テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

永遠と一日

2002-11-06 | ドラマ
 「旅芸人の記録」で有名なテオ・アンゲロプロス監督作品1999年

 舞台は現代のギリシャ。末期ガンを宣告された老作家の病院に入院する直前の一日を、過去の想い出や空想のシーンを交えながら描いている。
 今は結婚している一人娘に会いに行って、娘婿に冷たくされたり、痴呆症で入院している老いた母親に会いに行ったりする。ガンであることはどちらにも告げずに、ただ旅に出るという。若い頃から旅好きだったみたいで、ハッキリ描かれてはいないが、奥さんは寂しさから、この作家が旅に出るのをいやがっていたようだ。現在の奥さんが出てこないから、自殺か?

 老作家にからむ人物でメインなのは、ギリシャに隣接するアルバニヤから密入国してきた少年だ。
 内戦で家族を亡くしただろう少年は、仲間と共に信号待ちの車のフロントガラスをクリーニングして小銭を稼いでいる。インドなどのホームレスの少年達と同じだ。信号待ちしている老作家の車をこの少年がクリーニングしていると、警官が取り締まりにくる。他の少年達がちりぢりに逃げまどう中、呆然と車の横で身をすくめていた少年は、老作家の機転で車に乗り込み警官から逃れる。
 適当なところで子供を降ろして別れるが、しばらくするとこの子が他の子供と一緒にヤクザ風の男達に車に乗せられる所にでくわす。後をつけた老作家は、そこに人身売買の現場を発見し、成り行きからこの子を買うことになる。
 翌日には病院に入院する予定の老作家は、なんとかこの子を祖国に帰そうとするが、子供は帰りたがらない。結局、自分の車で2時間以上もかけて国境まで連れていくが、そこで老作家は凄惨な現状を思い知ることになる。
 国境の鉄条網には、密出国しようとして射殺された、アルバニア人がたくさんぶら下がっていたのだ。

 反戦の映画ではない。あくまでも、老作家の極めて個人的な精神の彷徨いがテーマであるが、戦争の影を描くことによって社会性が肉付けされ、作品に深みを与えている。明日のない作家と、悲惨ではあるが将来のある子供とのふれあいが胸を締め付ける。

 私としてはゆったりとしたリズムが少し気になるが、ギリシャらしい美しいシーンも数多く、良い映画だと思います。
 NHKTVで見ました。

・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 テアトル十瑠

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