テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

カラーパープル

2008-11-30 | ドラマ
(1985/スティーヴン・スピルバーグ監督/ウーピー・ゴールドバーグ、ダニー・グローヴァー、マーガレット・エイヴリー、オプラ・ウィンフリー/153分)


 20世紀初頭のアメリカ南部、黒人女性の波乱の半生を描いた大河ドラマである。

 父親に二度も妊娠させられたセリー(ゴールドバーグ)は、仲良しの妹ネティの手助けもあって無事出産するが赤ん坊は二人とも父親によってどこかへ連れ去られる。ある日、美人のネティを後妻にもらいたいと“ミスター”アーノルド(グローヴァー)がやって来て、父親は身代わりにセリーを売り飛ばす。やがて、ネティも獣のような父親から逃れてセリーの所へやってくるが、今度はアーノルドにも狙われ、拒んだネティは家から追い出され姉妹は離ればなれになってしまう。
 アーノルドの暴力に耐え、前妻の子供達を育てるセリー。地元出身の酒場の歌姫ジャグ(エイヴリー)にぞっこんのアーノルドは、ある雨の夜、病気のジャグを家に運び込んで介抱し一緒に暮らし始める。初めはセリーを馬鹿にするジャグだったが、やがて彼女の優しさを認めるようになる・・・。

 いやーっ、長い長い! 2時間半。
 ピュリツアー賞を獲ったアリス・ウォーカーの小説を映画化したもので、スピルバーグ初めてのシリアスドラマでもある。
 封切時に劇場で観て、演出スタイルが「E.T.(1982)」や「未知との遭遇(1977)」に似ていてがっかりしたもんです。カメラアングルが足元や腰の辺りからの仰角やら、俯瞰を多用する娯楽サスペンス系のタッチで、も少し落ち着いた画作りは出来ないもんかな・・とネ。描写にはメリハリがあって、登場人物の心情は分かりやすいし、ハラハラドキドキもするし、ユーモアも分かる。だけど、何かが足りないんですなぁ。
 例えば、“ミスター”アーノルドは農場を経営しているんだが、その辺りのエピソードや“らしい”描写はほとんどない。前妻の子供達とのやりとりも、長男とその最初の奥さんソフィア(ウィンフリー)関連の話は色々とあるが、その他の子供らとのものは無いに等しい。そのシンプルさがストーリーの分かり易さに貢献しているとも言えるが、全体としての重厚さに欠ける印象も残る。

(但し、この分かり易いスタイルは後に続く若い監督、例えばロン・ハワードなんかに良い意味で影響を与えたようにも思います。)

 中盤まではセリーの人生を追ったストーリーだが、その後はジャグと父親との関係、ソフィアのセリー以上の波乱の半生も描かれる。終盤で彼女等が一つ屋根の下で肩寄せ合うようになるので、セリー姉妹を中心にした、古い時代の黒人女性の群像劇の様相もみせてくる。
 序盤で離ればなれになった時に、泣きながら『死ぬまで手紙を書き続けるわ』と言った妹ネティとの再会がラストシーン。流石にここは、涙無しには観れませんでした。

*

 1985年のアカデミー賞では、作品賞、主演女優賞(ゴールドバーグ)、助演女優賞(エイヴリー、ウィンフリー)、脚色賞(メノ・メイエス)、撮影賞(アレン・ダヴィオー)等にノミネートされたが残念ながら無冠。しかしながら、新人だったウーピー・ゴールドバーグはゴールデン・グローブでドラマ部門の女優賞を受賞した。
 音楽を担当した巨匠クインシー・ジョーンズは共同プロデューサーの一人でもあったようです。

 さて、クインシー・ジョーンズをネットで調べていてトリビアネタを発見。ジブリ作品の音楽でお馴染みの久石譲さんは、クインシー・ジョーンズを捩ったペンネームだそうです。知らなかった!

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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4 コメント

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わざわざ観直したのですか? (オカピー)
2008-12-01 01:52:50
だとしたら、すまんことしました。

前にも言いましたが、スピルバーグのドラマでは一番のお気に入り。ただ、最初に鑑賞した時はちょっと表現が硬いなと思いましたけどね、二度目はそれが感じなかったです。

その硬さは恐らく十瑠さんの仰るサスペンス映画的な演出から来ているものと思いますが、今ではこの類の演出は当たり前になっていますよ。
だから、2年前に観直した時は硬さを感じなかったんでしょう。
ロン・ハワードへの言及はその通りですね。

ただ、スピルバーグの作品を見て常に感じるのは編集のスムーズさ。
昨今は何故か批判が多いですが、「宇宙戦争」も「ミュンヘン」も編集では文句なし、他のハリウッド監督の追随を許しませんよ。
「宇宙戦争」の酷評ぶりを見ると、編集で映画を見る人は殆どいなくなったと思えてきて残念です。
僕には内容も悪くなかったんですけどね。
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なんの、なんの (十瑠)
2008-12-01 06:45:56
オカピーさんや姐さん以外にも(お客様に)この映画のファンがおられましてね。何しろ封切で観たばっかりで、その後は見向きもしなかったもんですから、「幸福」等の件もあり気になっておったんですよ^^

最初に観たときには全然中身にも入っていけなかったように覚えてますが、今回はちゃんと観れたし、終盤では感動してしまいました。

>今ではこの類の演出は当たり前になっていますよ。

そうですね。
今じゃ、日本のTVドラマにも廻り廻って“変な”影響を与えているようにも思えたりしますが・・・。これは考え過ぎかな
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ラストは何度見ても・・ (anupam)
2008-12-03 23:55:22
泣いちゃう

あざといけど

私の妹はいかなる映画を見ても泣いたことのない人間だったけど、本作で化粧が取れまくるくらい号泣したそうです。
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涙腺が・・・ (十瑠)
2008-12-04 08:14:53
歳と共にゆるみ続け、嬉しい再会などというのは完全にツボに・・・。

>あざといけど

ジャグと父親との関係もミュージカルみたいな幕切れで、思い出すと浮いてる感じも残るんですよね。

>化粧が取れまくるくらい号泣したそうです。

あれって、上の方のマスカラもとれるん?

追記:お宅のワンちゃん記事へのコメントで「何度見ても、笑える」って言ったのは動画のことでした。書き方が拙くてご免!写真もオモロイけどね^^
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