(1998/ロバート・レッドフォード監督/ロバート・レッドフォード、クリスティン・スコット・トーマス、スカーレット・ヨハンソン、クリス・クーパー、サム・ニール、ダイアン・ウィースト/167分)
「モンタナの風に抱かれて」
まるでオリビア・ニュートン・ジョンの爽やかなポップスみたいなタイトルですが、原題は【THE HORSE WHISPERER】。直訳すると「馬に囁く人」でしょうか。
犬と同じように人間に飼われることの多い馬は、やはり犬と同じように時にトラブルがトラウマとなって人間不信に陥ったり凶暴な面を見せたりする。「HORSE WHISPERER」とは、そんな馬に寄り添い、心を通じ合い、痛みを癒す能力を持った人の事なんだそうです。
題材の選び方、テーマの捉え方、そして監督の技量としてもイーストウッドより高く買っているロバート・レッドフォードの監督第5作。
封切りから数年後にレンタルビデオで観た本作は双葉評では☆☆☆☆(80点)の傑作ですが、僕には何故か印象が薄い作品なんですよね。
ニューヨークに住むマクリーン家は、弁護士をしている父親ロバート(ニール)と一流雑誌の編集長をしている母親アニー(トーマス)と中学生の一人娘グレース(ヨハンソン)の三人家族。
雪の降り積もった冬の週末、郊外の別荘近くの森で友達と馬に乗って遊んでいたグレースは、事故にあい片足を切断する大けがを負ってしまう。近道をしようとした友達が傾斜地を無理に登ろうとした事が原因で、愛馬もろとも倒れて下の道路に滑り落ち、運悪く通りかかった大型トラックに轢かれてしまったのだ。友達は亡くなり、グレースの愛馬ピルグリムもグレースを助けようとしてトラックにぶつかり大けがを負ってしまう。なんとか一命はとりとめたが、人間には不信感を露わにするようになっていた。
ショックを受けたグレースは学校にも行く気が失せ、アニーにも心を開かなくなってしまう。
アニーは、ピルグリムを元通りにしさえすればグレースの心も癒せると考えるようになり、雑誌で知った「HORSE WHISPERER」トム・ブッカーに連絡を取るのだが・・・という話。
序盤の家族紹介を含めた事故の直後までの複数シークエンスの編集はお見事で、グレースが友達と馬に乗っている雪原のシーンは幻想的な絵画のような美しさ。
編集は「ライトスタッフ (1984)」でオスカー受賞のトム・ロルフで、カメラはアカデミー賞にノミネートされること9回、うち3回受賞の名人ロバート・リチャードソンでありました。
アニーはブッカーにニューヨークに来て欲しい、なんならファーストクラスの飛行機代も出すからと電話をいれるが、ブッカーは自分は医者じゃないし「HORSE WHISPERER」の仕事は今はしていないからと断る。あきらめきれないアニーはピルグリムをトレーラーに乗せ、グレースをお供に一路ブッカーのいるモンタナに車で向かうのだ。
数千キロをかけてやって来たモンタナで、ブッカーは弟夫婦と三人の幼い甥っ子達と共に広大な牧場を経営していた。
道中も母親に心を開かないグレースだったが徐々にピルグリムとの距離を縮めていくブッカーのやり方に驚き、アニーも辛抱強い彼の姿勢に興味を持つのでした。
暴れ馬となったピルグリムの心を癒すと共に、意思疎通が滞っている都会の母娘間のしこりを、彼らの頑なな生き方を含めて揉み解す「HORSE WHISPERER」との出会いがモンタナの大自然の中で描かれる大作であります。
原作があって、ニコラス・エヴァンズというイギリス出身のジャーナリストの小説デビュー作。それを「フォレスト・ガンプ/一期一会(1995)」でオスカー受賞のエリック・ロスと、「マディソン郡の橋(1995)」のリチャード・ラグラヴェネーズが共同で脚色したらしいです。
2時間47分、約3時間の長尺で、正直中盤以降中だるみする所もあって、これは共作の悪い面が出たのかなと思ってます。
