中国東北地方は中国のなかでも寒さが厳しい地域ですが、今回は東北地方出身の劉 せいせい講師と袁 悦講師に中国の寒さ対処法について語りあっていただきました。
劉:私は吉林省長春の出身で冬になるとマイナス30度を下回ることもあります。ですから冬に外出するときはズボンは3枚程度重ね着し、上半身も3~4枚程度着た上にダウンのジャンパーなどを身につけます。それでも朝や夕方以降に外出すると寒いというより痛さを感じるので、買い物などはできるだけ太陽の出ている時間帯に済ませるようにしています。
袁:私の住んでいた遼寧省撫順でも冬にはマイナス30度近くになることがありました。私も外出するときは毛糸や綿の素材の下着やセーターを着用したうえで、ダウンジャケットを着たりしていましたが、特に下半身は冷えるので綿の入ったブーツも欠かすことができませんでした。それでも太陽が出ていない時間帯に外出すると長い時間過ごすことができないので、できるだけ太陽の出ている時間に用事を済ませるようにしていました。
劉:外はとても寒い東北地方ですが、この地方では家のなかの壁に沿ってパイプが通り、ここに熱い湯を通して家中を暖める暖房システムになっているため、室内温度は20度以上になって真冬でも半そでで過ごすことができるほどでした。日本の友人はそんな寒い場所で生活していたのだから寒さに強いだろうと思われているのですが、毎日暖かい家の中で生活しているので、東北地方出身の女性は実際には寒さに弱い人が結構多いのですよ。日本の大学では暖房を入れても良い時期が定められていて、設定温度も18度になっているので、むしろ日本で生活する方が寒さが堪えるといってもいいかもしれませんね。
袁:私の住んでいるところでもそのような暖房システムになっているのですが、我が家ではもう少し室内温度は低いため半そでで過ごすようなことはありませんでした。ですから、私も東北地方出身者ですが、劉さんに比べると寒さに弱くはないかもしれません。あと、東北地方では寒さ対策として二重窓を採用している家が多いのも特徴といえるでしょう。ただ、中国でも中部から南部にかけての地域ではこのような暖房システムを採用していませんので、日本と同じようにエアコンやストーブなどの暖房器具で生活しているようです。いずれにせよ、中国東北地方には寒さに弱い女性が多いのは確かなようで、特に日本の社会人、高校生などが真冬にミニスカートをはいたり、素足のままでいるのを見かけると、本当に驚いてしまします。
劉:寒さ対処法として食べ物について言えば、私の出身の吉林省には朝鮮族の人も多く住んでいるので、犬肉の鍋料理をよく食べます。犬の肉は体を温める効果があるといわれているので、寒さ対策としても有効なのです。あと、寒いときにはお酒も欠かすことができず、食事のときに白酒というアルコール度数50度程度のお酒を飲む習慣があります。そのほか、秋になると冬の備えとしてたくさんの野菜や果物を買って地下倉庫に保存します。たとえば梨は外の寒い場所において凍らせると甘みも増しますし、長期保存ができるようになるのです。また、白菜は東北地方の家庭にはなくてはならない「酸菜」という漬物にして長期保存した後、鍋物や炒め物などに使用します。
袁:あと、中国の冬の鍋物といえばやはり火鍋ですね。日本でもよく知られるようになりましたが、赤くて辛いスープと辛くない白濁したスープに具をつけていただくのですが、辛さによって体が温まり中国の冬の風物詩でもあります。私の住んでいる場所でも犬料理専門店がありましたが、羊肉料理もニーズが高まります。羊肉も犬肉と同様に体温を暖めるほか、栄養もとれるため東北地方の寒さ対策としてよく食べられます。また、我が家でも冬が来る前に白菜や葱などを100キロほど買っておき、野菜倉庫に保管しておきます。白菜は酸菜という漬物にしたうえで、親戚に配ったりしてお互いに助け合って長い冬を過ごすのが習慣になっているのです。
劉:東北地方では風呂に入る家庭は少なくシャワーだけで済ませてしまうため、寝る前には足浴をしたうえでマッサージをして足の血行をよくしてから寝る人も結構います。足を暖めることによって深い眠りにつくことができると言われているからです。そして、朝目覚めた後は朝食に暖かいお粥を食べたりして、また寒い一日の生活がスタートするのです。
袁:寒い日には運動不足になりがちなので、若者のなかには全面的に凍った川の氷の上でスケートしたりする光景もみられるのが、東北地方の冬の光景です。でも、お年寄りなどは外で運動することもできないので、暖かい暖房のよく効いた家のなかで家族や友人などとマージャンをしたり、囲碁・将棋を楽しんだりして長い冬の時間を過ごすのです。