テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

海街diary

2016-06-03 | ドラマ
(2015/是枝裕和 脚本・監督・編集/綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ、加瀬亮、鈴木亮平、池田貴史、坂口健太郎、前田旺志郎、キムラ緑子、小倉一郎/128分)


古い映画を二本観たので、今日はレンタルで「海街diary」を借りてくる。先日TV放映があったばかりだが、アレは意識して観なかったので今日が初見。
[ 5月29日 以下同じ](Twitter on 十瑠 から[一部修正アリ])

鎌倉が舞台だからどうしても小津を思い起こさせるな。とりたてて大きなドラマがないのも似ているし、それなのに何気ない映像が時間を忘れさせてくれる所も似てる。ただ、終わってみると何か一つ物足りない感じがあるのも確か。も少し、時の流れを感じさせてくれる空ショットが欲しかったような・・・。

原作はコミックだそうな。コミックって「のたり松太郎」以来読んでない気がするけど、「海街diary」なら読んでもいいかも。初のコミックレンタルしてみようかな。

昨日「海街diary」を再見する。始ってしばらくして、すずが登場する頃からウルウルとしてしまって・・。後でyoutubeを見てみると、広瀬すずにはシナリオを渡してなくて撮影現場で監督自らセリフ込みで演技指導をしていたそうな。今回は日本語字幕を流しながらの鑑賞でありました。
[ 6月 1日 ]

*

 鎌倉に住む香田家の三姉妹。長女の幸(さち)はベテランの看護師で、次女の佳乃(よしの)は銀行員、三女の千佳(ちか)はスポーツ店で働いていた。
 家は築数十年の木造二階建ての旧家で、両親は15年前に離婚、入り婿だった父親は出て行き、その後母親も再婚したが、娘たちは健在だった祖母と共に家に残ることになった。その祖母も亡くなり、今は姉妹だけで住んでいる。
 そんなある日、彼氏のアパートで一晩過ごした佳乃の携帯に幸から連絡が入った。それは15年前に別れたきりの姉妹の父親が亡くなったという知らせだった。
 両親の離婚は父親の不倫が原因で、父親は不倫相手と再婚して女の子をもうけたがその奥さんも亡くなり、葬儀は三人目の結婚相手と暮らしていた山形で行われるという事だった。
 幸は葬儀の日が夜勤明けの為に行けそうにないので、佳乃と千佳に参列するように頼んできたのだ。

 一両編成の田舎列車に揺られて着いた駅で佳乃と千佳を一人の少女が待っていた。『浅野すずです』とぺこりとお辞儀をしたその中学生が、つまり佳乃たちの腹違いの妹だった。

 式の途中で幸もやって来た。友人の車で送ってもらったらしい。
 幸が父親の三人目の奥さんに挨拶をしていると、喪主の挨拶について葬儀社から問い合わせがきた。挨拶はどなたがされますかと。頼りなげな未亡人もその叔父さんも消極的で、終いには“すず”がしっかりしているからと義理の娘に喪主の挨拶をさせようとした。
 それを一緒に聞いていた幸はきっぱりと言った。『それはいけません。これは大人の仕事です。なんなら私が・・』
 結局、未亡人が嫌々務めることになった。

 全てが終わり三姉妹が揃って帰っているとすずが追いかけて来た。
 少女が手に持っていたのは父親の持ち物の中にあったという幸たち姉妹の写真だった。幸はすずに『この町であなたの一番好きな場所を教えてくれない?』と言った。
 すずの案内した場所は、町が見下ろせる高台だった。佳乃と千佳は其処が鎌倉に似ていると思った。『ほら、あそこに海が見えれば・・』
 幸はすずにお礼を言った。『あなたがお父さんを看てくれてたのよね。ありがとう』

 すずは電車の駅まで見送りに来てくれた。
 別れ際に幸が言う。
 『すずちゃん。一緒に鎌倉で暮らさない?私たち皆働いているから、あなた一人くらい何とかなるわ。すぐに返事をくれなくていいから、考えてみて』

