テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

チャイナ・シンドローム

2016-04-17 | ドラマ
(1979/ジェームズ・ブリッジス監督・共同脚本/ジェーン・フォンダ、ジャック・レモン、マイケル・ダグラス、ウィルフォード・ブリムリー/122分)


 2011年3月の東日本大震災で福島の原発事故が発生した時にこの映画を思い出したもんです。但し、封切り当時は観たかったけど見逃していた作品でして、ジェーン・フォンダとジャック・レモンが出てたのは覚えてたけどマイケル・ダグラスは忘れてました。なんとダグラスはこの映画のプロデューサーでもあったとは。

<「チャイナ・シンドローム」とは原発事故の状態のうち、核燃料が高熱によって融解(メルトダウン)して原子炉の外に漏れ出すメルトスルーと呼ばれる状態を意味するために1965年以降、過酷事故を研究していた原子力技術者の間で使われていた用語で、もしアメリカ合衆国の原子力発電所がメルトダウンを起こしたとしたら、融けた燃料が重力に引かれて地面を溶かしながら貫いていき、地球の中心を通り越して反対側の中国まで熔けていってしまうのではないか、というブラックジョーク>だそうです。(ウィキペディアより)

 ブラックジョークとは知らずに、でもまさか地球を貫くとも思ってなかったので、実際どんな内容なんだろうと思っておりましたが・・・。

*

 アメリカ、カリフォルニア。
 街角の突撃取材が好評な美人TVレポーター、キンバリーが原発内部の取材に訪れた際に事故に遭遇する。発電所側は通常の想定内の出来事で事故ではないと公表もしなかったが、キンバリーに同行したフリーカメラマン、リチャードは秘密裏に状況を撮影していた。局に帰った二人は特ダネだと騒ぐが、上層部からは非許可の原発内部の撮影は違法であると言われ、フィルムはお蔵入りとなった。
 後日、原発の制御室長ゴデルと偶然に会ったキンバリーはあの時の事故について問うてみる。ゴデルは事故の時に先頭に立って対処していた男だ。
 『事が終わった時に、命拾いをしたような顔をしていたけど、あの時私たちは危険にさらされていたのかしら?』
 ゴデルは、あの時は計器の電気回路の調子が悪かっただけで、原発は二重三重の防護システムに守られているから安全だと主張した。

 そんなゴデルが気になっているのは、計器の事ではなく事故の時の“ある振動”だった。キンバリーと話をした翌日、一人で所内の点検をしたゴデルは重要な装置の溶接部分に不安を感じ所長に点検を要請した。しかし、新しい原発の建設も始まっており、資金確保の為にも現原発の稼働を遅らせることは出来ないとゴデルの要請は突っぱねられた。
 ゴデルの心配を余所に原発の再稼働が始まる。
 リチャードとキンバリーは専門家に例のフィルムを見せて意見を聞き、原発の事故を確信するのだが・・・。

*

 安全よりも利益優先の企業経営者、そんな企業論理と良心の狭間で悩む技術者、と今となっては設定はありきたりだし、登場人物もステレオタイプが多いですが、「ペーパー・チェイス」のジェームズ・ブリッジスの演出はここでも堅実で、中盤からはゴデルとキンバリーを交互に描きながら全体を分かりやすい社会派サスペンスにまとめ上げておりました。

 キンバリーにはジェーン・フォンダ。ゴデルにはジャック・レモン。フリーのカメラマンがマイケル・ダグラス。
 ウィルフォード・ブリムリーはゴデルの同僚で、最後に逆転ヒットというべきコメントをマスコミに発する役でした。

 1回目の鑑賞では面白く観ていたのに、最後の最後でインパクトの弱い結末に★一つマイナス。
 2回目ではありきたりな設定感が増してはきたものの、スキのない編集に満足。
 でもやっぱし、結末は弱いですな。

 アカデミー賞では、主演男優賞(レモン)、主演女優賞(フォンダ)、脚本賞(ブリッジス、T・S・クック、マイク・グレイ)、美術監督・装置賞にノミネート。
 カンヌ国際映画祭では、パルム・ドールの候補となり、レモンが男優賞を獲ったそうです。

 尚、<この映画が公開されたのは1979年3月16日であるが、それからわずか12日後の3月28日にスリーマイル島原子力発電所事故が発生し、「この映画を観た輩が事故を起こしたのではないか」等といった陰謀説が流布されたりと、全米で大きな話題となった>らしいです。(ウィキペディアより)


▼(ネタバレ注意)
 建設業者の手抜きに怒ったゴデルが証拠写真をキンバリーに渡そうとして命を狙われ、最後には原発の制御室に逃げ込み籠城する。
 キンバリーはゴデルとのインタビューに成功するが、ゴデルは会社が要請した武装警官に射殺される。

 今なら、原発がもっと過激で深刻な状況に陥ると予感させた映像で終わりそうですし、非常停止した原発がその後大したこともなく沈静化したのも流れ的にも不思議だし、福島原発事故を目撃した日本人には納得いかないでしょうね。
▲(解除)





・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 俺の店にイケヤ! | トップ | それでも恋するバルセロナ »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
3.11の後に再見して (宵乃)
2016-04-18 10:47:06
初見時よりゾッとした覚えがあります。
ありきたりなところもあるけど、安全より利益を優先してしまうのは実際あるだろうし、それが原発となると本当に恐ろしいなぁと。
確かに現在なら、もうダメだというところで終わるでしょうね…。
想像しただけで恐ろしい!
返信する
3.11 (十瑠)
2016-04-18 19:34:57
今回の熊本地震も同じ3月ですが、直ぐ近くに稼働中の原発があって、やっぱ気になりますねぇ。

>ありきたりなところもあるけど・・・

たかがあんなことで殺人を犯そうとする企業側の描き方が誇張過ぎというか、劇画的にデフォルメされてるみたいで、時代を感じましたね。
返信する

コメントを投稿

ドラマ」カテゴリの最新記事