よみびとしらず。

あいどんのう。

mirror house

2018-11-11 06:19:53 | 散文
もう誤魔化さなくていいんだよと云う悪魔のささやき
泣き笑い顔でかわしたらいつもの誤魔化しアブラカタブラ
本当のことなんて口にできるはずもない
本当のことなんて素直になるなんて
誤魔化して気を張って強がってフタをして
微笑んでよろこんで同意して猿芝居
噛み潰した苦虫の置き場なくやり場なく
死骸は腹にたまって消化不良
鏡のなかのあいつはいつも顔色悪く
自分の顔なんて疾う(とう)に忘れたとつぶやく私の姿見

この世で一番美しいものを映したいと願った白雪姫の継母の正しさを
それに気付いた私に映る鏡はこんなにも醜く
目を背けたくなるような姿しか映せない私にどうして彼女を責められようか
美しい世界の反対の姿しか映せない
この鏡の向こう側には申し訳が立たなくてもういっそ
なにも映らなくなるまでに
深い深い眠りについたなら
暗闇のなかに立つ鏡は一体なにを映すだろうか
暗闇のなかにさえなにかを映す鏡に向かい
闇に同化した私は笑う
私の笑顔は映らない

もう誤魔化さなくていいんだよと云う悪魔のささやき
悪魔の姿はなんであったか
この世界の美しさをどうしても乞い願う私の鏡に
あふれた涙の逆さまに悪魔の歪んだ顔が映った
歪んだ悪魔はさやさやと
白雪姫の継母に正しさなんかないよとからりと笑い
それを聞いた私も下手くそに笑った
下手くそな笑顔は鏡に映えて
私の鏡は再び世界を映し出す
この美しくもない世界を私を ただまっすぐに

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