(1958/ジョン・スタージェス監督/スペンサー・トレイシー、フェリッペ・パゾス、ハリー・ビレーヴァー/87分)
ノーベル文学賞に輝くロスト・ジェネレーションの代表的作家、アーネスト・ヘミングウェイの同名小説が原作の映画で、「大脱走(1963)」「荒野の七人(1960)」「OK牧場の決斗(1957)」などのジョン・スタージェス監督の作品。ジョン・ヒューストンの「白鯨(1956)」と共に、男性的な作風の監督が作った純文学が原作の映画として印象深い作品だ。【原題:THE OLD MAN AND THE SEA 】
10代から20代にかけて、ヘミングウェイの短編小説は繰り返し読んだ。「日はまた昇る」「武器よさらば」などの長編にも何度か挑戦したけれど、その度に挫折し、あの文体は短編には合ってるが長編には合ってないんだと自分を納得させた。
ヘミングウェイの短編は映画のワンシーンを切り取ったようなものが多く、中編ともいうべき「老人と海」は1本の映画を観ているような作品だった。最も好きなヘミングウェイ作品は?と聞かれれば躊躇わずにこの作品名を上げる。
「老人と海」はヘミングウェイの生前に発表された(1952年)最後の作品だそうである。
NHK-BSで2月に放送分の録画の鑑賞。何十年ぶりでしょうか。多分、この映画を観た後に本を読んだと思うけど、今回、鑑賞後に小説をパラパラッと読み返したら、まさに“本を忠実に再現した映画”だったのだと分かった。全編にナレーションが流れていて、小説を観ている感覚になる。
老人を慕う少年、二人を見守っているようなカフェの店主。彼等のセリフも小説に忠実だったし、小説にはあまり描かれていない島の情景も、原作の雰囲気を損なうことなく創り出されていた。
キューバの漁師が84日間不漁が続いた後、85日目は運がまわってくると信じて漁に出る。三日三晩闘って大きなカジキマグロを仕留めるも、あまりの大きさに船に乗せることが出来ず、船縁にくくりつけて港に運ぶことに。それは、その後の鮫との闘いの始まりであった・・・。
中盤は、老人の独り言以外はセリフはなくて、情景も海の上が殆ど。
夕焼け、朝焼けの海に小船が浮かんでいるシーンは絵画のようで、アカデミー賞を2度獲ったジェームズ・ウォン・ハウは、ここでも撮影賞(カラー)にノミネートされた。半世紀前の作品なので海上に出てきたマーリンとの死闘は合成だが、それまでの魚と老人との駆け引きがスリリングに描かれているので、興ざめにはならない。
「翼よ!あれが巴里の灯だ(1957)」のJ・スチュワートと同じく、素晴らしい一人芝居を見せたスペンサー・トレイシーは、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。(データで知りましたが、「翼よ!・・・」もコレも、プロデューサーはリーランド・ヘイワードという人でした。)
アカデミー賞では、ディミトリ・ティオムキンが映画音楽賞を受賞した。
老人と少年の会話にメジャー・リーグの話が出てくる。映画でも島の少年達が野球をしているシーンがあるが、ネットで調べると時代はキューバの独立前で、この頃はアメリカの属国だった。
又、老人が少年に聞かせるメジャーリーグの選手の中に、ディック・シスラーという名前が出てくる。シスラーに記憶があったので調べてみたら、2004年、イチローが破ったそれまでのシーズン最多安打記録をもっていたジョージ・シスラーの次男であった。
<ハードボイルド・リアリズム>と言われたヘミングウェイの手法では、登場人物の思考や自意識などをいちいち説明はしない。発した言葉や行動だけを書いていく。その選ばれた言葉や行動を描くことによって、人物の思考を想像させる。
この作品でヘミングウェイが言いたかったことは、読み手が勝手に考えればいいことで、それ故に、一人の読み手であっても時代、境遇で感じ方が違ってくるのだ。最初に読んでから数十年。未だに本棚に置いておきたい本なのである。
余談ですが、ヘミングウェイ関連でマーゴとマリエルというスクリーンで活躍した孫娘がいたのを思い出しました。
トップ・モデルとして活躍後、「リップスティック」で映画デビューした姉のマーゴは、目鼻立ちのハッキリした長身の美女でした。
<ヘミングウェイの孫”というレッテルが付きまとい、作品にも恵まれずその後低迷。2度目の結婚にも失敗してアルコールに溺れる日々が続いたという。そして96年、サンタモニカのワンルーム・マンションで亡くなっているのを発見された。後に警察は鎮静剤の過剰摂取による自殺であると発表した。(「allcinema ONLINE」のデータ)>とのこと。
享年41歳。祖父と同じく自殺というのが、哀しい運命を感じさせます。
同じく「リップスティック」に出演した妹のマリエルは、今も映画界で活躍しているようですが。
ノーベル文学賞に輝くロスト・ジェネレーションの代表的作家、アーネスト・ヘミングウェイの同名小説が原作の映画で、「大脱走(1963)」「荒野の七人(1960)」「OK牧場の決斗(1957)」などのジョン・スタージェス監督の作品。ジョン・ヒューストンの「白鯨(1956)」と共に、男性的な作風の監督が作った純文学が原作の映画として印象深い作品だ。【原題:THE OLD MAN AND THE SEA 】
10代から20代にかけて、ヘミングウェイの短編小説は繰り返し読んだ。「日はまた昇る」「武器よさらば」などの長編にも何度か挑戦したけれど、その度に挫折し、あの文体は短編には合ってるが長編には合ってないんだと自分を納得させた。
