5522の眼

ゆうぜんの電子日記、2021年版です。

ヴェルレエヌのヰ゛オロン

2012-11-27 22:41:16 | ことば
「秋の日の ヰ゛オロンの ためいきの 身にしみて ひたぶるに うら悲し
鐘のおとに 胸ふたぎ 色かへて 涙ぐむ 過ぎし日の おもひでや
げにわれは うらぶれて こゝかしこ さだめなく とび散らふ 落葉かな」

上田敏の海外詩選集「海潮音」に選ばれたポオル・ヴェルレエヌの有名な「落葉」の詩、街中の街路樹が紅葉した今にふさわしい詩のようだ。

言語学者の金田一春彦先生も「秋も終わり冬の初め、枯葉が舗道にかさこそと音をたてて散るころになると、このベルレーヌの詩が感傷家たちによってくちずさまれる」としている。先生は上田訳のうつくしさではなく、現在ならヴィオロンとすべき表記を「ヰ゛オロン」としたことに興味がいったようだ。

新しく外来語がはいってきた明治頃には、それらを日本の文字でどう表記するかというのことがおおきな問題だった。たとえば、これから必要になる「ストーブ」にしても「言海」はストウブ、「辞林」はストーブ、「言泉」はストオブ、とそれぞれに表記が違う。

有名なドイツの詩人「ゲーテ」の名前は極端で、終戦までの間に29種類の違った書き方をされており、森鴎外はひとりでギョウテ、ギョーテ、ギョーテー、ギョヲテ、ギョオテなど5種類も試みたというのは、「日本外来語の研究」の楳垣実説であると紹介している。

「海潮音」で上田敏は、「ポオル・ヴェルレエヌ」と表記しているが、今なら、ポール・ヴェルレーヌという表記になるはずだ。

コミュニケーションが世界的に拡がった最近は、外国語が押し寄せてくる毎日だ。100年前の上田敏とは違った意味で、どうカナ表記すべきかという問題は現在も継続しているわけだ。

11月15日は”Beaujolais Nouveau”の解禁日だったが、こんなツイートをした。

「『ボジョレー ヌーヴォー』、『ボージョレ・ヌーヴォー』、『ボージョレ・ヌーボー』、『ボージョレー・ヌーヴォ』、『ボージョレー ヌーヴォー』、さてどれにしようかな。」 微妙な表記の違いは、ワインを輸入したワイン業者のラベル名を並べてみたものだが、金田一先生は笑ってくれるだろうか。










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