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Symphonyeel!(シンフォニエール!)

ようこそ。閲覧者の皆さんとのメッセージが響き合う場となってほしいナ―という想いで綴ってます

未来予想図 ~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~ (監督:蝶野博)

2007-10-10 23:13:14 | シネマレビュー
“自分の予想図を描く”というコト―

「大事なコトって、・・・ちゃんと言えるチャンスは少ないんですよね」

ほら 思ったとおりに かなえられてく・・・

世代を超えて歌い継がれるDREAMS COME TRUEの名曲、「未来予想図」「未来予想図Ⅱ」の世界観が、豪華キャストを顔ぶれにして、ハートウォーミングな映画に!

【ストーリー】
時は2002年。主人公の宮本さやかは印刷会社に勤める普通のOLだった。1997年、大学時代に出会った恋人・福島慶太とは、「幸せな未来がずっと続くと思っていた」、誰もがうらやむカップル。その慶太は、スペインのランドマーク的な建築物、サグラダ・ファミリアで有名な建築家・アントニ=ガウディに憧れ、建築事務所で働いている。口下手ではあるが自分の夢を直向きに追い続ける慶太の言葉に後押しされ、一度は諦めた雑誌編集者を目指し、転職活動を始めたさやかは、各社の面接で不器用ながらも自分の想いを伝える中、雑誌「TICKLE」の編集長、後藤大介の目に留まり、採用されることになる。だが、そんな矢先、慶太にスペイン赴任の話が持ち上がったのだ。それぞれの夢を追う二人は、別々の道を歩み始めていた。
5年後・2007年―。30歳を目前にしたさやかは、インターネット上で話題を呼んでいる「恋の叶う花火」を作る花火職人・井上巧己の取材を企画するのだが、拓己は取材を拒否。仕事に熱中するあまり、妻・苑との関係が冷え切っていた拓己は、巷の噂にうんざりしていたのだった。
一方、離れて暮らすさやかを優しく支え、気にかけてくれている、福岡の実家で小料理屋を営む母・陽子が倒れたとの連絡が入る・・・。
自分自身にけじめをつけるため、さやかは有給を取り、慶太のいるスペイン・バルセロナ行きを決意。大学の卒業旅行で訪れた思い出の地で、さやかが偶然目にしてしまった光景とは―

さやか、慶太の関係は―
それぞれの登場人物が描く未来予想図はどのように変わっていくのか―
そして、それぞれの【『ア・イ・シ・テ・ル』のサイン】は、届くのか―

(パンフレット・予告チラシより一部引用アリ)

【詳細情報】
監督:蝶野博
脚本:狗飼恭子、志羽竜一
音楽:岩代太郎
主題歌:DREAMS COME TRUE「ア・イ・シ・テ・ルのサイン~わたしたちの未来予想図~」
配給:松竹
原案:DREAMS COME TRUE ♪「未来予想図」「未来予想図Ⅱ」

【キャスト】
宮本さやか:松下奈緒
福島慶太:竹財輝之助
井上拓己:原田泰三(ネプチューン)
井上苑:西田尚美
村本美樹(さやかの大学時代の友人):関めぐみ
平尾稔(あだ名はミノ。慶太の大学時代からの友人):弓削智久
宮本あすか(さやかの妹):藤井美菜
中島良郎(サグラダ・ファミリア工房の建築家。モデルは外尾悦郎):加藤雅也
後藤大介(さやかの上司):石黒賢
宮本陽子(さやかの母):松坂慶子

【コメント・感想】
①「未来予想図」そのものについて
♪「卒業してから もう3度目の春」・・・
ドリカムのヴォーカル、吉田美和さんというアーティストはとにかくパワーを感じます。目がきらんきらんしてて、口を大きく開けてアハハって笑って、歌って・・・。コンサートなどに足を運んだことはないですが、とにかく「キラキラしている、素敵な笑顔で輝いている」。そういう感じがして好感が持てるんです。私もああいう風な表現力を持つことができたらなぁと、人間として、音楽家の端くれとして尊敬してやまない一人です。
歌は当然知っていますし、映画は予告映像が劇場で流れていたときから注目していて、「ドリカムの名曲・『未来予想図』の世界が、倦怠期のカップルと親子の絆を軸にして、こんなにも温かい映画になるなんて!」というのが第一印象です。実は、「ブレーキランプ5回点滅」のサインはやったことがあるんです。「愛している人」に(笑)。最初は相手は笑っていましたし、私も恥ずかしかったですけどね。でも、そういう人にこそ出したいサインってきっとあるんじゃないかって。歌の歌詞に出てくるマネですけれど、そうすることが「アイシテル」を伝えるのって、なんだかスタイリッシュだな、と。

さて、ラブソングとしての未来予想図はいったんおいといて、このブログにある「SWEET SWEET SUITE 5th Movement」にも、コミック「湾岸ミッドナイト」内で登場する「『未来予想図』の歌をネタにした明言」を軸に、コメントを綴りました。
【流行ってた頃よくラジオでかかっててさ、甘ったるい歌詞はいーのか悪いのかわかんねーけど でもそのタイトルはさ いいなと思ってたのよ 未来予想図だっけ?つまり未来図ってことだろ 
自分達の未来の形 こうありたいとかそうでいたいとか そーゆうの想い描くわけだろ けっこう違うと思うのよ、そーゆー先への明確なイメージがあるのとないのとじゃ
こうなるであろうと仮説を立てて結果失敗するのと、取りあえずやってみて失敗したのは全然ちがう
わかろうとする努力もせず、取りあえずやる。それはトライ&エラーじゃない、ただの無駄だ
未来図が描けない者ほど無駄が続く。そして、無駄ほど人の気持ちを削ぐものはない】
という台詞が登場するのです。
あることを成し遂げようとするときに、「こうでありたい」と信じて行動するほうが、そうでないときよりも達成する確率が高くなるといわれる人間の心理―夢に向かうベクトルの気持ち―ていうのかな、そういう気持ちって本当に大事ですよね。編集者への転職を実現したさやか、ガウディに憧れ建築家を目指す慶太、どちらもそう。現実にはなかなかこうはいかないかもしれないけれど、この二人に関してはあまり現実離れを感じなかったんですよね、不思議と。それだけリアルな設定だったからではないでしょうか。

