特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

違反行為≠違法行為

2007年04月28日 | 田名部語録

あとで、じっくりと検証させてもらいますが、とりあえず、これだけは先に言っておきます。

特待生問題、高野連の全加盟校実態調査を承認
(2007年4月24日22時24分  読売新聞)
保護者や生徒が解約に同意しない場合について、田名部和裕参事は「経済困難者を対象にした奨学制度や公的な制度への切り替えを学校の方で誠意をもって対応してもらうようお願いしたい。違行為の上に成り立った(特待生の)契約は成立しない」とした。

たとえば、詐欺による契約は取り消すことができます(民法96条)。野球賭博で負けたからといって、賭け金を払う義務は(法律的には)ありません。法定金利を超過した利息分をサラ金に払う義務が(法律的には)ないのと同じです。違行為の上に成立した契約なら、当事者が取り消しまたは無効を主張できるのは当たり前です。

しかしながら、単なる一競技団体の内部規定にすぎない「学生野球憲章」に違しているからといって、契約当事者でもない高野連様が特待生の「契約」を撤回するように指示するのは横暴きわまりない話です。こっちのほうこそ「違性」の疑いがあります。契約不履行で訴訟すれば特待生側が学校側に勝てるのではないでしょうか(内容によるでしょうけど…)。


益田東

2007年04月28日 | 高校別

4月26日に県高野連に申告、西部地区予選を勝ち抜いていて28日からの春季県大会の出場が決まっていましたが、出場を辞退しています。

同校のWebサイトによれば、3区分の特待生制度があるようです。

益田東高等学校>授業料等必要経費
A特待(学業特待とスポーツ特待)・・・入学金および施設設備費免除、
     原則として3年間授業料全額免除
B特待(学業特待とスポーツ特待)・・・入学金および施設設備費免除、
     原則として3年間授業料半額免除
C特待(学業特待とスポーツ特待)・・・入学金および施設設備費免除

地元紙・山陰中央新報の「高校春季野球県大会 益田東と倉吉北が出場辞退」(07/04/27)によれば、53人の部員のうち48人が特待生であり、中国新聞の「益田東高が「特待」で辞退(同)によれば、A特待とB特待がそれぞれ21人、C特待が6人ということです。

うーむ。だんだん私立高校ガイドになっていきそうな予感が…。


江南義塾盛岡

2007年04月28日 | 高校別

石川啄木や都市対抗野球大会の敢闘賞に当たる「久慈賞」に名を残す久慈次郎が在籍したことがあるようです(啄木は盛岡中中退、久慈氏は盛岡中→早大ですので、いわゆる予備校時代の話ですが…)。06年の秋季県大会ではベスト8に残り、「21世紀枠」の県推薦を受けています。

4月25日に酒田南とともにいち早く“自首”して、春季岩手県大会盛岡地区予選の出場を辞退しました。

同校のWebサイトには特待制度について次のような記載があります。

江南義塾盛岡高等学校>募集要項
次に該当する生徒で、希望者は、在学中の授業料が免除される特待制度があります。
ア、 心身共に健康で学業成績及び人物の特に優れているもの(選考試験実施)
イ、 運動が特に優れている者で、学校長の推薦がある者

右クリック禁止の岩手日報社Webサイトによれば、同校の特待制度は99年に始まり、30人の野球部員中23人が該当するそうです。まあ、右クリック禁止でもソースは取得できます(余計な手間をかけさせやがって…と反発を招くだけです)。

江南義塾盛岡が出場辞退 野球部員の特待制度で
(岩手日報 2007.4.25)
三浦校長は「生徒や保護者には大変申し訳ないが、これは違法行為。該当する生徒にはおわびをした上で制度の解約をお願いする」としている。

別のページで述べましたが、これは断じて違法行為ではありません。もし違法行為なら、校長先生にもお辞めいただかねばなりません。「学生野球憲章」という名の大学野球連盟と高野連加盟校にだけ適用される“経典”に触れているだけです(しかも、大学と高校では扱いが異なることになりそうです)。

この学校の対応には、さらに問題があります。「波紋広がる「特待生問題」春季大会への出場辞退相次ぐ」(2007年4月25日2時11分  読売新聞)によれば、どうやら今後は野球部員(だけ?)は特待生の対象外になるようです。

当面の焦点は、いわゆる「超」名門大学の付属・系列校です。どうせ、特待生もその起源をさかのぼれば東京六大学に行き着くはずです。これらの学校が学生野球憲章に抵触しないような制度にしているのなら、他校も「右に倣え」すればいいだけのことです。


