テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

あの子を探して

2005-12-11 | ドラマ
(1999/チャン・イーモウ監督/ウェイ・ミンジ、チャン・ホエクー、チャン・ジェンダ、カオ・エンマン/106分)


 「初恋のきた道」と同じ年に作られた、イーモウ監督のヴェネチア映画祭グランプリ受賞作品。92年の「秋菊(しゅうぎく)の物語」に続いて2回目の受賞ということだ。

 全体の雰囲気、映画のリズムは「初恋・・・」とよく似ている。あちらは1958年の昔話と40年後の今話を描いているが、この作品は年代は明確に示されていない。製作時点の話と考えていいんだろうが、都会の雰囲気と辺境の村の生活との違いに驚く。
 村の小学校の校舎は築後40~50年というボロボロで、使っていない教室のガラスは破れかぶれ、トイレも青空の下だ。先生も校舎に寄宿、遠方の子供は机の上に煎餅フトンを敷いて寝泊まりしている。食事のシーンは無かったが、話の流れでは自炊をしているようだった。1年生から6年生まで一つの教室に入り、先生は一日1本のチョークを大事に使う。教室には時計もない。先生も半年ほど給料を受け取っていないとか言っていた。
 一方、町ではミニスカートを履いたOLはいるし、ポケベルも普及しているらしかった。

*

 僻地の村の小学校の先生が、母親の病気で1ヶ月ほど休暇をとらなければいけなくなった為、村長が隣村の少女を代用教員として連れてくる。13歳のウェイだ。休暇予定のカオ先生は、13歳の少女に28人の生徒を見ることは出来ないと言うが、村長は誰もこんな辺鄙なところに来たがらないんだからこの子で我慢してくれと言う。

 ウェイは、代用教員が務まったら村長から50元もらえる約束をしている。カオ先生は、一人も生徒が減らなかったら更に10元あげると言う。過疎が進んでいる村では、出稼ぎなどの為に自主退学する生徒が増えているのだ。

 ウェイはカオ先生の言いつけ通りに教科書を黒板に写し、生徒達にソレをノートに写すように言う。代用教員といっても教師の勉強をしたわけでもなく、ただお金欲しさにやって来ただけなので、黒板の字は習っていないという低学年の生徒の話にも耳は貸さず、とにかく写せと言う。めんどくさいので、自分はドアの外に座って、生徒が一人も逃げ出さないように見張っている始末だ。

 そんな中、生徒の中で一番言うことを聞かない3年生のホクエーが居なくなる。ホクエーは校舎に寝泊まりしている生徒の一人だが、ある朝家の人が迎えに来て、連れていったらしい。父親は早く死に、母親が病気がちの上、家には多額の借金があるというので町に出稼ぎに行ったのだ。
 ウェイは生徒を減らせないという思いから、村長にホクエーを迎えに行ってくれと言うが、村長はそれは家の都合だからしようがないと相手にしてくれない。生徒達にお金を集めさせたり、工場で働いたりして町までのバス代を工面しようとするが、なかなかお金は貯まらない。
 ついには、ホクエーを連れ戻そうと無賃乗車で一人町に向かうウェイだったが・・・。

 ストーリーはこんなモノ。この後、ウェイは何とか町に辿り着くものの、ホクエーは出稼ぎ場所に行かずにホームレスになってしまっているので、それをウェイがあちこち手を尽くして探し回る事になる。

 ウェイ以下、主な出演者は全て素人らしく、時々ドキュメンタリーを見ている気分になる。町でウェイがホクエーを探して回るシーンは、通行人も一般の人々のようなので隠しカメラを使ったのではないかと思いますな。

 しかし、この素人たち、演技上手過ぎ!
 「“あの子を探して”ができるまで(2002)」というドキュメンタリー映画の解説によると、撮影場所の地元の小学校に通う生徒の父兄が全員の出演を希望した為、オーディションで選んだらしい。中国の人達は演技が好きなんですな。それともただの出たがりか・・・。
 イーモウ監督の画面構成の巧さが、素人演技者を上手く見せている部分もあるんでしょうがネ。

 ただ、「初恋・・・」でも感じたのだけど、主人公達の内面への入り方が今一歩浅い感じで、特にこの作品は素人が演じているので、感情移入がしにくかったです。ウェイの行動の裏にもお金のためという前提があるので、ラストのまとめ方にも感動はしにくかった。しかも、ウェイちゃんは怒ってるシーンが多かったし・・・。

 余談ですが、ホクエー君は私の小さい頃にそっくりでした(汗!)。

・お薦め度【★★★=一度は見ましょう】 テアトル十瑠

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6 コメント

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Unknown (TARO)
2005-12-16 01:09:41
この映画、見たのをすっかり忘れてました・・・

チャン・イーモウという人は、時期によってまったく作風をかえるので、驚かされますね。

「秋菊の物語」からここいらへんにかけては、私はいまひとつ引き付けられるものがないんですねえ。上手いしリアリティもあるんだけど、なにか。



十瑠さんがおっしゃってる



>主人公達の内面への入り方が今一歩浅い感じ



このあたりかもしれません。



>ホクエー君は私の小さい頃にそっくりでした(汗!)



そ、それは、それは。。。。
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Unknown (十瑠)
2005-12-16 09:19:31
>「秋菊の物語」からここいらへんにかけては・・・



すると、その前の方が“引き付けられる”のでしょうか?

それとも、「HERO」以降?



>時期によってまったく作風をかえるので



他の作品、見なければ・・・。
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Unknown (TARO)
2005-12-16 22:00:02
その前も見ごたえあるし(ただし好きではないです)、「HERO」もあれはあれで面白いと思うんですが(あまりの作風の変化にビックリはしました。これがチャン・イーモウ?嘘だろー!みたいな)。
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Unknown ()
2006-06-15 04:21:31
内面への入り方がどう浅いのか全くわからないです。チャンツィー演じるディの心切ないのが痛いくらい伝わってきて、この映画以上にピュアで感動できるものは観たことがない。心の描写が素晴らしい。感動ものをはじめ、よくある変にわざとらしい創り方でないところもいい。
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前半のウェイには (宵乃)
2016-11-19 13:21:16
めちゃくちゃ腹が立ちました(笑)
途中で見るのやめようかと思ったくらいなんですが、張り紙が無駄骨に終わった辺りから、もうお金のことは頭にないなと思えたので。実際のところはわからないですけどね。

ほぼみんな素人でここまでの作品が撮れるというのがすごいです。撮影後、村の人たちがみんなで鑑賞会をしたんだろうなと思うと微笑ましいですね。
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宵乃さん (十瑠)
2016-11-19 22:08:08
>撮影後、村の人たちがみんなで鑑賞会をしたんだろうなと思うと微笑ましいですね。

アハハ。
確かに、そんな画が浮かびますねぇ。
「初恋の・・」は好きな作品です。ぜひ、再見出来ることをお祈りします。
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