②登場人物の設定とその想いが描く、大切なものへの「愛」、そして「アイシテル」のメッセージ
パンフレットにも記されている主人公2人の印象を見ていてまず思ったのが、さやかの「無理に気取って飾らない」、「誰にでも正直でまっすぐ」なところ(それは、演じる松下奈緒さん自身の魅力でもあるかもしれない、という見方もできます)、慶太の「夢を追い求め、好きなことだからこそ一生懸命やる」という(それは演じる竹財さんとも共通しているらしい)「良さ」にとてもシンパシーを感じることです。それは、前述した吉田美和さんの印象とそっくりそのままのようで、そういう観点からも「未来予想図」の世界、「アイシテル」を見事に描ききっているなぁと思います。
また、恋愛している人と人との「愛」だけでなく、花火職人・井上拓己家の「愛」、そして、「こんなお母さんが私のお母さんならよかったのに!」とめちゃくちゃ思ったさやかの母・陽子、そして妹・あすかの「愛」といった【家族愛】も描かれる「アイシテル」も心にグッと来ますね。この作品では、さやかが泣くシーンが非常に多く出てくるのですが、病気で倒れた陽子がさやかに「あるモノ」を送ります。それを受け取ったシーンが一番ジーンと来ますね。
【仕事面での愛】も印象的です。主人公2人が実現していく夢とともに、それを愛していこうとする姿勢も好感が持てますね。「自分の目指す仕事に就けた、さぁ、そこから先は?」というもっと先のことを考える―それが仕事への愛。編集者になって、自分の企画を持ち込んで取材して記事にするさやか、ガウディに憧れてスペインでの活躍がカタチになっていく慶太、花火という取り扱いの難しいものに真摯に取り組む井上、石に向き合う中島。小料理屋の陽子が作る料理・・・みんなおんなじ。
それはモノ造りの人だからという特別な見方ではなく、仕事を一生懸命がんばることは「仕事を愛すること」なんだなぁ・・・と。

また、「愛してる」を伝えるということは、本当に色々なカタチがあって、伝える手段にも色々あって、それがすれ違ったり触れ合ったり―色々してて、その中で、本当に「あなたとだから」という人に出会えて、予想図と現実化を繰り返していく、紡いでいく―そういう生き方が出来れば、一番最高だよナって思うんです。
この映画を観て、「未来を見つめる」というコト、夢を追い続ける尊さ、「『アイシテル』を伝える」コトの難しさとひそやかさと優しさ、そして心が温かくなる心地よさを感じてほしいなぁと心から思います。
ストーリーそのものは決して奥深いごちゃごちゃしたものはありませんが、それだけスーっと入ってきて、いつまでも残る・・・。タイトルの「未来予想図」が今でも愛される名曲となっているように、後からこうやってコメントを綴っていると深みが増してくる、そんな作品です。

最後に、ドリカムのアレンジャー&Bassの中村正人さんのコメントを。

「明日の未来予想図でもいいですよね。今日はちょっと頑張って、明日はこうしたいとか。そういう未来予想図をひとつひとつ叶えていけば、必ずすごく素敵な毎日がやってくると思うんです」

包帯クラブ (監督:堤幸彦)

2007-09-17 23:20:34 | シネマレビュー
人生のキズをいやす「部活」がある。

「包帯一本巻いて世界が変わったら、めっけもんやん」

それが・・・「包帯クラブ」

【ストーリー】
舞台は、関東近県のたそがれた中都市。街の周辺の建物はあちこち錆び付いていて、なんとなく時代の流れを感じさせる街・・・。
主人公の「ワラ」こと騎馬笑美子は高校三年生。世間一般に較べて、裕福な家庭とは言えないけれど、前を向いて生きており、卒業後の進路は就職だった。でも世間は、あやまって切っただけの左手首のキズを「リスカ(リストカット=自傷行為の一つ)」と決め付けるなど、安易なイメージでしか自分を見てくれない。さらには、「大切なものを守ろうとして、懸命に戦っているつもりでいると、いつの間にか、大切なものが少しずつ失われていっている」という毎日に嫌気がさし、ある日、病院の屋上のフェンスを乗り越える。そのとき、点滴台を持った奇妙な関西訛を喋る不思議な少年・「ディノ」こと井出野辰耶に出会う。手首に傷を負ったワラの心を見抜いたディノは、ワラの手首から解け落ちた包帯を、「手当て、や」と言って屋上の錆びたフェンスに巻きつける―。「心から流れ出ている血」が止まったように、優しく包まれた感じを覚えたワラ。
翌日、親友「タンシオ」こと丹沢志緒美の失恋話を聞いて、ワラは心の傷を負ったという場所に包帯を巻いてみた。「すっごくいい!」と喜ぶタンシオ。彼女はメル友の浪人生「ギモ」こと柳元紳一に包帯の効果を伝えたところ、彼はこの行為に関心を持ち、ホームページを立ち上げ、包帯クラブが発足した。
包帯クラブの流れはこうだ。
①傷ついた出来事をHPに投稿してもらう
②傷ついた人の傷ついた場所に包帯を巻きに行く。包帯代は部員のカンパでまかなう。活動範囲は市内限定とする。
③手当てした風景をデジタルカメラで撮影する。
④投稿者のメールアドレスに画像を送る。報酬はもらわない。許可が下りればクラブのHP内にアップロードも可。
クラブに集まってくるさまざまな切ない願い…包帯を手に街へと飛びだしていくディノたち。また、とあることがきっかけで、ワラの友人「リスキ」こと芦沢律希が加わることになる。

しかし、他人のキズを癒していくうちに、メンバーたち自身の心の傷・未だに癒えない傷が明らかになっていく。それに次第に向き合い始めていくワラたち…。そして、なんとなく疎遠になっていた「テンポ」こと本橋阿花里も誘うワラとタンシオだったが、優等生のテンポは冷たく、その誘いを断ってしまう。同じ頃、包帯クラブのサイトには、クラブ活動を「偽善だ」とする書き込みが増え、警察に包帯が撤去され、包帯クラブのサイトが一時閉鎖されるという危機が訪れる。

包帯クラブはどうなってしまうのか・・・?彼らの行為は自己満足でしかなかったのか・・・?
そしてメンバーの「心の中にある傷」とは、それぞれ、何なのか?

