脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症からの回復ー兄のこと&Yさんのこと ④

2015年05月26日 | 認知症からの回復

以前勤務していた病院で、たまたま上司のドクターがラジオで五日間連続でのインタビューを受けたことがありました。(「ボケの早期発見とその回復」がテーマでした)
そのリアクションはすさまじいものでした。
朝から電話は鳴りづめ、夜8時ごろまで受け続けるという日が一か月以上続きました。

河津町にある禅の湯のご紹介(温泉もランチもいいのですが、特に岩盤浴が素晴らしい!)

なるべく短い時間で相談の実を上げる方法はすぐに見つかりました。
「何が一番困っていらっしゃいますか?」と尋ねるのです。

例えば、「夜中に騒ぐので…」というと、これは「時の見当識」の問題ですね。
「時の見当識」は「今日の日付、月、年、季節、昼夜」の順にわからなくなっていくものですから、もう最後の段階まで来ているということです。
「時の見当識から見る認知症の重症度」に詳しく書いてありますからご一読ください。

zen no yu

「時の見当識」がここまで低下してしまっているなら「所の見当識」や「人の見当識」にもトラブルがあるはずです。
徘徊の有無を尋ねたり「ご家族のことはわかっていらっしゃいますか?」と尋ねて、「わからない」とか「間違える」という返事があれば、「見当識」の理解の程度は、最重度にまで低下してしまっている・・・ことになります。(大ボケ)
次に、日常生活の具合を尋ねます。
見当識がここまでわからなくなっている脳の機能レベル(大ボケレベル)では、日常生活ですら満足にできません。衣食住のすべてに介助が必要になってしまっています。そこを確認します。

実は禅の湯はお寺 ニュースタイルの宿坊(日帰り温泉可)

最初の訴えが「薬の自己管理ができなくて大変なのです」というものだったら、これは中ボケ相当の脳の機能レベルの時に起きる症状ですから、他の中ボケレベルの質問をしてみます。
「今日の日付は言えますか?」
中ボケ前半なら「日は無理ですが、月なら大丈夫」という答えが返ってきますし、中ボケ後半なら「日付どころか、季節感もおかしいです」という答えが返ってきます。
「洋服は自分で選べますか?」「お風呂トイレは一人で問題ないですか?」「料理の味付けは大丈夫ですか?」などと聞けば、中ボケレベルの脳機能ではどれ一つとして満足にはできません。このようにして脳の機能レベルが「中ボケ」であることを確認します。
中ボケの生活実態を「言い訳のうまい幼稚園児みたいです」と中ボケの家族は表現します。

興味深いことに「夜中に出て行きたがって大変です」などという大ボケの症状を訴えることはありません。
大ボケの症状が出ると、そのことが一番介護面で大変になるので、訴えはそこに集中してくるのです。

自家源泉かけ流し。もちろん飲用できます!

小ボケの人は、全く小ボケの症状だけを言い立てます。
「意欲がなく、言われなければボーとしている」「表情がなく目が死んでいる」「感動がない」「根気が続かない」「テキパキできない」「何度も同じことを言う」などなど。
小ボケの症状は下の記事の最後に列挙してあります。http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/e/6f3870d3e6a9d415854f0a1e1637c9f4

確認のために中ボケの症状を尋ねると
「おかげさまでそこまではありません」と言われるのですよ。

このように一番困ることを聞けば、認知症の重症度がわかりますし脳の機能レベルもわかります。
次のステップは、脳がこの機能レベルに老化を加速させるために必要なナイナイ尽くしの期間を逆算して
「〇年くらい前にそれまでの生活ぶりが大きく変わるような出来事があったでしょう。そしてその後、生きがいも趣味も交友も運動もしないナイナイ尽くしの単調な生活が続いてしまったでしょう」とお互いに共通理解するのです。

「だから、以前のように脳全体を使う生活に戻さなくてはいけません。筆頭が運動の脳で一日5000歩の散歩、次がアナログ情報担当の右脳を使うこと。色や形や音楽…趣味は何かなかったですか?ゲームはどうですか?」と指導していきます。

脳機能が社会生活に支障が出てくるレベルの小ボケの人だったら、脳リハビリをすることで改善できます(私の兄ができたように!)
中ボケのレベルは家庭生活に支障が出てきます。
中ボケ前半の人は、ちょっとがんばらないといけませんが、それでも改善は十分可能。
中ボケ後半になると、改善よりは維持を目指すことになりますね。
家庭生活に介助が必要なレベルの大ボケに入ると、本質的な改善は望めません。いわゆる手遅れ…

男湯・女湯

 

友人からの又聞き情報では、Yさんの夫が、「妻の生活上の不都合が増えてきた」として具体的にあげていたのは
「料理ができない、留守番ができない、洗い物が大雑把、入浴は一人では難しく、トイレの後始末が下手になった。」でした。
日常の「家庭生活面」での支障が起きていることを強調されていることになります。これは、まさに「中ボケ」レベル。
そして、「夫やお手伝いさんのことはわかる」ということでしたので、「大ボケ」レベルの症状である「身近な人の見当識までは障害されていない」ということにも言及されていたそうでした。

ご主人が友人に、「妻が自分を頼り切っているので、いとおしい気持ちがわきます」とも言われたそうです。
中ボケレベルになった時に、家族は「言い訳ができる、幼稚園児みたいです」って言うのですよ。

私の友人から、「脳リハビリすればいいのに!」と気をもんだ発言がFB上であったので、2008年に脳梗塞発症だったら間に合うかどうか疑問や不安があったので、できるだけ情報を集めてみました。
結論。私の家族だったら、私は精いっぱい対応してみると思います。

 

 


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