寒川(香川)

2007年04月28日 | 高校別

県大会準優勝で四国大会出場が決まっていましたが、寒川の出場辞退により、徳島と同じように準決勝敗退の2校で代替校の座が争われました。 49人の部員のうち、44人が特待生制度を利用していたようです。

元スワローズの西村龍次の母校としても有名ですが、「寒川」(さんがわ)の名前は旧大川郡寒川町に由来するだけです(たぶん)。02年2月に同町を含む5町が合併して「さぬき市」という間の抜けた(抜いているのは「ま」ではなく「さ」ですが…)市名になっています。

同校のWebサイトによると、普通科スポーツ選択コースでは週3コマの体育の授業のほかに、週5コマの「専門体育」の授業が組み込まれているようです。…ということを調べているうちに、発見したのが次のページです。

■ 藤井学園寒川高校>トピックス>寒川高校野球部 夏の選抜高校野球(香川県大会)

ご丁寧に本文中にも「5対2で香川西が選抜出場を決め、寒川高校野球部の夏は幕を閉じました」と記載されています。これを読んだ途端、私は部長の退任は当然かも?と思えてきました。はい。50人近くいる野球部員の誰1人としてこのページを読んでいないのでしょうか? 


佐山和夫氏

2007年04月27日 | ブルータス

とても意外でしたが、佐山和夫さんが次のような発言をされています。

クローズアップ2007:高野連の特待制度根絶策 実効性が課題、歓迎する声も
(毎日新聞 2007年4月21日 東京朝刊)
◇調査徹底し前進を--ノンフィクション作家の佐山和夫さんの話
 学生野球憲章の精神を守るのは当然のことで、その具体的方策が示された。これまで不透明だったものが透明になる。調査、分析を徹底して、高校野球本来の姿で前進してほしい。フェアな精神を追求する方向に注意が喚起されるよう望みたい。

まさか、こんな形で佐山さんと「対決」することになるとは思いませんでした。まあ、読売や産経と同一歩調をとるのもむずかゆいところです。厳密には、西武「裏金」問題 高野連の対応は疑問だらけ(4月26日付・読売社説)に全面的に同調するものではありませんけど…。

新聞に掲載される識者のコメントは、電話取材の記者の問いを否定せずに相槌を打つと、その問いがそのまま掲載されてしまうものだそうですが、佐山さんが「学生野球憲章」の信者だとは知りませんでした。

よく調べてみたら、佐山氏は高野連様の「顧問」でした。なるほど、身内の決定は否定できないものでしょう。佐山氏を中立的な立場であるかのごとく「ノンフィクション作家」の肩書で紹介しているこの記事は、ミスリードを意図しているのかもしれません。


日本航空

2007年04月27日 | 高校別

春季山梨県大会の8強に残っていましたが、26日に出場辞退を決めています。 91人の部員のうち数十人に対して入学金・授業料・寮費などを減免しているとのことです。

県内2校「制度あり」 (2007年04月27日朝日新聞山梨版)
今回の調査を受けて、自校の制度が憲章に抵触すると判断し、25日に県高野連に報告した。奨学金制度は維持するものの、今後、野球部員には適用しないことを決めたという。梅沢理事長は「授業料が安い公立高校に対抗するには、授業料を免除するしか、選手を集めることは出来ない。強い選手を育てるためによかれと思ってしてきたことなのに、残念だ」と話した。

これが一番恐れなければならないことです。学校側としては、奨学金を全廃することはできません(するところもあるでしょうが…)。結果的には、野球部員だけ排除する形になってしまうわけです。

その先に何があるか、今でももう見えています。身体能力にすぐれた高校生は野球をやらなくなります。トップレベルの高校生の競技人口が減少したとき、どうなるのか、ご乱心の「殿」にはおわかりにならないのでしょうか?