【詳細情報】
監督:堤幸彦
脚本:森下佳子
音楽:ハンバート ハンバート
主題歌 : 高橋瞳「強くなれ」
配給:東映
原作:天童荒太『包帯クラブ』

【キャスト】
井出野辰耶(ディノ):柳楽優弥
騎馬笑美子(ワラ):石原さとみ
柳元紳一(ギモ):田中圭
丹沢志緒美(タンシオ):貫地谷しほり
本橋阿花里(テンポ):関めぐみ
芦沢律希(リスキ):佐藤千亜妃
テンポの母:風吹ジュン
ワラのバイト先のおばさん:岡本麗
ワラの母:原田美枝子

【コメント・感想】
包帯、と聴いて思い出すのは、怪我したときの幼い頃。傷絆創膏程度で済むような小さな傷でも、はがれやすいところだったり、うすっぺらい絆創膏では痛みが治まらなかったりして、そのときに、包丁で手を切った母が巻いていた包帯の方がいいといって「巻いて」とせがんでいた自分です。包帯は呼んで字のごとく「包む帯」。あの包まれるような心地よさは、ケガのことなどしばし忘れてしまう温かさがある、ような気がします。

ディノの発案である「傷ついた場所に包帯を巻く」という行為は、上記の幼い頃の思い出や、私自身の心の傷の数・大きさもあってか、観ていると不思議と癒されました。
ワラの一人称の台詞が時々現れますが、『自分が生きるために他人から大事なものを奪ってしまう』という矛盾、『奪い合えば喧嘩になる、分け合えば丸く収まるけれど充実感も半分で結局足りない』といった戸惑い・・・『譲ってばかりだと自分がつらい・・・』。いろいろ考えている彼らがあみ出した、「戦わずに自分を守る方法」・・・それが包帯。傷の痛みの本質はもちろん当人にしかわからない、だから彼らはその傷に「触れずに手当てする」ことを包帯を巻くという行為というカタチで選んだ・・・。そういう視点が素朴で、温かくて・・・。決してスタイリッシュではないけれど、「気持ちいい」と思います。
そして、胸を打つ台詞の数々!ディノの「他人の気持ちを理解するための想い」は本当に台詞を何度でも聴き返したくなるくらいに心に響きます。それを演じる柳楽優弥さんは、今までの作品とは打って変わった「ある意味『壊れた』キャラ」を見事に表現しきっています。表情の豊かさ、人の心を真剣に読みとろうとする瞳、そして男の私がうらやましいくらいの声質など。いい役者さんだと想います。

また、この作品に登場するインターネット、パソコン、携帯電話といったさまざまなモノは、一昔前にはなかったものです。包帯クラブの活動も、現実に行われている行為ではあるけれどやり取りはネット。技術やモノの考え方がめまぐるしく変わり、便利さとともに溢れるたくさんの不安、人の心の本当の繋がりが難しいこの時代に流されている若者の姿を垣間見て、虚しさとある種の希望を感じた瞬間もありました。

演出面について少し触れると、思わず笑ってしまう場面とすごく涙する場面との波の大きさの差がとってもあって、それが、あちこちで涙を誘い、クライマックスまで泣き声が止まらない同席者の方もいらっしゃいました。それくらい起伏が激しく、それが観る人をひきつけます。
撮影の多くが群馬県高崎市で行われたそうですが、町並みの風景がとても作風にあっていて、いい場所を選んだな、と感心しました。
「ハンバート ハンバート」の曲・歌は、私は初めて聴きました。映画内容やストーリーにマッチしていると思いますし、途中でプツリと途切れるところもあって、確かに効果的に使用されていますが、ちょっとしつこさを感じる場面もありました。また同じく音楽のコトになりますが、高橋瞳さんの「強くなれ」はストレートな歌詞のいい歌です。それだけにエンディングロールの映像がミスマッチに見えるのが残念・・・。

全ての人にもあった10代の頃を思って、そして、今を生きる自分の心に、そして地球上に生きる全ての人間を思って観て欲しい感動作品です。

この映画を観て、「彼らが巻いてくれる包帯の」、白さと柔らかさに、心を癒されてみてください。
あなたがクラブに加わったら、どこに包帯を巻きますか―?


【追伸・小ネタ】
エンディングテーマが流れ出したからといって劇場内から出てはいけませんよ。最後まで見てください。明るくなるまでそのままそのまま!
「おぉっ」と驚くハズですよ。


(映画チラシ・オフィシャルサイトより一部引用アリ)

蝿の王『原題:Lord of the Flies』 (監督:ハリー・フック)

2007-09-14 19:06:59 | シネマレビュー
【ストーリー】
1954年に出版された、ウィリアム・ゴールディングの小説の映画化。題名の「蝿の王」とは、悪魔「ベルゼブブ」のこと。

アメリカ陸軍幼年学校の生徒を乗せた飛行機が事故で墜落。無人島にたどり着いた24人の少年たちは、自分たちだけで生活をはじめる。
始めは順調だと思われていた自炊の生活だったが、やがて救助を待つリーダーのラルフを中心とした一派と、自然に同化しながら狩猟に駆り立てられていくジャックらの一派に分かれ、対立していく…。
少年達に待つものは?彼らの運命は?

