つぶやき、或は三文小説のやうな。

自由律俳句になりそうな、ならなそうな何かを綴ってみる。物置のような実験室。

ペシミストのユーモア

2017-08-23 21:06:40 | 文もどき
Life is beautiful というイタリア映画の主人公をたまに思い出す。人類史上最も険しい苦境のひとつ、その渦中において知恵と勇気、なによりユーモアを忘れないその姿に、未だ見ぬイタリアへの憧憬を深くしたものだ。よって立つスタンスはあのように在りたいものだ。
王様の耳は驢馬の耳‼︎ と叫ぶ穴を掘るための土すらないのでは、なおさらである。

ギネスを思いながら

2017-08-22 23:01:46 | 文もどき
普段はビストロだかタヴェルナを営んでいるのを、夏の盛りだけ海辺へ越してきたのだという。夕暮れ、はしゃぎすぎたのを諌めるように吹くオフショアの風になぶられ、早々にビールを切り上げた。
案の定、頭痛の芯ができ始めていて、私は代わりにトマトジュースを注文した。ポニーテールの似合う女の子にウスターソースはあるかと訊くと、不思議そうな顔をしながらも中濃ソースなら、と答える。やり取りを聞いていたのだろう、奥のほうで料理の仕上げをしていた男性が犬の顔がプリントされたラベルの容器を持ってきてくれた。
トマトジュースにウスターソースを入れると、風味が良くなって美味しいんだよ。
半白の刈り込んだ髪によく日焼けした男性は女の子に言い、私がソースをグラスに落とし終えるとフタをした。
リーペリンがあればよかったんですけどねえ。
声には、僅かばかり申し訳なさが滲んでいた。なにぶん簡易営業なもので、とでもいうような。
私たちは笑みかわし、つかの間小さな頭痛の芯を忘れた。