テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

ロンリーウェイ

2005-03-27 | ドラマ
(1983/ドナルド・エヴェレット監督/ロビー・ベンソン、パット・ヒングル、クローディア・クロン)


 思い出の作品から。
 今月21日にアメリカ、ミネソタ州で、男子高校生が校舎内(レッドレーク高校)で銃を乱射し、十数人が死傷した事件が起きた。デイブ・スペクターの言によれば、その地域は米大陸の先住民(つまりインディアン)の居留地内で、自殺した犯人の高校生も先住民の子孫らしいので、彼等の生活苦などが大きく影響しているのではないかということである。

 アメリカン・ニューシネマの頃にもインディアンの問題を取り上げる作品がいくつか出てきたが、この「ロンリーウェイ」もインディアンと白人の混血児が主人公である。
 ビリー・ミルズ。1964年の東京オリンピック、陸上10,000メートルで優勝した金メダリストの実話である。インディアンの人種的偏見についても描かれてはいるが、ニューシネマの頃のような政治的な意図はないようだ。「ワン・オン・ワン」でもバスケット・ボール選手の頑張りを演じたロビー・ベンソンだが、あちらは根性青春ドラマ。こちらには、実話という重みと、人種問題の社会的側面も描かれているので印象深い。
 ミルズはアメリカ人だとばかり思っていたが、この映画はカナダ製作となっているし、映画サイトの紹介によれば“カナダの国民的英雄”と表現されていたのでカナダ人なのであろう。

 更に、この作品が忘れられないのは、ラストの10,000メートル競技に日本の円谷選手が出てくるからである。円谷はこの種目では確か6着になったが、最終種目のマラソンで(競技場で3位の選手に抜かれて)銅メダルをとった。円谷は東京オリンピックの後、次期メキシコ大会への周囲の期待の重圧に耐えきれず、家族宛の遺書を残して自ら命を絶った。

 もう20年も前に観た映画だが、確かその時はミルズの事は知らずに見ていて、だんだん実話というのが分かってきて、ゾクゾクしていたので、ラストの決勝レースの感動は涙ものであった。全然注目されていなかったミルズは、レース終盤において、有名選手にひじ鉄などを食らっていったん後尾に下がる。この時日本の実況アナウンサーは『これはひどい!』と反則に対して思わず口走ったという話だ。その後の驚異的ラストスパートは、後輩のアスリートたちにも戦術として影響を与えたようだ。ミルズには戦術という意識はなかったはずだが・・・。

 レンタルビデオではなかなか見かけない作品ですが、TVで流れることがあったら一度見て欲しい作品です。白人女性との恋愛、結婚などもあり、堅苦しい映画ではありません。

 偶然見つけた、北山耕平(きたやまこうへい)氏のブログ Native Heart には、ミルズについてこう書かれている。
<1964年の今日(10月14日)は、東京オリンピックの陸上競技10000メートル決勝で、世界記録保持者のクラーク(オーストラリア)やイワノフ(ソ連)ガムーディ(チュニジア)などの強豪を抑えて、ラコタ(オグララ・スー)出身のビリー・ミルズ Billy Mills が28分24秒04で優勝し金メダルを獲得した日です。ビリー・ミルズは近代オリンピック百年の歴史の中で最初に金メダルを獲得したアメリカ・インディアンとなりました。「男は生まれた以上は戦士として生きなければならない。そして戦士は謙虚な生き方をしなければならない。戦士は『与えの道』を生き、それがもたらしてくれる力を身につけるのだ」という父親の教えを胸に彼は後に「ラニング・ストロング」というアメリカインディアンの若者のためのランナー育成のためのプログラムを立ち上げ、もっとも成功したアメリカインディアンの実業家のひとりとして今日に至ります。彼の半生は「ロンリーウエイ(Running Brave)1983」というタイトルでカナダで映画化されました。日本でもかつて放映され、わたしも何回かこの映画を見ましたが、リザベーションの現実などがとてもよく描かれています。残念ながら日本語版はもう入手できないようですねえ。確かノベライズが集英社文庫からも出版されていたのですが。>

 「ワン・オン・ワン」以外にも、アイス・スケートの女子選手が主人公の「アイス・キャッスル(1978)」などスポーツ物が多い、ベンソン。随分見ないと思ったら、TVやアニメの声優に精を出しているようです。あの「美女と野獣(1991)」では“野獣”をやってたとのことでした。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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