5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

しべりあから吹いてくる風

2012-01-29 21:44:24 | 自然
夜になると気温がぐんと下がってきた。

日経電子版には「スーパー寒気到来、犯人はブロッキング高気圧」という記事が見られる。シベリアから数年に1度というような「スーパー寒気」が日本上空へ流れ込み始めた。バイカル湖付近の寒気の中心は上空約5500メートルで零下50度に近く、この影響で日本付近は冷凍庫に入ったような状況がさらに1週間程度続きそう。日本海側では記録的な豪雪が予想される、とある。

時事の記事では「2月にかけ厳しい冷え込み=日本海側に大雪の恐れ」というリードで、気象庁の先1ヶ月予報について書いている。それによると、2月初めにかけて冬型の気圧配置が強まり、全国的に気温が平年よりかなり低くなる見通し。日本付近では偏西風が南に蛇行し、北極周辺の寒気の影響を受けやすい。1月末ごろから2月初めにかけては、シベリア高気圧とアリューシャン低気圧の勢力がともに強まって、強力な冬型の気圧配置になる。

さらに、岩手日報は、厳寒が続く岩手県内、暖房設備や防寒対策が十分でない被災地の仮設住宅などで暮らす人たちには厳しい季節がまだ続きそうだ。盛岡地方気象台によると、この冬の東北地方は西高東低の冬型の気圧配置の影響で日本海側は大雪、太平洋側はよく晴れて地表の熱が奪われる放射冷却が起こりやすく、県内各地の一日の平均気温が平年値を3度前後下回っていると書いている。

3つの記事ともに共通するキーワードは「シベリア寒気団」であるが、そんな厳しい寒さを詠んだ句がこれ。

「しべりあの雪の奥から吹く風か」

「海鼠句」でも引用した寺田寅彦の再登場である。「シベリア寒気団」や「西高東低の冬型気圧配置」なんて気象用語など、いまでは誰でもよく知っているが、この句の出来た昭和3年(1928年)頃には未だ耳新しいことばだったのだろうか。「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉を生み出した寺田は理学博士であったのだから、冬の天候気候についても、庶民に向けて知らせようとする意識を持っていたのだろう。

厳寒の北風の冷たさを、シベリアの雪が練磨した冷たさだと受け止めたのは、俳人の感覚ではなく、科学者の事実に基づく表現だった。「文人たちの句境」の関森勝夫は、うがった言葉を生み出せる寅彦の歌心にまなびたいという。




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