テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

あの頃ペニー・レインと

2006-05-04 | 青春もの
(2000/キャメロン・クロウ監督・脚本/パトリック・フュジット、ビリー・クラダップ、フランシス・マクドーマンド、ケイト・ハドソン、ジェイソン・リー、フィリップ・シーモア・ホフマン、ズーイー・デシャネル/123分)


 かつてレンタルショップに並んでいた頃は、“ペニー・レイン”だからビートルズに纏わる話かなと思っていた。
 ロックミュージックを扱った雑誌のライターになった15歳の少年の話ということで、ブログで好評なコメントをみかけていたので、先日NHK-BSで流れていたのを録画して観た。

 クロウ監督の自伝的な話とのこと。
 少年にとっては刺激的だっただろうロックバンドの取材を兼ねたツアーへの参加の一部始終が描かれていて、“ペニー・レイン”とは、そのバンドのグルーピーの一人。雑誌のライターということで最初は敬遠されたが、素直な性格に好感をもたれたのか、売り出し前のバンドと共にツアーバスに乗れることになる。バスには、一部の選ばれたグルーピーも乗っていて、主人公の少年は同じ街に住む“ペニー・レイン”に惹かれ、彼女とバンドメンバーとの関係にもヤキモキする。
 バンド内のいざこざ、ツアーでのトラブル、ミュージシャンと取り巻き女性との情事などなど、予想通りの展開ではあるけれど、少年の目を通した話なので割とサラリと描かれている。当時のロックバンドに付き物のドラッグの話やセックスの話も出てくるが、どぎついシーンはない。

*

 サンディエゴに住む11歳の少年ウィリアムは、姉と大学教授の母親との3人暮らし。18歳の姉アニタは母親と衝突、彼氏と共に家を出る。『ベッドの下に自由があるわ。』という囁きを残して。
 ウィリアムがベッドの下を覗くと、そこにあったバッグの中には沢山のロックのLPアルバムがあった。ビーチ・ボーイズ、クリーム、ジミヘン、ツェッペリン、フー、ボブ・ディラン・・・。
 ここまでが1969年の話で、その後は全て73年のウィリアム15歳の時の話となる。

 姉の残したロックミュージックに惹かれたウィリアムは、その後新聞等にロックに関する記事を投稿するようになり、やがて大手音楽雑誌、ローリングストーンの編集者の目に留まる。電話での記事の依頼。15歳の彼には大金と思われる報奨金だった。
 成り行きで最初の取材に選んだのはスティルウォーターというバンド。ブラック・サバスを取材するつもりで押しかけたコンサート会場で彼等と出会い、取材を申し込み、メンバーのリーダーに気に入られ、ツアーバスに同行できるようになる。

 飛び級で進級しているウィリアムには、卒業試験が間近に迫っていたが、試験と卒業式には間に合うように帰ってくると母親には了解を取る。母親の条件は、毎日の電話と『麻薬はダメ!』。ウィリアムは16歳と年をごまかして、バンドとグルーピー達とのツアーバスに乗り込むのだった・・・。


 少年の母親以外の大人は、売り出し中のミュージシャンやグルーピーばかりで、ま、青春映画として観れば、少年には刺激的だっただろういい加減な大人達やグルーピー達とのあれこれは、分かり易いエピソードが多い。しかし、某国の“青春映画”のようなわざとらしい誇張がなくて、ミュージシャンの周辺の毒についてもよく描かれていた。個々のシーンでの人物の心理を捉えたショットの積み重ねにも目を離せない部分があった。

▼(ネタバレ注意)
 終盤。ツアーが終わりに近づくのに、ウィリアムはなかなか肝心なインタビューが出来ない。バンド内は、幾度かの衝突で人間関係は最悪。飛行機が嵐に遭遇し、皆が墜落死を覚悟した後、本音を吐き合い、メンバーの一人がカミングアウトしたところで、飛行機が軟着陸できたというシーンは面白かった。
 空港でバンドと別れる頃には、リーダーにも『好きに書いていいぞ。』と言われる。
 インタビューは出来なかったが、最後の一言で、なんとか彼等のことを赤裸々に記事に出来たウィリアムだが、雑誌社のバンドメンバーへの確認作業では、一転、ミュージシャンは内容を否定する。彼等にしてみれば、全然カッコよくないからだ。

 傷つくウィリアムだったが、ペニー・レインの計らいで、ウィリアムはバンド・リーダーと再会。リーダーも記事の内容が本物であることを雑誌社に伝える。一度は没になりかけたスティルウォーターの記事も、晴れて掲載される。

 ラストシーン。ローリングストーン誌の表紙には彼等の写真が掲載されていた。
▲(解除)

 個人的には、73年頃はあんまりロックを聴いてなかった時期だが、S&Gの「アメリカ」、エルトン・ジョンの「タイニーダンサー」など、聞き覚えのある曲もあった。

 ウィリアム役のフュジットはオーディションで選ばれたとのこと。82生まれだから当時17か18。童顔だから15歳に見えました。
 ペニー・レイン役はゴールディ・ホーンの娘、ケイト・ハドソン。ファニーフェイスなのにセクシーなところ等、よ~く似てます。娘さんの方が少し美形かな。この映画の撮影後に、お母さんと同じようにミュージシャンと結婚して、4年後の25歳には男の子を出産したそうです。ロブ・ライナーの「あなたにも書ける恋愛小説(2003)」にも主演しているとのことで、これも気になっている作品です。

 母親役のフランシス・マクドーマンドは、「ファーゴ(1996)」のオスカー女優で、外見は特別個性的では無いと思うんだが、演技のせいでしょうか印象に残る女優さんです。「イーオン・フラックス」にも出てましたな。

 ウィリアムに記事の書き方等を指南する伝説のコラムニスト役に、「カポーティ」に主演し、先日の全米批評家協会賞で最優秀男優賞を獲得したフィリップ・シーモア・ホフマンが出ていました。これは儲け役でした。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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