのようなことが起きるのか!」
ということに驚きを感じるのではないでしょうか?
ウノハナ
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エイジングライフ研究所はこのように考えます。

これは、脳機能が小ボケ(前頭葉機能だけが不合格)もしくは中ボケ(前頭葉機能に加えて後半の認知機能までもが正常範囲でない)になった人に起きた事件ということが大前提です。
ただし、記事以外の情報がないので真実は不明で、残念ながら推理にしかすぎません。

1.「現職」の意味を検討する。
エイジングライフ研究所では、もし前頭葉機能低下だけにしても脳機能が正常でなければ、立派な肩書の名刺を差し出されても、「この名刺は、仕事の内容や実態を表していない」と判断します。
脳機能がそのような状態では、仕事をこなすというような社会生活ができるはずがないからです。
逆に言えば、名詞に書かれていることが真実ならば、脳機能が年齢を超えて老化を加速しているはずがないからです。
ハルシオン?ヒメジョオン?
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名刺が実態を表していないこういうケースはよくあります。

「老人会会長の名刺」:
文字通りの名誉職。現職時代に敬意を表して会長と奉られている場合と、実際に活動された期間はあるのですが、有能な副会長さんの登場とか、ご本人が種々の理由で小ボケ状態になったために名刺だけの会長職になっているのです。

「一般会社の社長や会長の名刺」:
実態はない。
名刺だけもらっていたり、あるいは給料をもらっていても、出社していないことも多いのですが、たとえ毎日会社に出勤しても仕事の内容は整えられた書類に判を押すだけとか、銀行との交渉時に「ただいるだけで重みがあるので」陪席するだけなど、本人にとって決して「仕事をしている」という達成感のない状態が続いています。

「ふつうに現職の名刺」:
上記と同じような場合と、あまりにもパターン化した仕事内容の場合は、前頭葉の格別の関与がないままに仕事がこなせてしまうことがあって、失敗は起きてもなんとなく現職状態が許されている場合があります。
とくに家族経営の場合などにみられます。
この男性は、このような状態だったのではないでしょうか?
モッコウバラ
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2.発言をよく吟味する。

先日来「こう言えば、ああ言う」と題して3度にわたって、小ボケの人がどのくらい「普通に」言葉を使うかということを解説しました。

「道を間違えた」くらいなら、かなり脳機能が低下していても簡単に言えるのです。
高速隊の方々が気づかれているように「道を間違えて、探しているのだ」としたら、新富士ICを通り過ぎたのがおかしいですよね。

もちろんそれ以前に逆走することが根本的におかしいのですが!
よく見ればクモの巣が
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3.さらに注目。
70~80キロで逆走していたのです。新東名は先日走ってきましたが、確かに全体的にスピードは控えめな印象を受けました。パトカーも結構目にしましたし、新しい道ですから安全運転を皆さんが目指しているのでしょう。
それにしても、70キロは遅すぎませんか?

小ボケの家族がよく訴えます。
「一緒に車に乗ってると怖いんです。みんなが50キロで走っているところを30キロで走るんですから!」
正常から認知症への移り変わり「スピードが遅すぎて怖いんです」

これらを総合すると、正常な脳機能の人が起こした事件ではないと考えた方が適切でしょう。いくら高齢になっても正常な脳機能であるならばこのようなことは起こさないので、安心してください。
高速隊の方も、免許返納を勧めていますね。

 


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