テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

夏休みのレモネード

2009-03-17 | ドラマ
(2002/ピート・ジョーンズ監督・脚本/エイダン・クイン、ボニー・ハント、ケヴィン・ポラック、ブライアン・デネヒー、エディ・ケイ・トーマス、アディール・スタイン、マイク・ワインバーグ/94分)


 子供が主役の映画を立て続けに2本観ました。古いのと新しいの。まずは新しい方、2002年の「夏休みのレモネード」から。
 <「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」のベン・アフレックとマット・デイモンが新人発掘のために発案したオンライン脚本コンテスト“プロジェクト・グリーンライト”によって、1万2千本の中から選ばれた作品を映画化した>ものとのことです。演出もその脚本を描いたピート・ジョーンズ。勿論デビュー作ですね。

*

 消防署の副所長をしているジョー・オマリー(クイン)には8人の子供が居る。夫婦とも真面目なカソリック教徒で、アイルランド系のジョーは子供に厳しく、昔のジョン・フォード映画に出てくるような“子供は黙って親の言うことを聞け”式の親父である。
 男の子の中で一番下のピート(スタイン)は小学校の2年生。悪戯が過ぎるのか、担任のシスターには『地獄に落ちますよ』と何度も叱られており、終業式の日には、この夏休みの間に心を入れ替えないと大変なことになると更にダメ出しをされる。すぐ上のお兄ちゃんに相談すると、大昔の聖人が他の宗派の人々をキリスト教に改宗させる“探求”の旅をしたことを例に、お前もそうすれば天国に行けなくとも、少なくとも地獄に行くことはないだろうと教えられる。
 夏休み。ピートは近くのユダヤ教会に出かけ、ラビ(ポラック)に許可を貰って会堂の前で無料レモネードの売店を出し、来客に対して“探求”を試みようとする。ラビはピートの“探求”を温かく歓迎した。
 そんなある日、ラビの家が火事になり、お兄ちゃんと見に行ったピートは、そこでラビの一人息子ダニー(ワインバーグ)が父ジョーの働きにより九死に一生を得る所を見る。ダニーは数ヶ月前に白血病を発症したが、今は抗ガン剤の投与により鎮静化している所だった。ピートはダニーと友達になり、ダニーを“探求”の対象に選び、彼を改宗させるべく数々の試練を与えるのだが・・・。

 以下、ネタバレありです。

 タイトルから子供らしい可愛い映画と思われるでしょうが、実はレモネードのくだりは前半の一部だけで、売店はすぐに閉店、ピートとダニーの子供同士のつき合いと、火事をめぐる宗教の違う大人のつき合いが平行して描かれます。根底にあるのは宗教の違いなので、可愛さばかりの映画ではないですね。

 大人のつき合いについて。
 ラビの家は焼けてしまうが、ジョーの決死の救助によりダニーが助かったために、ラビは教会の毎年恒例の報奨金をピートの長兄で医者を目指しているパトリック(トーマス)にあげたいと言う。ジョーはそれをユダヤ教会の宣伝行為だとはねつけ、家同士のつき合いにも、オマリー親子、オマリー夫婦にもしこりが残ることになる。
 最終的には、母親の『子供の夢を邪魔するものは、あなただって許さないわ』という思いが父親を動かしたようですが、なんだか、なぁなぁの内に上手くいっちゃった感じです。母親には共感できるけど、この父親は感情的で、ただフワフワしているおっさんの様でした。

 で、子供の方。こちらが解釈が難しい。一般的には可愛らしい子供同士のつき合いと捉えられているようですが。
 ピート君は可愛いんだけど、彼の理屈は屁理屈めいた匂いもするし、大人にあれこれと質問しながら、返ってきた答えを勝手に自分なりに解釈していて、時にその解釈が独善的で、『あれ? この子、少しオカシイんじゃね?』と思わせる。
 自分と同じようにダニーも将来天国に行けるようにと10個の試練を与えるんだけど、最終的にダニーが亡くなる原因は感染症であり、ピートが課した最後の試練、遠泳が原因じゃないかと私なんか考えてしまいます。だから、終盤の子供の友情感動秘話も素直に受け止められない。これって、どうなんでしょ?
 だから、映画のテーマもよくわからないままですわ

*

 出演者について。
 エイダン・クインは「張り込み」、「マイケル・コリンズ」でお目にかかりました。危険な匂いのするいい男でしたが、すっかりお年を召して、うるさいだけの親父役ってか・・・。
 ピートの母マーガレット役のボニー・ハントは、看護婦から女優に転身したという女性で、「グリーン・マイル (1999)」のトム・ハンクスの奥さん役などを経て、2000年には監督デビュー(「この胸のときめき」)も果たしたそうです。
 キリスト教会の神父を演じたブライアン・デネヒーは、「コクーン」での宇宙人が印象深いですネ。

 舞台は1976年のシカゴらしいですが、砂浜で遊ぶ子供たちのシーンで、懐かしいポピュラーソングが流れてきました。70年の大ヒット曲だったそうです。





・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 テアトル十瑠

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