*

 腹違いで身寄りのなくなった妹すずを不憫に思った幸が実の妹のように受け入れようとしたのは、すずも又自分たちと同じく大人の(はっきり言えば幸達の父親の)犠牲になった子供だと感じたからでしょう。しかし、鎌倉の大叔母が言うようにすずは幸たちの家庭を壊した女性が産んだ子。言葉にはしないがすずにも自分の立場が分かっていて、鎌倉にやって来てもすぐには馴染めないところもある。
 ドラマの軸は、すずと幸たちが如何にして本当の意味での姉妹になっていくかという所なんですが、よくあるように殊更にその辺りに的を絞ったエピソード、或いは展開にしていないのが良いですね。姉妹や彼らの周りの人々との細やかなエピソードを積み重ねていく間に、すずと幸たちの距離も自然と縮まっていくのが感じられる。巧いです。
 前作「そして父になる」よりは納得しやすいテーマであったのも幸いしてか、かなり心地よい余韻に浸らしてもらいました。





 樹木希林は亡くなった祖母の妹の大叔母で、大竹しのぶは姉妹の母親で今は北海道に住んでいる。
 風吹ジュンは近所の食堂の女将さんで、リリー・フランキーもそこの常連客でもありまた彼も食堂を営んでいる。
 堤真一は幸の勤める病院の医者で、加瀬亮は佳乃が務めている銀行の先輩同僚。
 鈴木亮平は(幸の同僚でもあり)すずが入る地元のサッカーチームの監督で、池田貴史は千佳が勤めているスポーツ店の店長。
 坂口健太郎はオープニングに登場する佳乃の彼氏。
 前田旺志郎はすずの同級生で同じサッカーチームのフォワード。
 キムラ緑子は幸の上司の看護婦長。
 小倉一郎は佳乃の銀行の融資先の小さな町工場の社長さんでした。

 2015年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール候補となったこの作品。
 日本アカデミー賞では作品賞、監督賞、撮影賞(瀧本幹也)、照明賞(藤井稔恭)、新人俳優賞(広瀬)を受賞し、主演女優賞(綾瀬)、助演女優賞(長澤、夏帆)、脚本賞、音楽賞(菅野よう子)、美術賞(三ツ松けいこ)、録音賞(弦巻裕)編集賞にもノミネートされたそうです。





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2 コメント

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フェイド・アウト (オカピー)
2016-06-20 18:59:24
十瑠さんが避けた地上波放映版しか鑑賞していないので、少々迷いましたが、「雑感」に“フェイド・アウト”の文字を発見したので、TBする気になりました。

本編は事実上のノーカットで一応鑑賞に堪えるわけですが、さらに良かったのが、CMで中断する際にフェイド・アウトとそうでない終わり方をしていたこと。
つまり、映画の実際のシーン若しくはシークエンスの切り替えそのままで放映しているのだなと思ったわけです。
フェイド・アウトを使わない監督、例えば小津安二郎の作品をフェイド・アウトしたら、泉下の御大が怒るでしょうが、地上波ではそんなことが日常的に行われているはずです。その意味で、この放送は良かった。

「備忘録」で書かれていた“居場所”がこの映画のキーワードでしたね。
すずちゃん、居場所が見つかって良かったね、と思うおじさんでした。
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オカピーさん、いらっしゃいませ (十瑠)
2016-06-21 16:00:00
なんか久しぶりな気がしますが、コチラも読み逃げばかりで。
すっかり夏日が続いている福岡です。

「フェイドアウト」で時間の経過が感じられるのは当たり前ですが、「フェイドアウト」さえできてれば「フェイドイン」は無くても(時間経過の表現としては)そんなに気にならないなと思いました。今作での発見です。

>地上波ではそんなことが日常的に行われているはずです

殆ど地上波の映画は見ないので確認できませんが、シーンのカットも含めて、映画の冒涜ですな。
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