今回は中国語担当の劉 せいせい講師と黄 雅婷講師に中国では春を何で感じるか、またどのように過ごすかなどについて語り合っていただきました。
Q:中国では秋に「中秋節」がある一方、春には「清明節」があるそうですが、これはどんな日ですか?
劉:春風が吹き暖かくなると空気は新鮮で爽やかになり、天地は明るく清らかになるので「清明節」と呼んでいます。清明節は毎年4月5日前後の日になりますが、この日には先祖の墓に行ってお参りをする習慣があります。またそのときには紙のお金を燃やす習慣もあるのですが、これは先祖の人があの世で不自由をしないようにという願いを込めた行事なのです。通常は紙でお金を作るのですが、なかには車や馬などを紙で作り、これを燃やすこともあるようです。
黄:清明節になると中国各地で春を感じるのですが、お茶の産地では清明節の時期は大切な時期になります。たとえば中国緑茶を代表する龍井茶というお茶がありますが、清明節の前に摘んだ茶葉は最も香りと甘みがあり高級な茶葉であるといわれ、清明節の前という意味で「明前茶」と呼ばれています。茶葉を扱うお店では「明前茶」と表示してあることがありますので、買われるときに注意して見ると良いのではないかと思います。お墓参りの話が出ましたが、我が家では祖父母がいた頃は金色と銀色の紙で昔のお金の型をつくって墓参りをし、そこで燃やすことをしていましたが、祖父母が亡くなってからはそのような習慣がなくなってしまいました。
Q:中国では春に桜の花見をする習慣はありますか?
劉:私の住んでいた吉林省の長春はとても寒い地域ですので、桜の木はほとんど見られません。中国人は梅の花を好みますが、梅が咲く時期はまだとても寒いので、日本の花見のように花を見ながら弁当やお酒を飲んだりすることもありません。散策しながら思い思いに梅の花を眺める程度であると思います。日本人は桜の花の薄いピンクに哀愁を感じ、また花が散る様子を見て感傷にひたるといいますが、中国人は鮮やかな色を好むため真っ赤な梅の花や、大きく色鮮やかな牡丹の花を好む傾向にあります。ただし、最近では花見シーズンにあわせて日本を訪れる中国人観光客も増加しており、観光もいわゆる「爆買い」だけでなく、花見を楽しんだり茶会の体験をしたり、日本料理を味わったりというように日本の文化に触れるツアーがこれからはもっと増えるのではないかと思います。
黄:日本といえば桜の花ですが、中国の花と言うとやはり牡丹の花ですね。私の住んでいた河南省洛陽では牡丹が市の花になっていることもあり、毎年4月には牡丹祭りが行われるので、この祭りになると春がきたことを実感します。もちろん牡丹の花を見ながら弁当を食べたり酒を飲んだり、カラオケをしたりということはなく、家族や友人と一緒に公園を散策して花見をするのが一般的です。洛陽にもあまり桜の木はないので桜の花見をすることもありませんが、桜の時期に合わせて本当に多くの日本人が花見をし、また盛大に楽しむのは独特の文化であると感じます。
Q:中国で春になると食べる物を教えてください。
劉:今では春に限定されず年中食べられているのですが、元来は立春のときに食べる行事食に「春餅」があります。春餅は私の住んでいた吉林省を含む中国東北地方でよく食べられる料理で、小麦粉を水で溶いて円形に薄く延ばして油で焼いたものです。この春餅に肉料理、野菜料理、卵料理などを乗せて巻いて食べます。その他、私たちの地域ではよく立春の時期になると豚の頭を食べるのが伝統になっています。豚の頭を龍の頭に見立て、これを食べることによって龍のように上昇していくようにという縁起を込めた料理であるといわれています。
Q:春になると中国大陸から黄砂が日本にも飛来しますが、住んでいる地域では影響はありませんか?
黄:中国の北西部にはタフラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原があり、黄砂の三大発生地として知られています。黄砂は一年を通して発生する現象ですが、春は最も発生しやすい気象条件が整ううえ、偏西風にのって遠方まで運ばれるため黄砂は春を連想させる気象現象になっています。私の住んでいた河南省は黄河中流域の内陸部にあるため、西部にある砂漠地域からの砂が飛んできやすい地理条件にあります。したがって、春になると黄砂によって空がかすんでしまうこともしばしばあり、しかも年々ひどくなっているように感じられます。政府も植林をすすめるなどの対策を講じていますが、早く改善されることを人々は願っているのです。