ヘミングウェイの短編は映画のワンシーンを切り取ったようなものが多く、中編ともいうべき「老人と海」は1本の映画を観ているような作品だった。最も好きなヘミングウェイ作品は?と聞かれれば躊躇わずにこの作品名を上げる。
「老人と海」はヘミングウェイの生前に発表された(1952年)最後の作品だそうである。
NHK-BSで2月に放送分の録画の鑑賞。何十年ぶりでしょうか。多分、この映画を観た後に本を読んだと思うけど、今回、鑑賞後に小説をパラパラッと読み返したら、まさに“本を忠実に再現した映画”だったのだと分かった。全編にナレーションが流れていて、小説を観ている感覚になる。
老人を慕う少年、二人を見守っているようなカフェの店主。彼等のセリフも小説に忠実だったし、小説にはあまり描かれていない島の情景も、原作の雰囲気を損なうことなく創り出されていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/87/3d35c2ca689a374a071af73354117a3d.jpg)
中盤は、老人の独り言以外はセリフはなくて、情景も海の上が殆ど。
夕焼け、朝焼けの海に小船が浮かんでいるシーンは絵画のようで、アカデミー賞を2度獲ったジェームズ・ウォン・ハウは、ここでも撮影賞(カラー)にノミネートされた。半世紀前の作品なので海上に出てきたマーリンとの死闘は合成だが、それまでの魚と老人との駆け引きがスリリングに描かれているので、興ざめにはならない。
「翼よ!あれが巴里の灯だ(1957)」のJ・スチュワートと同じく、素晴らしい一人芝居を見せたスペンサー・トレイシーは、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。(データで知りましたが、「翼よ!・・・」もコレも、プロデューサーはリーランド・ヘイワードという人でした。)
アカデミー賞では、ディミトリ・ティオムキンが映画音楽賞を受賞した。
老人と少年の会話にメジャー・リーグの話が出てくる。映画でも島の少年達が野球をしているシーンがあるが、ネットで調べると時代はキューバの独立前で、この頃はアメリカの属国だった。
又、老人が少年に聞かせるメジャーリーグの選手の中に、ディック・シスラーという名前が出てくる。シスラーに記憶があったので調べてみたら、2004年、イチローが破ったそれまでのシーズン最多安打記録をもっていたジョージ・シスラーの次男であった。
<ハードボイルド・リアリズム>と言われたヘミングウェイの手法では、登場人物の思考や自意識などをいちいち説明はしない。発した言葉や行動だけを書いていく。その選ばれた言葉や行動を描くことによって、人物の思考を想像させる。
この作品でヘミングウェイが言いたかったことは、読み手が勝手に考えればいいことで、それ故に、一人の読み手であっても時代、境遇で感じ方が違ってくるのだ。最初に読んでから数十年。未だに本棚に置いておきたい本なのである。
余談ですが、ヘミングウェイ関連でマーゴとマリエルというスクリーンで活躍した孫娘がいたのを思い出しました。
トップ・モデルとして活躍後、「リップスティック」で映画デビューした姉のマーゴは、目鼻立ちのハッキリした長身の美女でした。
<ヘミングウェイの孫”というレッテルが付きまとい、作品にも恵まれずその後低迷。2度目の結婚にも失敗してアルコールに溺れる日々が続いたという。そして96年、サンタモニカのワンルーム・マンションで亡くなっているのを発見された。後に警察は鎮静剤の過剰摂取による自殺であると発表した。(「allcinema ONLINE」のデータ)>とのこと。
享年41歳。祖父と同じく自殺というのが、哀しい運命を感じさせます。
同じく「リップスティック」に出演した妹のマリエルは、今も映画界で活躍しているようですが。
・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて】 ![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
![テアトル十瑠](http://8seasons.life.coocan.jp/img/TJ-1.jpg)
TVでも本作放映していたのですね。TVはまったく観ないので(もちろんBSも映りません)。
十瑠さんの記事読んでいたら「翼よ、あれが~」がまたメチャメチャ観たくなりました~!
私も、だいぶ観てませんなぁ~。
何だかつらい話だったですよね。
マーゴは若くして亡くなりましたね。
70年代に少しだけ活躍してスクリーンから去って40~50代で亡くなっている人って結構多いかも・・
栄光の後にドラッグとかに溺れちゃうのかな・・
「水の中の小さな太陽」などに出ていたナタリー・ドロンの彼氏だったこともあるマルク・ポレルなども早死・・ですね
「リップスティック」は、何故か本も読んだ気がします。
信頼していた何かの教官みたいな男にレイプされるんですよね。しかも後ろから。
ラストで、ショットガンが出てきて・・・ズドン!とかいう終わり方だったような・・。
勝手ながら十瑠さんの記事URLを記事内に記載致しました。TBの代わりになると思います。問題ないと思いますが、もし不都合があればご連絡ください。
この作品で注目したのはナレーションですね。原作に忠実だったかどうかは分りませんが、ナレーションが半ば必然だったような気がしているのです。ナレーション嫌いの私が言っているのですから、ほぼ間違いないでしょう(笑)。
「アクセス数でトップクラス」なんですか。
そ、そんな記事にURL貼られたら、こっちも・・・ありがとうございます!