【コメント・感想】
この映画は、大学の講義の中の「法哲学」という授業で観ました。
やはり「もし、法律がなかったら、人間はどうなってしまうのだろう?」というのがテーマでしたが、あらためて観た中で私は色々なことを考えました。

その前に、この映画(作品)は、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』を基に作られている作品だそうですが、それやロバート・バランタインの『珊瑚礁の島』など19世紀以前に流行した「孤島漂着もの」のパロディとなっており、これらの作品とは正反対の悲劇的な展開となっているのが特徴。
また、かの話題になった邦画「バトルロワイヤル」に似ているという人もいるようです。

規則が一体なんのためにあるのか、社会の変化は人間にどんな影響を及ぼすのかなどいろいろなテーマが語られます。
もし、法律がなかったら、この作品にあるように、仲間割れや未知の物に対する恐怖感、弱者への支配欲、優越感などが現れ、次第に仲間意識や共同意識というものが崩れていってしまうでしょう。
でも、昔―『槍持って踊っていた頃(笑)』は法律なんてなかったんですよね。せいぜい、水や食べ物の争い、そんなものだったんでしょう。
いかに、人間が時代とともに変わっていったか…法の歴史、法の意味を問うに当たって欠かすことの出来ない映画作品だと思います。

法律は英語で「law」ですが、法的権利は「right」です。正しさ、正義、公正ってなんだろう、ということを考えたときに、この映画を思い出します。ラルフやピギーが正しい、ということを言いたいのではないのですが、「みんなでこうしよう」としたことから逸脱するものたちへの憎悪感・嫌悪感というものに私は共感しました。
あと、この作品に登場するのが、大人ではなく、少年達、という点に着目すれば、あの対立の仕方は「容赦ないけど幼いもの」。じゃぁ、もし大人だったらどうなっちゃうんだろう・・・?
考えただけでゾっとします。

法律も人間の心も、時代とともに変わる。けれど、変わらないものもある・・・。
この作品のもうひとつのテーマであるところの「本能と理性」でしょう。
もちろん、本能の中にはこの作品のように恐ろしい部分もあるのでしょう。
けれど、相手を大切に想って行動すること、他人の手で人を殺さないこと…
理性でもって心をコントロールし、時代によって変わる正義はあるけれど、不変の正義を、人間生活の中で発揮していくこと。
それが一番大事なのではないかと考える映画でした。

「HERO」 (監督:鈴木雅之)

2007-09-02 16:54:06 | シネマレビュー
【背景】
「6年っていうと・・・子馬が引退して種馬になってますね。人間だって、変わるんじゃないかしら」(雨宮舞子のセリフ)

あいつが帰ってきた―

2001年にフジテレビ系列で放送された大ヒットドラマ「HERO」。
主人公の、「学歴は『中卒』・『スーツを着ない』型破りの検事」、久利生公平(くりゅうこうへい)が、事件の大小に関係になく、「真実」を追い求める姿を軸に、「法」をはじめとした仕来たりや、縦社会に生きる東京地検・城西支部の同僚検事らが、少しずつ彼に感化されていく、という軽やかでサスペンスと感動がいっぱいの物語です。
久利生役には木村拓哉さん、彼の担当事務官は松たかこさん、その他大勢の豪華キャストと、タイトル「HERO」=ヒーローの新しいスタイルは、当時の日本人の受けが大変良く、連続ドラマ本放送視聴率は常にといっていいほど、また5年ぶりのテレビドラマスペシャルでも30%オーバーという高視聴率を叩き出した、ある種の伝説を遺したテレビドラマ・・・
それが、満を持してスクリーンに登場デス!

今回の映画版は、今までの登場作品の集大成となっており、昨年夏のテレビスペシャルに登場した中井貴一さんの再登場など、シリーズを知るファンにはたまらない内容に加え、蒲生弁護士役には歌舞伎役者の代表格・松本幸四郎さんが、代議士・花岡連三郎には「タモリ」こと森田一義さんが、そして、カン・ミンウ検事にはなんと、あの「イ・ビョンホン」が演じ、日本映画初出演にして、日本トップのイケメン・キムタクとの初共演をするなど、話題がいっぱい!
あなたは、このビッグスケールの日本映画を、どう観ますか―


【ストーリー】
東京地検・城西支部に戻ってきた久利生公平は、同僚の芝山貢検事が起訴したある事件の裁判を任される。容疑者もすでに犯行を認めている簡単な事件だったが、初公判で一転、被告と弁護側が無罪を主張してきたのだ。久利生の前に立ちはだかったのは、刑事事件無罪獲得率日本一という、「元検事・現弁護士」の蒲生一臣。新聞には小さな記事でしか扱われなかった事件を、豪腕弁護士が担当しているということに戸惑う久利生に対し、蒲生は冷静かつさまざまな戦術で、今まで経験したことがない窮地に久利生を追い込んでいく。
一方、東京地検特捜部の黛(まゆずみ)検事が近づき、「この事件の判決が、大物代議士・『花岡連三郎』の贈収賄事件のカギを握っているのだ」という。騒然となる城西支部。久利生においても、花岡代議士とは過去に因縁のある相手であったのだが、あくまでも自分が担当する事件の真実を明らかにしようと、事務官雨宮と奔走する。城西支部の面々も徐々に捜査に協力していくようになり、ようやく得た情報をもとに、二人は、韓国・釜山(プサン)へ向かう。東京地検は、韓国のエリート(しかもイケメン→雨宮談)検事カン・ミンウに捜査協力を依頼する。
そして、花岡代議士の事件も徐々に解明されてゆき、黛検事の計らいで、ついに、花岡連三郎が「小さな事件」の法廷に・・・そしてその間、城西支部の面々は、「何百人もの人々が『当たり前のように持っているモノの中にある』、たった一つの小さな小さな最有力証拠」を探すべく奔走していた・・・
事件の行方は?真実は暴かれるのか?!


