テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。そして日々の雑感も。

初恋のきた道

2005-11-09 | ラブ・ロマンス
(1999/チャン・イーモウ監督/チャン・ツィイー、チョン・ハオ、スン・ホンレイ、チャオ・ユエリン/89分)


 「紅いコーリャン(1987)」の頃から、名前だけは知っていたチャン・イーモウ監督。今回初めて観ましたが、さすがカメラマン出身らしく美しい映像でありました。中国奥地の山村を舞台にした新任の男性教師と村の娘との恋愛話と、その40年後の親子のふれあいを描いている。過去の話はカラーで、現在はモノクロで表現していた。

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 父親の訃報で、町から(会社の車で)数年ぶりに故郷に帰ってきた息子。父親はこの山村で40年間小学校の教師をしていた。40年も使ってきた校舎が古くなったので、建て替えようと金策の支援者を捜しに町に行った帰りに吹雪にあって亡くなったのだ。
 村長の話では、遺体は町の霊安所に寝かされているが、村まで持ってくるのに、お袋さんは昔の慣習通りに人力で運びたいと言っているらしい。棺を交替で担いで村まで連れ帰るというわけだ。そうすることによって、故人の霊が故郷までの道を覚えるという古い言い伝えがあるらしい。英語原題は【THE ROAD HOME】。

 村長は、『若い者は町に出稼ぎに行っていて村には担ぎ手がいないから、棺を担いで運ぶのは無理だ。車でなら半日で済む。お前からもお袋さんを説得してくれ』と言うが、息子が話しても母親はガンとして聞かない。この辺のお母さんの頑固な所は、この後語られる母親と父親とのなれそめ話における、お母さんの一途さに繋がる描き方でありました。

 二日間も校舎の横に座り込んで悲しみに暮れていた母親は、息子に棺にかける布を織るから機織り(はたおり)機をなおしてくれという。布は買うからわざわざ織らなくてイイと言ってもどうしても自分で織った布をかけたいという。亡くなったご主人への愛情の深さを感じるシーンでした。息子は母親の身を案じて布を織るのをヤメさせようとするが、母は『今夜は夜なべになる』と言いながら、修理の済んだ機織り機に向かう。そんな、年老いた母親の後ろ姿を見ながら、息子は昔聞かされた両親が知り合った頃の話を思い出す。
 目の前には若い両親の新婚当時の写真が飾ってあった・・・。

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 若い頃の母親を演じたのがチャン・ツィイー。化粧品のテレビCMにも出ている女優で、ジャッキー・チェンの「ラッシュアワー2(2001)」でハリウッドにも進出した、今最も売れているアジアの女優だそうである。

 いつも膝の所がもこもこ突き出たモンペ姿で走り回っていて、好感がもてる。走り方もがに股風だが、あれは演出なのでしょうか。1回目の鑑賞では、彼女だけを捉えたショットが多過ぎるとうるさく感じたが、2回目では彼女の一途さを描こうとしたものだと納得できた。
 僻地の村に初めて訪れた学校の先生に、村一番の器量よしの娘が一目惚れした瞬間が描かれていました。

 二人が知り合うのは1958年。『村で初めての自由恋愛の例』だったらしい。抱擁はおろか、映画では手を触れ合うこともない、そんな時代の出来事だ。遠くから見つめるだけ、そんな恋愛ですな。

▼(ネタバレ注意)
 “文化大革命”の数年前だけど、既に思想統制が始まっていたらしく、先生は右傾化しているとの理由で町に呼び戻される。
 恋愛中心の描き方なので、この辺りの社会情勢については映画ではふれてないが、村の人々の生活とかをもっと見たかったとの思いは残りましたな。

 冬休み前には帰って来るという先生を、娘は吹雪の中で恋いこがれ、病気になったりする。高熱をおして町まで会いに行こうとする所は鬼気迫るものがありました。過去の話では、二人の結婚までは描かれていない。

 終盤では、かつて母親が先生を待ち続けたのと同じ吹雪の中を、100人以上の教え子達が先生の棺を担いで行進していく。そして、ジワッとくるラストシーン。
 息子が町に帰るというその日、母親の耳に何処からともなく亡き夫の声が聞こえてくる。40年間聞き続けた、生徒を教え導いた声だ。夫に最初に惹かれたのも、その声だった。
 声に誘われるように母親が校舎の前まで歩いていくと、あと数ヶ月で壊されるであろう其処には沢山の村人が集まっていた。そして、中で朗読をしていたのは・・・。
▲(解除)

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 中国映画は初めてなので、例えば経済などはどのようになっているのかよく分かりませんね。村に店はあったのか、食料はどのようにして得ていたのかなど全然分からない。ヒロインの村の娘も一日中先生の姿を待ち伏せしたりして、畑仕事をしている風でもないし、ちょっと気になりました。
 陶磁器の修理屋さんが出てきて、割れた茶碗を鎹(かすがい)のようなものでくっつけるシーンは面白かった。





・お薦め度【★★★★=友達にも薦めて、ツィイーファンなら】 テアトル十瑠

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2 コメント

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録画はしたけれど (kiyotayoki)
2005-11-11 02:14:51
録画したままになってる映画って結構沢山あるんですが、実はこの映画もその1本なんです^^;

これを機会に見てみようかな・・・もし見たら改めてまたコメントさせていただきますね(^_^;)
お薦め (十瑠)
2005-11-11 17:51:25
1回目は、どこかのサイトに書かれていたようにチャン・ツィイーのプロモーション・ビデオのように見えますが、2回目は気になりませんでした。

「あの子を探して」も観たくなりましたね。

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