これは高校野球だけの問題ではありません。プロも大学も社会人も影響を受ける重大な問題なのです。


生光学園

2007年04月27日 | 高校別

県大会で優勝して、5月3日からの四国大会に臨むことになっていましたが、25日に出場辞退の意向を四国地区高野連に伝えています。春の四国大会は各県2校出場ですから、準決勝敗退の2チームが「補欠」決戦に臨むことになりました。

県秋季大会では02年から06年まで5年連続ベスト4以上で「非常連校の最上位校」であるにもかかわらず、1度として「21世紀枠」とやらの推薦を受けたことがありません。推薦されたのは、生光に負けたり、生光より先に負けた県立校でした。

生光が「いわく」つきの学校だと言いたいのではありません。「21世紀枠」こそ、いわくつきの制度なのです。念のため。

四国大会辞退を検討 生光学園高、野球部員の奨学制度で
(徳島新聞 2007/4/24 10:58)
市原清校長は「少子化が進み、公立校が多い徳島県で私学が生き残りを懸けて優秀な人材を確保するための一つの方法だが、憲章に抵触するのであれば是正する。四国大会出場は日本高野連の見解を待って最終結論を出すが、辞退を検討している」と話している。

このように語っていた校長先生は、翌日も平身低頭です。

高校野球:生光学園高、奨学金制度が学生野球憲章に抵触 春季四国大会を辞退 /徳島(毎日新聞徳島版 2007/04/26)
 市原清校長は「県高野連を通じ、日本高野連に見解を尋ねたところ、『憲章に抵触する』という回答だったので今回の措置を取った」と経緯を説明。「奨学制度は本校で野球をしたいという生徒の思いをかなえ、家庭の経済的負担を軽減するためのもの。辞退は残念だが、ルールに従い、悪しきは是正し、夏に向けて再出発したい」と話した。
 同校では経済的に苦しい家庭の生徒や学業、スポーツに秀でた生徒を対象に、入学金(25万円)、授業料(月3万3000円)、施設充実費(同1万3500円)などを免除する制度を導入。野球部員83人のうち、74人が適用を受けていた。

というわけで、どうやら無条件全面降服されるようです。「何が悪い!」と開き直ってほしいとは思いませんが、野球部だけで74人も入学金や授業料を免除して、学校経営として成立するのが不思議な気もします。

同校のWebサイトでは、07年の募集人数は前期240名、後期若干名です。全国レベルならまだ理解の範囲内ですが、ここまでやると、シンパシーを抱くのはかなり無理があるでしょう。それは、さて置いても、問題は残るのです。

高校野球 春季四国大会 香川、徳島で代表戦
(2007年4月26日  読売新聞)
生光学園は25日、普段通りに練習したが、山北栄治監督は「子どもたちの内心は穏やかではないが、気持ちを切り替え、夏の大会に向けて練習したい」と話した。部員の一人は「親に迷惑をかける形になり、気持ちのやり場がない」と表情を曇らせた。

この部員が何か悪いことをしたのか、ということにしかなりません。「教育の一環としての部活だから、授業料や入学金の減免という形であっても金をもらうことはまかりならぬ」というのが高野連様の教義です。こんな思いをさせることが「教育」なのでしょうか?

昔、某宗教団体の勧誘を受けたとき、「日蓮」と呼び捨てにしたら叱れらました。「日蓮上人様」と呼ばなければいけないようです。アマチュアリズムとは“宗教”だと私は理解していますので、「高野連様」と呼ぶようにしています。まあ、「将軍様」も似たようなものかもしれませんけど…。


倉吉北

2007年04月27日 | 高校別

26日に県高野連が春季県大会出場辞退を発表しています。鳥取県大会は28日からの開催です。

倉吉北が出場辞退 特待制度問題で (新日本海新聞 4月27日)
倉吉北高は学業とスポーツ系の部活動などで特待制度を導入しており、奥村校長は「日本学生野球憲章に違反するスポーツ特待制度に該当すると判断した」と説明。野球部員の九割以上が同制度を受けており、県大会決勝が予定される5月3日まで勝ち進んだ場合、当該選手の対外試合参加が差し止められるため、「その時点での途中棄権は忍びない」と出場辞退を決断した。

5月3日から該当選手は出場停止になるので、倉吉北が準決勝を勝ち上がり、決勝が不戦敗になると、運営サイドとしても頭が痛いでしょう。まあ、倉吉北と言えば、昔から「野球留学」で有名なところで、06年夏は部員43名中39人が県外出身だったようです。出場停止をくらったこともありますし、高野連様からは覚えのめでたい学校ではないのでしょう。鳥取の出場辞退は1校だけのようです。

高校野球:春季県大会 倉吉北が出場辞退--特待生問題で /鳥取
(毎日新聞鳥取版 2007年4月27日)

同校の田中友幸野球部長によると、授業料は通常、月額3万3600円だが、50人いる野球部員のうち四十数人は9500円になる特待生に選ばれているという。田中部長は「チーム内で試合に出られたり、出られなかったりする選手が出てくるのは不公平だ。本校だけでなく、相手校にも影響が出てくる」と述べた。