【詳細情報】
―キャスト―
久利生公平:木村拓哉
雨宮舞子:松たかこ
中村美鈴:大塚寧々
芝山貢:阿部寛
遠藤賢司:八嶋智人
江上達夫:勝村正信
末次隆之:小日向文世
牛丸豊:角野卓造
鍋島利光:児玉清

蒲生一臣弁護士:松本幸四郎
黛検事:香川照之
花岡連三郎代議士:森田一義
鴨井産業元専務(現在医療刑務所にて服役中):中井貴一
久利生の元同僚検事:綾瀬はるか
傷害致死事件の被害者の婚約者:国仲涼子
裁判長:岸部一徳

カン・ミンウ検事:イ・ビョンホン

製作:亀山千広
脚本:福田靖
音楽:服部隆之
監督:鈴木雅之

【コメント・感想】
実は、私はドラマはほとんど見ません。もちろん、この「HERO」も、映画化のニュースが流れるまで作品の概要を知りませんでした。ですが、大学で法律学科を卒業した私とって、「司法」「裁判」というモノは切っても切れない関係にありますし、ニュースにも裁判のことはたびたび取り上げられます。また、事件を解決する・真犯人を探し当てるいう、刑事モノをはじめ、テレビのサスペンスドラマも、たまに見ると面白かったり。
でも・・・「犯人を捕まえるコト」は言ってしまえば警察の仕事。サスペンスドラマでも、検察側の一方的な証言に対し、弁護側が証言を覆す事件の大事なキーを捜して、ヒーロー・ヒロインになるというスタイルも典型的なパターンですし、「逆転裁判」というゲームも密かな人気を誇っています。
しかし、このドラマの主人公は「検事」です。今までに私がふれたことのないパターンの裁判展開という斬新な切り口、主人公・久利生の、「事件の真実を追い求める姿勢」「どうしてこうなったのか、という『原因の解体』」という姿と、面白おかしくルーズなところと、キメるときはキメるというスタイルは、とても見ていてシンパシーというか、共感というか、響くものがありました。
児玉清さん演じる鍋島次席検事はラストシーンに、雨宮と言い合いをしながら裁判所を出る久利生の背中を見て蒲生弁護士にこう言います。
「・・・あれが、久利生公平だ」と・・・。

この映画を観ただけで、いっぺんに「この世界」のファンになりましたね。
また、他のキャラクターもいいです。城西支部の面々は「検事」という職業スタイルにしては個性が強すぎるという見方も出来ますが、それぞれが絶妙のバランスを保っていますし、それが良さとなって出ています。また、検事たちの行きつけらしい飲み屋さんがありますが、そこの寡黙なマスターと、そこで繰り広げられるやり取りも「いい味を出して」います。

今回は、先述の通り、「シリーズの集大成的位置づけ」となっており、「完全オリジナルストーリー」とは言えないので、ファンの方々・テレビシリーズを知っている方は、見て絶対に損はない作品に仕上がっていますが、ある程度背景を知らないとわからない部分に目をつぶるなら、初めてご覧になる方も感動いっぱいの作品になっています。
完成度は滅茶苦茶高いです。

演出面について少し触れると、「踊る大捜査線」のようなスリリングでスマートな展開の面白さに加え、絶妙なカメラアングル、独特かつ絶妙な間(ま)など、見ていて飽きさせないモノがたくさんあります。
音楽もいいですね。作曲はかの「服部隆之」さん。同じフジ系の「王様のレストラン」などでも知られる大コンポーザーの曲たちが、ストーリーに華を添えてくれます。メインテーマを含む曲の楽譜が存在するのなら、吹奏楽版にアレンジをお願いしてでも演奏したくなります。文句なしにかっこいいですね。


久利生は、「最大の危機」から、どうやって脱け出すのか・・・そして、気になる雨宮との関係がどうなるかにも要注目!
そして・・・
「『ひとつの事件』や『裁判』というモノがいかに大切なのかを、この映画を観てもう一度考えてみてください」―とメッセージを添えてこのレビュー記事を終えたいと思います。


追伸①:「イ・ビョンホン」が登場する場面は少ないです。韓流スターファンの方、あまり期待はしないほうがイイですよ。

追伸②:記事の投稿時間に注目!わたしは、ここ数年石川県を出ていません。だから、8月の完成試写会イベント等には行っていませんし、石川県内における試写会は、9月6日のワーナーマイカルシネマズ金沢でしかありません。それなのにどうして観ることが出来て、かつ映画館のデモ映像では流れない部分を含めたレビューを書くことが出来たのか―
それは・・・ないしょ。
間違っても盗撮ではありませんし、ハッキングをしかけたのでもありませんヨ。

クール・ランニング 『原題:COOL RUNNINGS』

2007-08-20 21:52:20 | シネマレビュー
【ストーリー】
常夏の地・ジャマイカから無謀にもボブスレーチームを組んで、1988年カルガリー冬季オリンピックに参戦した男達の実話を描いたスポーツ・コメディ。
舞台は1988年のジャマイカ。幼い頃から100m走でオリンピックを目指していた主人公デリーズは、最初で最後のオリンピック選考会で、隣のコースの選手の転倒の巻き添えを食い、出場不可能になってしまう。
それでもオリンピック出場の夢を見る彼は、とんでもないことを考え付く。
それはジャマイカ初の冬季オリンピックの出場。
とあるきっかけからボブスレー競技のことを知った彼は、幼なじみのお調子者や転倒事故で同じく夢破れた2人を巻き込んで、過去に2度金メダルを取ったアメリカ人選手をコーチに招いて猛練習を開始するのだったが…。


[作品・DVDデータ]
公開:1993年
監督: ジョン・タートルトーブ
製作: ドーン・スティール
音楽:ハンス・ジマー
製作総指揮: クリストファー・メレダンドリ、スーザン・B・ランドー
出演: レオン、ダグ・E・ダグ、マリク・ヨバ、ジョン・キャンディ
商品番号: VWDS-3622
時間: 98分
販売元:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント


【コメント・感想】
ボブスレー競技の最終日・・・
「リズムを感じるんだ!1、2、3・・・・クールランニング!!」
タイトルのクール・ランニングという言葉は、旅に無事あれという意味です。

