中国やベトナムなどでは新年を旧暦でお祝いをし、中国では「春節」、ベトナムでは「テト」と呼んでいますが、今年の旧暦新年は1月28日になります。そこで、今回は中国語担当の黄 雅婷講師とベトナム語担当のブーティ ゴック ハー講師に、春節やテトの過ごし方などについて尋ねてみました。
Q:春節やテトの過ごし方を教えてください。
黄:大晦日になると大晦日の夜や新年に食べる料理の準備をしますが、中国の北部では水餃子を食べるのに対し、南部ではおもちを食べるのが一般的です。でも私の故郷である河南省は北部とはいえないものの、やはり我が家では水餃子を家族でつくり、大晦日の夜は日本の紅白歌合戦のようなテレビ番組を見ながら家族団らんで過ごします。ちょうど年越しの時間になると、街中で花火があがり爆竹をならしたりするので、あたりは騒然としてとても賑やかな年越しになります。新年になると日本では初詣をしますが、中国では日本にように多くの人が家族揃ってお寺詣りをする習慣はありません。
ハー:ベトナムでも年末になると新年に食べるちまきや揚春巻などの正月料理を親戚の人などと一緒につくり、大晦日には「年末に会いましょう」という意味のタイトルがついたテレビ番組を見るのが恒例の行事になっています。テレビを見ながらドライフルーツやヒマワリの種などを食べて賑やかに過ごす家族が多く、親戚が集まるとカードゲームをしたりすることもあります。新年になると親戚・友人・知人の家に挨拶に出かけたり、お寺にお詣りする人も多く見られます。また、大晦日や新年3日目に先祖のために食事をつくりお供えをするという伝統行事を守っている家庭もあります。
Q:正月飾りなどをしたりすることはありますか?
黄:中国では「福字」や「春連」などの飾り付けをする家庭が多いです。「福字」は「福」と書かれた飾り物で、家の門や壁などに「福」に字を逆さまにして貼ります。「倒」と「到」は漢字の読み方が同じなので、「福を逆さまにする」→「福が訪れる」という意味を表すからです。「春連」は対句になった四文字などを家の門や入口の両側に張ります。「春連」には新しい年を祝い、豊年を願ったり、事業の繁栄を願ったり、家族の健康を祈ったりする文字が書かれます。そのほか、地域や家庭によっては竹を飾ったり、金柑を飾ったりすることがありますが、これも縁起の良い物とされています。
ハー:ベトナムでは新年に大きな皿に果物を乗せてお供えをしたり、居間に花を飾ったりします。私の住んでいた南部のホーチミンなどでは黄色い梅の花や金柑の花を飾ることが多く、北部のハノイなどではピンクの桃の花を飾ることが多いと聞いています。金柑はたくさんの実がなるため、縁起の良い木であるといわれており、新年の幸せを祈る特別な木であるともいわれています。
Q:お年玉の習慣はありますか?
黄:中国ではお年玉のことを「圧齢銭」といい、お年玉袋は「圧齢包」といいます。中国のお年玉袋は日本と異なり赤色の袋ですが、お年玉の習慣は中国でも一般的で新年になると両親や祖父母からもらうお年玉が一番の楽しみになっていました。
ハー:ベトナムでは新年に親戚の家に挨拶廻りをする習慣があり、そんなときに祖父母などからお年玉をいただくと、とても嬉しかった思い出があります。また、両親からも新年にはお年玉をいただきましたが、我が家ではもらったお年玉を両親があずかって貯金していたので、残りのお金で友人たちと飲食に出かけるのが恒例でした。また、お年玉袋は中国と同様にベトナムでも赤色の袋でした。
Q:新年に縁起をかつぐ習慣はありましたか?
黄:我が家では新年に水餃子を食べましたが、ときどき母はコインを入れた水餃子をつくり、それにあたった人は一年の運勢が良いなどといわれているので、食べるときはドキドキしたという思い出があります。また、中国では新年に魚料理を食べる家庭も多いのですが、これは魚の漢字の発音が「余」と字の発音とおなじであることから、「年年有余」つまり「毎年財産がたくわえられますように」という願いが込められているのです。
ハー:テトが近づくと家々では大掃除をするのですが、これはただ家を綺麗にするというだけでなく、旧年中の不運を追い出すという意味もあります。一方、元旦には掃除をしません。これは掃除をすると新年の幸運も掃きだしてしまうからであるといわれているのです。あと、新年になると各家庭では新年のあいさつ廻りをするのですが、新年初めての来客者が新年の運勢に影響を及ぼすといわれています。ですから、家によっては運勢の良い人を選んで、あらかじめ元旦の朝早くに訪れてもらうことをお願いすることもあるのです。ちなみに、我が家では家族そろって初詣に出かけた後、父親が一番最初に家に戻ることを習慣にしていました。