テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

終身犯

2012-01-22 | ドラマ
(1961/ジョン・フランケンハイマー監督/バート・ランカスター、カール・マルデン、セルマ・リッター、ベティ・フィールド、ネヴィル・ブランド、テリー・サヴァラス、エドモンド・オブライエン/148分)


 録画していたフランケンハイマーの「終身犯」を観る。小学生か中学生の頃に「日曜洋画劇場」で初めて観た作品で、バート・ランカスターを認識したのもこれが最初だったような気がする。好きな映画だった。
 実話が元になっているということ、終身犯となった男が独房の中で小鳥を飼い始め、やがて有名な鳥類学者になっていくというお話の骨子は覚えていた。録画時間が2時間半にもなっているので、当時のTV放送はかなりカットされていたことになる。
 ジョン・フランケンハイマーの名前もこれで覚えた。TVのディレクター出身で、経歴を調べると「終身犯」は彼が31歳の時の作品だった。

 ランカスターは当時48歳。主人公のロバート・ストラウドがかなりの年数刑務所に入っているのにいつまでも元気なので疑問に思っていたら、終盤の台詞でストラウドが最初に殺人罪で投獄されたのは19歳という設定だったのに気付いた。他人に心を開かないひねくれた人間として登場する主人公だけど、ランカスターが演じているのでまさか十代の若者だったとは思わなかった。ちょっと無理があったような気がするな。

 総合プロデューサーがハロルド・ヘクト。つまりこの作品もヘクト&ランカスター・プロダクションの製作という事だ。

 カール・マルデンはストラウドが最初に入った刑務所の所長であり、終生対立する刑務所及び刑務局側の人間として描かれている。「更正しろ」が口癖だが、終盤では「更正の意味を知っているのか?」とストラウドに逆に問われる。和解には至らなかったという記憶は間違ってなかった。

 セルマ・リッターはストラウドの母親役。「裏窓」などとは違ったシリアスな人物で、互いに息子思い母親思いの親子なのに、息子が獄中結婚をした後は子離れが出来ない醜い姑となっていく。
 「ピクニック」や「バス停留所」にも出ていたベティ・フィールドがそのお嫁さんの役。鳥がとりもつ縁だった。
 ネヴィル・ブランドは主人公に人間らしさを取り戻させる刑務官の役、テリー・"コジャック”・サヴァラスは唯一と言っていい気を許した務所仲間だった。
 映画はアルカトラズ島に向かう男のナレーションで始まるが、それがこの映画の原作者という設定で、扮するのがエドモンド・オブライエン。最初と最後に出てきて、途中のナレーションも彼のようだった。

 オスカーノミネートの白黒撮影は「俺たちに明日はない」のバーネット・ガフィであります。

*

見所は、ストラウドが小鳥の飼育、そして病気の研究に熱中していく過程だな。手先が器用だったのか、なんでもない木箱の板をばらして鳥篭を釘なしで作るし、文献を読み漁って致死率100%と言われた鳥類の敗血症の治療薬を発明する。後に外部の学者から天才と呼ばれた程の彼の、若い頃の過ちは何故だったのかと考えさせられる。人ってこんなに変われるんだということも。

嵐の日の屋上での運動の時間に、木から落ちたスズメの雛を拾ったのが鳥との関わりの始まりだ。餌は房にやってくるゴキブリなどの虫達。そのスズメはランディと呼ばれ、大きくなって、手乗り文鳥のようにストラウドになついた。

中盤までは鳥が物語の軸となっているが、終盤には再びカール・マルデン扮する勘違い役人との葛藤が色濃くなっていく。晩年にストラウドが書こうとした、刑務所内での囚人の待遇に関する告発本のことにも映画は触れないわけにはいかなかったのだろう。実話が元で、ハッピーエンドでは無いので、"二兎を追った”嫌いはある。

原題が『Birdman of Alcatraz』。でも、アルカトラズの刑務所に入るのは終盤だけなんだよね。しかも、そこでは鳥の飼育は禁止されている。

鳥の研究本が縁で、獄中結婚した奥さんとの晩年のエピソードも舌足らずの感がある。お母さんもそうだけど、二人のその後の人生も気になるな。それと、アルカトラズで再会したサヴァラスはどうなったんだろう?アルカトラズの暴動のエピソードにも出てこなかったような気がするけど・・。




 1962年のアカデミー賞では撮影賞以外に、主演男優賞、助演男優賞(サヴァラス)、助演女優賞(リッター)にノミネート。
 ヴェネチア国際映画祭と英国アカデミー賞ではランカスターが男優賞を受賞した。

・お薦め度【★★★=一見の価値あり】 テアトル十瑠

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