馬の癒しと、母娘の癒しを相乗的に描ければそれでよかったでしょうに、何故か後半はアニーとブッカーのラブ・ロマンスが生まれてくるんですよね。これがちょっと余計かなぁと。
流石にギトギトした展開にはならないものの、やっぱ「イングリット・ペイシェント (1996)」のクリスティン・スコット・トーマスですから不倫ムードを出したくなっちゃうんですかねぇ。(おまけにサム・ニールは「ピアノ・レッスン(1993)」でも奥さんに不倫されてるし)
そして、その流れを組む(汲むではなくネ)ためでしょうか、ブッカー家や周りの人々との田舎生活の描写もふんだんに描くことによって中だるみが生じた嫌いがあります。
なので、お勧め度は★三つ、一見の価値ありに留まりました。
久しぶりに観て、色々なシーンで別の映画を想起する場面があったのが面白かったです。
微かな不協和音が流れる三人家族の様子には「普通の人々 (1980)」を、馬の調教のシーンでは「出逢い (1979)」を、トムがグレースに車の運転を教える所では「アンフィニッシュ・ライフ (2005)」を思い出しました。
クリス・クーパーはトムの弟フランク役。
ダイアン・ウィーストはフランクの嫁ダイアンの役でした。
1998年のアカデミー賞では、主題歌賞にノミネート。
ゴールデン・グローブでは作品賞(ドラマ)と 監督賞にノミネートされたそうです。
「モンタナの風に抱かれて」
まるでオリビア・ニュートン・ジョンの爽やかなポップスみたいなタイトルですが、原題は【THE HORSE WHISPERER】。直訳すると「馬に囁く人」でしょうか。
犬と同じように人間に飼われることの多い馬は、やはり犬と同じように時にトラブルがトラウマとなって人間不信に陥ったり凶暴な面を見せたりする。「HORSE WHISPERER」とは、そんな馬に寄り添い、心を通じ合い、痛みを癒す能力を持った人の事なんだそうです。
題材の選び方、テーマの捉え方、そして監督の技量としてもイーストウッドより高く買っているロバート・レッドフォードの監督第5作。
封切りから数年後にレンタルビデオで観た本作は双葉評では☆☆☆☆(80点)の傑作ですが、僕には何故か印象が薄い作品なんですよね。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/75/e011cdc22d86ee099c5d898e5293ec74.jpg)
雪の降り積もった冬の週末、郊外の別荘近くの森で友達と馬に乗って遊んでいたグレースは、事故にあい片足を切断する大けがを負ってしまう。近道をしようとした友達が傾斜地を無理に登ろうとした事が原因で、愛馬もろとも倒れて下の道路に滑り落ち、運悪く通りかかった大型トラックに轢かれてしまったのだ。友達は亡くなり、グレースの愛馬ピルグリムもグレースを助けようとしてトラックにぶつかり大けがを負ってしまう。なんとか一命はとりとめたが、人間には不信感を露わにするようになっていた。
ショックを受けたグレースは学校にも行く気が失せ、アニーにも心を開かなくなってしまう。
アニーは、ピルグリムを元通りにしさえすればグレースの心も癒せると考えるようになり、雑誌で知った「HORSE WHISPERER」トム・ブッカーに連絡を取るのだが・・・という話。
序盤の家族紹介を含めた事故の直後までの複数シークエンスの編集はお見事で、グレースが友達と馬に乗っている雪原のシーンは幻想的な絵画のような美しさ。
編集は「ライトスタッフ (1984)」でオスカー受賞のトム・ロルフで、カメラはアカデミー賞にノミネートされること9回、うち3回受賞の名人ロバート・リチャードソンでありました。
アニーはブッカーにニューヨークに来て欲しい、なんならファーストクラスの飛行機代も出すからと電話をいれるが、ブッカーは自分は医者じゃないし「HORSE WHISPERER」の仕事は今はしていないからと断る。あきらめきれないアニーはピルグリムをトレーラーに乗せ、グレースをお供に一路ブッカーのいるモンタナに車で向かうのだ。