なかなか骨のある先生のようです。まあ、今はまだ突出しないほうがいいような気もしますけど…。それを「不公平」と言うなら、特待生と非特待生がいるのも「不公平」というものでしょう。非特待生を野球部に受け入れているのは評価できるにしても、です。

同じgooのブログに倉北の記事がありましたので、紹介しておきます。
■ 新・瘋癲球人日記>くらきた


大崎中央(宮城)

2007年04月27日 | 高校別

22日に春季県大会北部地区予選1回戦を突破していましたが、26日に出場辞退を決めて、県高野連から発表されています。宮城からは東北に次いで2校目になります。

高校野球特待制問題 宮城・大崎中央高が県予選棄権
(河北新報2007年04月26日)
同高は、運動部を対象とした「特活特待生制度」を約20年前に導入。現在、野球部員32人のうち29人が特待生で、授業料は全額免除されている。

全国的には知られていないでしょうが、東和とともに「2強」を追うグループの一角に位置しています。今年の3月に学生野球協会から部内暴力で監督とコーチが1年間の謹慎、部長が警告の処分を受けたばかりです。

まあ、部内暴力はれっきとした刑法犯ですが、特待生は法律に触れるわけではありません。学生野球憲章という学生野球協会内部の規定に触れると解釈されているだけのことです。


この基準でいいの?

2007年04月27日 | 特待生の何がNG?

「特待制度問題:学生野球 高野連が「補足説明」 初日申告2校、試合処遇でも指針」(毎日新聞 2007年4月26日 東京朝刊)によると、高野連の判断基準が示されたようです。

◇判断がつきにくいケースの日本高野連の解釈◇
(1)学業優秀または保護者の経済的理由で奨学金を受けている場合
 →スポーツ部活動(野球)が条件に含まれていなければ違反ではない
(2)学業優秀で、品行方正かつスポーツ部活動に取り組んでいる生徒が対象の場合
 →学業優秀の基準に適合していれば問題はないが、スポーツ部活動の支援が主で、一般生徒よりも低い学業基準などが設けられている場合は違反
 →この制度とは別に学業優秀制度があり、その基準に適合する学力があれば、これまでの扱いは違反とみなさない。今後はその制度に切り替える
(3)学業優秀かつ経済的援助が必要で、スポーツ部活動に熱心に取り組んでいる生徒が対象の場合
 →スポーツ部活動が必須の条件なら違反
 →学力や経済的理由で別に明確な規定があり、それに適合すれば違反ではない
(4)スポーツコースがあり、そのコースの生徒のみ学力や経済的理由を一般生徒とは別の基準で定めている場合
 →スポーツ部活動(野球)だけに与えられた特典とみなし違反
<以下略>

まあ、今頃こんな基準を出されても、学校側は困るでしょう。私は、長いこと「野球部を退部したら支給が打ち切られるものはダメ」と思っていたのですが、どうもそういうわけでもないようです。

(1)と(3)は、おおむね妥当であって、理解の範囲内です。(2)は学業優秀と品行方正はスポーツ優秀にまさるとおっしゃているわけです。(4)は完全に噴飯ものです。高野連様の価値観にみんなが従わなければならないのでしょうか?

バカでワルだが運動能力だけはあるという生徒は、どんなクラスでも1人や2人はいるものです(小中学校の話)。そういう生徒はそういう生徒なりの道を行けばいいのであって、そんな生徒が卑屈にならずに済むような環境を整えることこそ「教育」というものだろうと私は考えています。

学業優秀も結構、品行方正も大いに結構、それと同じようにスポーツ優秀も評価されていいのです。もちろん、そうでないという考え方もあるでしょうが、それをよそ様に押しつけてはいけません。価値観は人それぞれであって、私立校が独自の教育理念を掲げることは否定されることではありません。

カタカナ・イングリッシュのスピーチで話題になった(公立高校出身の)投手は、その「勇気」がむしろ好感をもって受け止められたはずです。最初からわかっていたことですが、いよいよ本格的に「宗教」の領域に入ってきたようです。

まあ、学生野球協会が定めた学生野球憲章を高野連が勝手に解釈して、それが大学野球連盟の解釈と異なる場合には、ダブルスタンダードになってしまいます。「これでいいんだな、後悔しないよな」と言いたくもありますけど…。