とあるテレビの洋画劇場で見たのですが、明るさとユーモアと希望に満ちた、スポーツ映画で、安心して楽しめ、感動しました。大好きです。
話としては極めて単純かつオーソドックスで、普通では考えられないようなハンデを背負いながら、個性豊かなキャラクターが、アタフタしながらも友情を深めてチームとなり、各自の問題をクリアしつつ夢のような目標に突き進み実現するというストーリーです。
重苦しさを感じず、話の展開のテンポもよく、キャラクターやそれ以外のジャマイカの人たちも表情豊かで、好きです。
この作品の凄みは、エッと思うようなストーリーが実は実話に基づいている、ということで、その事実が映画に重みを増しています。
そういう事実がなかったとしても個々のキャラクターはよく描かれていますし、エピソードも楽しいものばかりです。特に面白かったのは、アイスクリーム販売車で寒さに耐えたり、タイヤ付きソリで土手を滑り落ちたり、バスタブに4人で入ってカーブを曲がるイメージトレーニングをしたりするところですね。
南国特有の明るさで乗り切っていくシーンは見てて胸が熱くなります。
シンプルなコメディタッチながら、とても大事なことを教えてくれる、爽やかな映画です。
尚、彼等の行動を疲れた表情で見守るコーチ役を好演し、「ホーム・アローン」などでも有名な俳優ジョン・キャンディは本作公開直後に惜しくも亡くなっています。

あなたになら言える秘密のこと 原題『The Secret Life of Words』

2007-08-10 21:26:53 | シネマレビュー
【ストーリー】
心に受けた深い傷を『秘密』として封印している女性、ハンナは、友達も作らず一人ぼっちで生きてきた。単純作業を繰り返すだけの職場と、若い女性の一人暮らしとは思えない簡素なアパートとの往復を繰り返す毎日―時折、カウンセラーのインゲに電話をかけるものの、無言で電話を切ってしまうという状態。
ある日、「働きすぎだ」という理由から、職場の上司(工場長)から無理矢理一ヶ月の休暇を取らされてしまったハンナは、バスに乗って見知らぬ街へ向かう…その先で看護師を探しているというとある男の会話を耳に挟み、油田掘削所の事故で重傷を負った男の看護をすることになる。
男の名はジョゼフ。数箇所に大きな火傷を負い、一時的に視力も失っている。そんなジョゼフは、会話だけからハンナのことを知ろうとするが、ハンナは自分の過去を何一つ語ろうとしない。しかし、それでもジョーク交じりに彼女と会話を交わすジョゼフに引き込まれていくハンナ。やがて、事故の原因でもあるジョゼフの辛い過去を知る事になるハンナは…。

【主演・作品情報】
サラ・ポーリー(ハンナ役)/ティム・ロビンス(ジョゼフ役)/ハビエル・カマラ(サイモン役)
脚本・監督:イサベル・コイシェ

【コメント・感想】
公開最終日、「ただ、君を愛してる」を観せてくれた先輩に、たまさか完全Offの日に誘われて見に行った映画です。
当然ながら、タイトルも劇場に行って初めて触れましたし、どんな映画かすら知らないまま席に座る事になったのですが、ただラッキーな事に、この映画は「『死ぬまでにしたい10のこと』のスタッフがサラ・ポーリーの主演で作った」映画だったのです。実は私は数週間前、「死ぬまでに…」をレンタルビデオで借りてみていたのです。
これは、運命的な出会いだったのです。
本当に衝撃的な、「サラ・ポーリーとの再会」でした。

テーマ、キーワードは「孤独」と「秘密」。
とにかく静か。そして悲しいお話です。でも、そこかしこに「熱いもの」「人間の強い想い」を感じる作品です。
「秘密=Secret」という言葉にやはりとても惹かれるのですが、「秘密」というコトバが出てくる映画は、これが初めてではないハズです。しかしながら、この「秘密」はとてつもなく重い過去だったのでした…!
はっきり言いましょう、「死ぬまでにしたい10のこと」よりも数倍パワーアップしています!!とんでもないコトになってますヨ、この映画は―!

物語の前半は、ハンナの寂しい日常が描かれます。
そして、ジョゼフに会うハンナ。お互いの傷の痛みを感じながら心を開いていく姿は、痛々しい場面もありますが、あたたかいモノも感じました。
この映画は「語りと表情」で訴えてくるような作風になっているので、一人称で語る朗読モノとは違う感情の出し方が見事!寝たままの出演が多く、しかも目が見えないというジョゼフを演じるティム・ロビンスはすごいです。そしてハンナを演じるサラ・ポーリーも。圧巻はやはりラストシーンです。

演出について触れると、まず音楽がいろいろ流れていて、一見寂しい映画の中でアクセントを与えてくれる要素の一つになっています。その音楽といえば、調理師のサイモンは、色々な国の料理を、その国の音楽をかけて作るという流儀を持っています。そのサイモンも「いい味を」出している人物の一人です。あと、海洋学者のマーティン、アヒルのリサも。最初はアフラックのアヒルに見えて、けなげでかわいいって(笑)思っていましたが、動物だからこそ惹かれるんです。「こんな(油田掘削所という)ところにこんな生き物が・・・」と。
また、物語のところどころに、謎めいた少女の語りが現れます。それが何を意味するのか、あれは誰の声なのか、誰の気持ちなのか、それは何度か観て改めて考えたいと思いますが、不思議な魅力があります。


「孤独」というコトバにあなたは何を思うでしょうか。
「一人でいる」というのだけが何も孤独というだけではありません。大勢の中にいても孤独を感じるときもあるでしょう。
小さな誇り、引けないプライド、それは誰にでもあるでしょう、でも単に「プライドが高い」っていうのと「一人が好き」「孤独に生きている」っていうのとは違います。
孤独に生きているヒトは、単に一人でいるだけのヒトもいるかもしれないけれど、大事にしているもの、心にしまってあるもの、温めているものが、たまたま受け入れられなくて、仕方がなくそうしているヒトもいるでしょう。
「孤独なヒト」「心に傷を抱えたヒト」は単純にそんな風に生きているわけじゃあないのです。
「『孤高』=周囲から一人かけ離れて高尚な理想を持つ事」ってゆーコトバがあるように、流儀とかそういったものが俗っぽくなくて、それを理想として、大切にして生きているヒトって世の中にいっぱいいると思います。それは誰にも負けない熱いものだったり、反対にすごく辛いものだったりするわけで。そういうヒトが、この映画の舞台である油田掘削所には多く登場するのです。

