コメントをたくさん頂戴しました。
そこで、備忘録として制式蒸気機関車9600形のキャブの件について、自分なりにまとめてみます。
かの金田茂裕氏の蒸気機関車形式図集によると、9600は5つのグループに分けられています。そのうち最後のグループはすべて樺太に行ったので、内地に残り国鉄に移管されたものは4グループになります。
① 9600~9617 試作といわれるグループ。Sキャブ、2軸テンダーで有名
② 9618~49674 乙キャブ化、450立方フィート炭水車、いわゆる箱型テンダー採用
③ 49675~69665 6-13炭水車、いわゆる山型テンダー採用
④ 69666~79669 新製時から空制化、図面上は中高ランボード
このうち
グループ①とグループ②とグループ③、④の間には、機関車の基本寸法において違いがあります。それは、第4動輪中心から機関車後端までの長さ(ハングオーバー)が異なるのです。
グループ①: 2286ミリ
グループ②: 2007ミリ
グループ③および④: 1981ミリ
だんだんハングオーバーがなくなります。これは機関車の土台である台枠そのものの設計が変更になるという重大なものです。ところが火格子面積や煙管の長さに変更はなく、ハングオーバーだけの変更なのです。
キャブの前妻からバックプレートまでの長さに変更はなく、グループ①に比べて、グループ②、③、④のキャブは短くなることになったのです。
形式図上のキャブ幅(長さ)はグループ①が1638ミリ、グループ②が1461ミリになりました。理由は不明ですが、テンダーが2軸から3軸に変わったことと関係がありそうです。
1913年から製造されたグループ①のキャブは有名なSキャブでしたが、実は後妻が付いていませんでした。これは、グループ②の乙キャブにも受け継がれていたのですが、1915年の9658号以降から後妻が追加されました。これが20度の後退角のをつけて取り付けられました。キャブの居住性の改善という理由でした。これで、キャブ幅は1575ミリまで延長されました。
このときの妻板は、入り口部分の鴨居がありませんでした。この設計が21号には受け継がれているようです。
25号の鴨居をみると、明らかに後から追加されているのが分かります。
グループ①とグループ②の9657号までは新製のときに後妻がなかったのですが、記録から推定すると、1928年5月以降に追加改造されたようです。(図面LA3040の指示による)
その後、キャブは再び延長されます。この改造はいつ行われたのか、不明なのですが、樺太に送られた車両の最終生産が、1940年で、これ以降ではないかと思われます。とすれば、1941年に製造された21号がテーパ付きなのは、ある程度理解できるかもしれません。(でも、キャブ長は1555ミリですが。)とすれば、最終的なキャブ延長は戦中ということになります。
しかし、1937年と1941年に作られた大夕張のNo.3とNo.4はすでにキャブが延長された設計で、テーパはなく、その長さは1665ミリと国鉄の9600の延長キャブの設計と一致します。
結局、延長がいつから行われたのか詳しいことはわかりません。
ところで、まだ不思議なことがあります。
9643と9645(夕鉄24号)はグループ②に属します。
一方、59611と59672はグループ③に属します。
両方とも端梁までキャブが延長されています。ハングオーバーの寸法には26ミリの差がありますのでキャブの幅(長さ)26ミリ違うことになります。80分の1で0.3ミリの差ですが、模型を作る身としては気になりますね。設計図面ではキャブ長は1665ミリになっていますが、どちらのグループのための設計か不明です。ちなみに珊瑚のキャブは20.5ミリ、実物換算で1640ミリです。
どんどんメンドクサクなってきました。
キャブの居住性の改善は妻板を付けたということで 20度のテーパーを付けた理由ではないですよね(^^;)なぜテーパーだったんだろう?
私は、もともとキャブが小さかったからだと思うのです。
後妻板がなかったので、単に風除けみたいな発想のキャブなので、小さくてもよかったんですが、あんまり吹きっさらしなので、板をつけrことにした。でも、そのまま直角につけると狭くなって、運転席に入りずらい。そこで出入りをしやすくするためにテーパをつけたのではないかなと。
でも、これでは根本的解決ではなかったので、結局、キャブ延長工事が決定されたのかなと。
あくまで推測です。
だれかこのいきさつご存じないですかね…
コメント入れてくださり、ありがとうございます。
お元気ですか?
9600のキャブ延長は、結局、全グループに対して行われました。ただ、写真でもお分かりのように、継ぎ目が明らかのものと、そうでないものがあります。
延長といえばグループ①のSキャブは、延長によって巨大になりましたね。その辺は、また、稿を改めようと思っています。