中国語担当の黄 雅婷講師は9月生まれ、袁 悦講師は10月生まれの誕生日ということで、先日中国東北料理の店で誕生日祝い会を行いました。今回は二人の誕生日が秋であることにちなんで、中国の秋について語り合っていただきました。
左側が袁講師、右側が黄講師
Q:中国では秋はいつ頃、何によって感じますか?
黄:私は河南省の洛陽出身ですが、河南省は黄河下流域で中国全体で見ればほぼ南北の中央に位置しますので、秋の爽やかな時期は10月から11月にかけてです。中国には「秋高気爽」という言葉がありますが、高くて青い空、湿度も低く爽やかな空気の秋を表現しています。秋の果物と言えば私はすぐに「りんご」を思い浮かべます。秋になると家には箱の中に詰まったりんごがたくさん入った状態で置いてあるので、好きなだけりんごを食べることができたことを思い出します。そのほか、中国でも梨や柿といった果物も秋になると市場で見られるようになりますが、我が家ではやはり主役はりんごでした。秋の海産物といえば中国では「上海蟹」が有名ですが、この蟹は上海やその周辺地域では秋の風物詩であるのですが、河南省にまで出回ることはほとんどなく、私にとっては縁遠い食べ物でした。あと、日本では秋の魚として「さんま」や「さば」が有名ですが、中国では沿岸部以外の地域では海の魚を食べる習慣がほとんどないので、私は日本に来るまで「さんま」を食べたことがありませんでした。
袁:私は遼寧省撫順出身ですが、遼寧省は中国東北部に位置して日本で言えば北海道や東北地方の気候に近いので、秋の爽やかな時期は9月から10月上旬にかけてで、中旬以降になると早くも冬の装いになります。秋の果物については、私も黄さんと同じように「りんご」が思い浮かびます。この時期になるとお店にりんごが並ぶようになり、また我が家でもりんごをたくさん買っておくためです。あと、秋になると山菜が種類、数ともに豊富に出回るようになるので、とても楽しみが増えるのですが、日本で秋の味覚として有名な「松茸」はほとんど中国では食べられることはありません。また日本の皆さんは秋になると「上海蟹」を思い浮かべる人も多いようですが、上海からはるかに距離の遠い遼寧省では「上海蟹」は食べることも見ることもほとんどありません。あと、秋は長くて寒い冬支度の季節でもあるため、この時期になると白菜を大量に購入して、中国東北料理には欠かすことのできない「酸菜」という漬物をつくる準備にかかるのです。
Q:秋は行楽シーズンですが、中国でも旅行したり、紅葉を楽しんだりしますか?
黄:中国では10月1日の国慶節の日から1週間がゴールデンウイークになるので、中国では旧正月にあたる春節の時期と並んで行楽シーズンになります。もちろん旅行に出かける人も大勢いますが、家族ずれで遊園地や公園などの近場で遊ぶ人も多く、どこに出かけても人であふれています。一方、紅葉は大部分の地域でこの時期よりも遅くなるのですが、私の住んでいる洛陽あたりには紅葉の名所と呼ばれるような場所はありませんし、一般的に言えば中国では日本のように紅葉を楽しむという習慣もあまりありません。ただ、北京近郊には「香山」という有名な紅葉の名所がありますので、紅葉の時期に北京旅行する機会がありましたら、是非訪れてみてください。
袁:日本では「読書の秋」「スポーツの秋」「芸術の秋」などと呼んで、秋に様々なイベントが開催されたりしますが、中国でも私の住んでいた東北地方は秋の期間が短く、秋は冬に備えるための準備期間という位置づけで、秋をのんびり過ごしたり、いろんなイベントを楽しんだりする余裕はほとんどありません。また、私の住んでいた遼寧省では紅葉するような落葉樹も少なかったので、紅葉の名所と呼ばれるような場所もありませんでしたし、紅葉を楽しむという習慣もありませんでした。
Q:中国では9月頃(旧暦8月15日)に「中秋節」という重要な行事もあるのですが、どのようにして過ごしましたか?
黄:中国では「中秋節」には月餅というお菓子を食べながら家族団らんで過ごすというのが一般的だと思うのですが、我が家でもこの日に放映される「中秋晩会」というテレビ番組を見ながら時間を過ごしていました。中秋節ですから満月を眺めながらと言いたいのですが、中国の都市部ではマンションやアパートでの生活が一般的で、我が家でも窓から少し眺めるだけの場合がほとんどでしたが、時には近所を散歩しながら満月を楽しむこともありました。
袁:我が家も黄さんと同じようにマンションでの生活でしたので、満月をのんびり眺めることはほとんどなく、また私たちの地方ではもうこの時期になると夜はかなり冷え込むので散歩したりする人もほとんどなかったと思います。ところで、日本では満月に浮かぶ影の部分が「餅をつくうさぎ」の形に見えるそうですが、中国では地方によっていろいろな言い伝えがあるようですが、私の聞いた話では「不老不死の薬を飲んで月に行き一人寂しい天女、そして林の中で木を切る男の人」であるというものです。特に天女については小さい頃にその物語も聞かせてもらった記憶があり、こちらは結構中国の広い地域で伝わっているようです。