数千キロをかけてやって来たモンタナで、ブッカーは弟夫婦と三人の幼い甥っ子達と共に広大な牧場を経営していた。
道中も母親に心を開かないグレースだったが徐々にピルグリムとの距離を縮めていくブッカーのやり方に驚き、アニーも辛抱強い彼の姿勢に興味を持つのでした。
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暴れ馬となったピルグリムの心を癒すと共に、意思疎通が滞っている都会の母娘間のしこりを、彼らの頑なな生き方を含めて揉み解す「HORSE WHISPERER」との出会いがモンタナの大自然の中で描かれる大作であります。
原作があって、ニコラス・エヴァンズというイギリス出身のジャーナリストの小説デビュー作。それを「フォレスト・ガンプ/一期一会(1995)」でオスカー受賞のエリック・ロスと、「マディソン郡の橋(1995)」のリチャード・ラグラヴェネーズが共同で脚色したらしいです。
2時間47分、約3時間の長尺で、正直中盤以降中だるみする所もあって、これは共作の悪い面が出たのかなと思ってます。
馬の癒しと、母娘の癒しを相乗的に描ければそれでよかったでしょうに、何故か後半はアニーとブッカーのラブ・ロマンスが生まれてくるんですよね。これがちょっと余計かなぁと。
流石にギトギトした展開にはならないものの、やっぱ「イングリット・ペイシェント (1996)」のクリスティン・スコット・トーマスですから不倫ムードを出したくなっちゃうんですかねぇ。(おまけにサム・ニールは「ピアノ・レッスン(1993)」でも奥さんに不倫されてるし)
そして、その流れを組む(汲むではなくネ)ためでしょうか、ブッカー家や周りの人々との田舎生活の描写もふんだんに描くことによって中だるみが生じた嫌いがあります。
なので、お勧め度は★三つ、一見の価値ありに留まりました。
久しぶりに観て、色々なシーンで別の映画を想起する場面があったのが面白かったです。
微かな不協和音が流れる三人家族の様子には「普通の人々 (1980)」を、馬の調教のシーンでは「出逢い (1979)」を、トムがグレースに車の運転を教える所では「アンフィニッシュ・ライフ (2005)」を思い出しました。
クリス・クーパーはトムの弟フランク役。
ダイアン・ウィーストはフランクの嫁ダイアンの役でした。
1998年のアカデミー賞では、主題歌賞にノミネート。
ゴールデン・グローブでは作品賞(ドラマ)と 監督賞にノミネートされたそうです。
・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 ![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
ホント、どうして余計なロマンスまで入れちゃったんでしょう。早朝デートくらいまでは許せますが、その後はいただけません。
美しい自然を駆け抜ける馬の躍動感や、母の奮闘、「HORSE WHISPERER」との交流などは良かったので残念です。
原作にも多分あるんでしょうけど、思い切ってバッサリ切る手もあったでしょうに。
>美しい自然を駆け抜ける馬の躍動感
馬や西部の大自然、農場暮らしなんか好きな人は楽しめる映画でしょう。
ま、それが功を奏していればいいんだけど、本作では「余計」でした。
また、レンタルで見ている最中に
ゴキブリが出るという事件がおきてしまい
なんかそっちの印象が強烈だったという
こともありました。
(10年に1回くらいしか出ないので)
おぉ、ゴキちゃんに負けたとは・・・。
原作にあるのか、読んでないので分かりませんが、「マディソン郡」の二匹目の鰌を狙った感も無きにしも非ずですな。
「HORSE WHISPERER」の神秘性を残すためにも、大人の恋模様は人妻の片想いで終わらせた方がよかったのではと思いました。