明るめの映画が好きな方には向かないかもしれませんが、必見の価値は大アリ!です。心の片隅にいつまでも残る良い作品だと思います。好きか嫌いかはまた別の問題として、「秘密」が何なのかを知ってしまい、エンディングを迎えたときは、涙を通り越してしまいます。
「過去は消えない―」とよく言います。時間しか解決してくれないものもあるかもしれないけれども、ハンナの過去はあまりにも重すぎて、真の意味での解決はできないと思うし、カウンセリングを受けたところで一瞬の安らぎしか得られないかもしれないでしょう。
けれど、たった一人でも心の底から信頼できるヒトがいたならば、多少の持続の安堵感が彼女に与えられたかもしれません。
つまり、「誰かと共有すること」の大切さです。
それは、誰も…カウンセラーのインゲ(この人は唯一実在する人物です!)すらも開けられなかったハンナの心のカギを開かせる作用がある、そんな感じでしょうか。

ただ、映画を観た後、改めて邦題を見てみると、ちょっとギャップがあるようで、軽くなってしまうような感じもします。あと、映画という時間枠で、あの気持ちの通じ方は難しいと思います。でも、それがこの映画の魅力となっているのでしょう。場面に出てこないところで、いろいろな通じ合うモノがあったのでしょう。
そんな思いを馳せる事もできる映画作品です。


あなたは…秘密を心に抱えていますか?
ヒトにはいえない秘密はあれど、ちゃんと面と向かって話せるヒトがいますか?
もし、重大な秘密を知ってしまったら、伝えられたら、その時、どう動きますか?

そして…
あなたは、泳げますか?―もし、その答えがイエスなら、人間がもし、涙で部屋を溢れさせるくらいに泣いてしまったら、その中を、泳ぎきれる術・自信はありますか?

死ぬまでにしたい10のこと(脚本・監督:イサベル・コイシェ)

2007-08-10 21:20:48 | シネマレビュー
【ストーリー】
23歳のアンは、失業中の夫・ドンと、2人の娘・ペニー、パッツィーとトレーラー暮らし。彼女の毎日は、大学の清掃の仕事と娘たちの世話で過ぎていく。ある日、ドンが娘たちを学校へ送っていった後、アンは突然の腹痛で倒れてしまう。
病院に運ばれ、検査を受けたアンは、医師から卵巣から始まったガンを宣告され、余命2、3ヶ月だと告げられた。アンは細胞が若すぎたため、転移も早かったというのだ。
トレーラーに戻ると、1年がかりの工事の仕事が決まったドンが喜んでいる。アンは、病気のことを内緒にしたまま、夜更けのカフェで「死ぬまでにしたい10のこと」をノートに書き始めた…。
その「秘密のリスト」は少しずつ実行されていくのだが―。

【主演・詳細情報】
サラ・ポーリー(アン役)/マーク・ラファロ(リー役)/スコット・スピードマン(ドン役)
製作年:2002年
製作国:カナダ スペイン
時間 :106分
原作 :イサベル・コイシェ「あなたにいえなかったこと」

【コメント・感想】
和訳のタイトルを見た瞬間、見たい!と思った映画でした。個人的には原題そのままでもいいカナとも思いましたが―

大学時代、いじめ自殺、生と死の問題について文献を読み、卒業論文を書いた自分、そして、自分ではない他の人の命を直接的に預かる福祉の世界で働く自分にとって、そして、何よりもみんな持っている「命」というものについて、本当に向き合わせてくれる映画です。
やはり、【自分に人生の終わりがわかったら、人はそれまで何をする?】【しかも、それが2ヶ月後だとしたら…?】というテーマを中心に、アンの一人称の語りで物語は進んでいきます。
ですが、死を2、3ヶ月前に控えた人間が、あそこまで孤独と切なさに向かい合い10の事柄を書き綴り、実行していけるかどうか、というのは賛否両論あります。
私は体験・家族等がそうなった経験もないので何ともいえませんが、私だったら、実行したくても心の強さがまだまだ無いので、(これを書いている28歳の今でも)恐怖と生きる喜びと両方を感じながら、少しずつは死に向かって進んでいくでしょう。23歳のアンは、設定上ではありますが、とても芯の強い女性なのではないかと思います。私にはここまではできません。
そして、不倫という、いわば「世間様は『わろし』と取る」行動も、余命いくばくも無いのならば許せるのか―そんな風に思うこともありましたが、人を愛することに善悪なんてホントはないんじゃないかと思います。この場合は「アンが生きていることの実感」の一つのカタチだったのですから―
アンが自分を形に残していくメッセージのカセットテープも印象深いシーンですね。
ハッピーエンドでもなく、壮絶なエンディングでもなく、静かに終わるのもこの映画のしゃれたセンスではないかと思います。
ただ、アンの行動の真逆を、家族、(将来の)妻や愛人にされたら、自分は大泣きして取り乱してしまうでしょうね。きっと。

まずは何をおいても、「死を前向きに受け止めるコト」、「明日、今すぐ死んでもいいように『今を生きる』『死ぬ準備をする』というコト」―
これを学ばせてくれる映画作品です。
見終わったあと、ふと、浜崎あゆみさんの「Hana」という歌の歌詞の一部分が頭をよぎりました。

【例えば今 急にここから姿を消したら
一人くらい探そうとしてくれたりしますか
見つかるまで 人は優しいものと
信じながら待ってていいのですか】

あなたは、余命2ヶ月と告げられたら、何をしますか―?
それを人に告げますか―?
いきいきと生きるために、どうしますか―?

