脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

かくしゃくヒント32-楽しく生きる辻 博さん

2017年05月25日 | かくしゃくヒント

かくしゃくヒントに登場いただく方々には2種類あって、お付き合いをけっこう長くしていて生き方をよく知っている方と、今日お会いして「この方なら!」と私の中で太鼓判を押した方なのですが、今日ご紹介するのは後者。
お会いしていた時間は30分にも満たなかったかもわかりません。
今年の伊豆高原アートフェスティバルに参加されている辻博さん。

お顔の後ろ、長押の上に飾られているのは、もちろん自作の絵。制作方法がユニークで型紙を切って紙に置き、接着剤を塗り、そこに金属片を撒く。後で型紙を外すことにより型紙通りに金属片が残るというような方法らしいです。(私は駐車に手間取っていたため説明の途中から入室させていただきました)辻さんからご連絡いただきましたので追記、訂正します。「これはね、僕が考えて職人さんに作らせたものなのです。内子町で和紙を使った新商品開発を狙って、フランス人デザイナーを招聘してて、というのもフランスでは額縁に箔をおく技法があるからですけどね、その情報を基にして考えて職人さんに作ってもらったんです。だから作ったのは僕ではなく職人さん」はい、わかりました。
とにかく、「自分で工夫して他にないものを表現したい」という意図を持っていらっしゃることはよくわかりました。
「和紙の料紙を作る技法に箔を置いたり砂子を撒いたりしますね」とおはなししたのですが、それとは別に全く独自に考えられたことがわかりました。確かにこの技法はデザインされた型紙をおくのですからね。

「あ、一村」というと「よくわかりましたね。奄美に行った記念。でも僕の奄美」
大室山とさくらの里も、箔を置くとこんなモダンな仕上がりになります。モダンな琳派!

他にも何枚も水彩画が飾られていました。その中でも、この題がすてきで、見つけた友人は大喜び。

「Shall we dance」
「ススキじゃだめで、どうしてもシャル・ウィ・ダンスじゃないといけないんです」題の一ひねりまでもが作品ということですよね。

これは「大室山の山焼き」ですが、この独自性に満足なさってるのでしょうね、題には特別のひねりはなかったような気がします。

独自性といえば、門柱に掲げられていたアートフェスティバルの旗。
会場を示す看板は決められていて、みなさんNo.の所だけ変えてあとは共通したものが配布されます。
本当に道を知らせるための看板を手づくりしている会場は、見たことがありますが、この旗はそれとはちょっと違いますね。あくまで自分らしくアートフェスティバルに参加する姿勢の表れのような気がしました。そしてもうひとつの底流は、多分「楽しくなくっちゃあ。自分らしく楽しみたい」ということだったのではないでしょうか。

定年を迎えてのち伊豆高原で住まれている方はたくさんいらっしゃるようです。辻さんも2年半前までは、香川県高松市に住んでいらっしゃったそうです。

「最初にアートフェスティバルに出会ったときに、ここで住むのだからこれで人間関係を作ろうと思った。あんまりべたべたしてないで、でも仲良くできる距離で」うなずきながらお話を聞いています。心の中では「齢をとるほど、密な人間関係が欲しくなる傾向もあるのだけど」とか思っていました。
「ところが、こうして家を開けてお迎えすると、結構たくさんの方がいらっしゃってくれるんですよね。そして『何が専門ですか?』とか聞かれるんですけど…」「答えは何かしら」と耳をそばだてる私に飛び込んできた言葉は
「『え?(絵と掛詞)』って答えるんですよ」思わずお顔を見てしまいました。

その後も、ユーモア満載のお話が次々と。まじめなお顔をして(お仕事をなさっていた時にはきっとこのようなお顔だったんでしょうね)出てくる言葉や事件の面白いこと。みんなで大笑いです。今でも高松時代の友人たちとの交遊は続けていらっしゃるとのことでした。

 独自性の追求と、ユーモアとか対人親和性とかは結構相反する働きのように思います。両方持っていらっしゃる辻さんは、それだけでかくしゃく候補生です。絵はお好きだったそうですが、本格的に始められたのは定年後。積極的な考え方もすばらしいです。

奥さまが高松で収集なさった讃岐漆器も紹介されていました。

私は讃岐漆器のことは全く知りませんでした。
「讃岐高松藩は松平家ですから」と奥さまが解説してくださいました。「彫漆(ちょうしつ)、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、象谷塗、後藤塗と5種類あって、後藤塗りは本当に日常使いするものです。確かに高価ですけども長く使えることを考えると安いものとも言えますね」とやさしく穏やかに解説して下さる雰囲気は、やはり確立された生き方を感じました。この讃岐漆器の製法は、その五つ全てが国の伝統工芸品の指定を受けているものだということも教えてくださいました。
コマ塗のお皿に讃岐名産和三盆が。もちろんおふるまいしてくださいました。横のぐい飲みは薄い薄い仕上がりで感覚的には10gという感じです。うす張りのガラス器くらいの薄さでした。

「主人が気に入って、毎晩これで晩酌を楽しんでいます」何だかそのシーンが目に見えるようです。
塗りのお重箱に入っていた手作りお料理の数々には思わず笑みがこぼれます。

こんなに見事なきんま塗りの作品も見せていただきました。

センスの良い生き方はもちろん脳の健康にはとてもいいものです。センス良く生きるためには右脳の感性と前頭葉の連携プレイが必須ですから。
人と仲良く楽しく過ごす時間は、センス良い暮らしとは無関係のようですが、脳機能から言うとやはり右脳(言語外のコミュニケーションのすべて。表情・身振り・声の調子などの表出も受け取り)の出番なのです。交遊は右脳と前頭葉の連携プレイです。
同時通訳-コミュニケーションには右脳が必要です
両方兼ね備えている方にはなかなかお目にかかることがありません。
辻様
これからも、伊豆高原の生活を満喫なさって下さいね。
「言われなくても、そのつもり!」って聞こえました。

 

 




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