ピアノの森(監督:小島正幸)

2007-08-09 22:40:54 | シネマレビュー
【ストーリー】
深い森の中にある、一台のグランドピアノ―
それはかつて天才と謳われた持ち主が手放し、森の奥へと捨てられたピアノだった。
主人公の小学校五年生の少年・一ノ瀬海(いちのせ かい)は、幼い頃にその「森のピアノ」と出会い、音を紡ぐということを覚え、そのピアノに育てられ、愛されていた。
季節は夏のはじめ。海は、ピアニスト志望の転校生の少年・雨宮修平(あまみや しゅうへい)と出会う。修平の奏でる音は、全く隙がなく、彼は、ただひたすらに「完璧な音」を求め続けていた。
しかし、一方で、彼は「ピアノを愛することを忘れてしまった少年」でもあった。
そして、森のピアノの持ち主であった、天才ピアニストという過去を持つ男・阿宇野壮介(あじの そうすけ)。

「森のピアノ」に魅せられた3人の人物の出会いと、多くの人物の重なり合いが織り成す、ピアノという楽器を舞台にした、せつなさと純粋さがいっぱいの、友情の物語―

【主演および詳細情報】
上戸彩(一ノ瀬海役)/神木隆之介(雨宮修平役)/池脇千鶴(一ノ瀬怜子役)/宮迫博之(阿宇野壮介役)
製作年度:2007年
製作国:日本
上映時間:101分
原作:一色まこと『ピアノの森』
主題歌:松下奈緒『Moonshine~月あかり~』
ピアノ監修:ウラディーミル・アシュケナージ

【コメント・感想】
トロンボーンという楽器の「演奏家の端くれの端くれ」である私は、予告編の映像を見て、ずっと観たいと思っていた映画でした。原作が漫画ということですが、それを知らなくても楽しめる内容に仕上がっています。
近年、「ポケットモンスター」やジブリ映画、外国産アニメーションの日本語吹き替えなどに有名俳優・タレントを起用しているのが正直「集客・注目度のため」という雰囲気がなんとなくしていていやだったのですが、キャスティングを見て、実際に見てみると、「さすが!」と言える演技をしているのが他の映画とは違うところ(脇役には超ベテラン声優さんも起用されています)。好きなキャラクターで感情移入できるのは、海くんと阿宇野です。
また、「『クラシック=敷居が高い・堅苦しい・権威主義的』というイメージ」は、さまざまな親しみやすいCDボックスや、漫画「のだめカンタービレ」の登場で少しずつ緩和されつつありますが、「のだめ」とは別の切り口をしている素敵な作品であり、それを原作のコミックから真っ先に「アニメーション映画」に仕上げたというのが興味深いところ。まして、今回は誰もが知っている楽器であり、幼い子供たちが習うことが多いであろう、ピアノが主軸なのです。

「ピアノフォルテ」・・・ピアノは曲そのものも奏でることが出来るし、伴奏楽器として弾きながら歌うことも出来ます。あの高音部の切なさ、中音部の心地よさ、低音部の力強さは、弾けない自分にとって大きな魅力を感じます。弾けるヒトがとてもうらやましいです。劇中に流れるピアノのシーンはどれも印象的で、観ている者の心をつかんで離しません。
最後に主題歌「Moonshine~月あかり~」が流れてくるのですが、それを耳にする前から私はもう涙・涙で、スクリーンをマトモに見ることが出来ませんでした。

主軸となる登場人物の心に秘められているモノ、そこから沸き起こる感情に、少しずつ共感できるので、私はとても親近感をおぼえる映画作品でした。

吹奏楽にもコンクールをはじめ「コンペティション」なるモノはありますが、音楽(というよりも演奏)には上手下手もありますし、表現の解釈によっても受け取られ方ははさまざまです。でもそこで優劣をつけられてしまう寂しい、悲しい側面も持ち合わせています。それを再び垣間見てしまうことにもなってしまいます。
しかし、一貫して流れているのが、「音楽は理論だけでもない・かといって天才が生み出す何かオーラのようなものだけでもない」ということ、そして、監督の小島正幸氏がパンフレットのインタビューで語っているように「音楽はもっと自由であっていいのだ」というテーマです。

アニメーション映画とはいえ、とてもドラマティックな展開を見せており、子供からお年寄りまで感情移入しやすく、芯がしっかりとしたストーリーを持った、完成度の高い映画です。
この映画を観て、過去に音楽をしていた方、例えば学校の吹奏楽部で楽器をやっていた、とかいうヒトは、もう一度、ピアノの蓋を、楽器ケースを、開けてみる一つのきっかけになればいいと思います。
また、現在音楽をやっているヒトは、作曲者に失礼のないように、「楽譜を返せ!」って言われないように(少しネタバレ)、曲に真摯に、真っ直ぐに向き合って演奏するというコトを心にとどめておいて欲しいなと思います。


あなたは、音楽で心が震えた瞬間、魅せられた時・演奏がありますか―?
もし、あの映画の世界に居たとしたら、「森のピアノ」と「海クン」に、私と一緒に会いにいきたいと思いませんか―?

ただ、君を愛してる 〔HEAVENLY FOREST〕(監督:新城毅彦)

2007-08-02 20:29:16 | シネマレビュー
【ストーリー】
物語は、クリスマスで賑わうニューヨークに、一通の手紙を手に主人公・誠人がやってきたところから始まる。
その6年前―。とあるコンプレックスを持っているがために大学の入学式に欠席した誠人は、交通量の多い横断歩道を渡ろうと手を上げている、幼い容姿の個性的な同級生の女の子・静流と出会う。写真が趣味の誠人は、不思議な行動をとっていた静流に、思わずシャッターを切った。
この瞬間、静流は、誠人に恋をしてしまったのだった。
大学生活に馴染めず、カメラを手にキャンパス裏の森に一人で写真を撮りに行く誠人。それについていく静流は、誠人と一緒に居たいがために自分もカメラを手にするようになり、2人で写真撮影に行く日々を重ねていく。
しかし、誠人はクラスの人気者・みゆきに片思いをしていた。いつも一緒に居るけれど静流のことは「女の子」としては見ていない誠人。誠人のために静流は「大人の女性」になろうと心に決める。
そんなある日、静流は写真コンクールの応募用に、森の中で誠人と2人でのキスの写真が撮りたい、という。2人にとって初めてのキス―静流にとっては最高の幸せの瞬間。そして誠人の心にもある変化が訪れるのだった。
だが、その日を境に静流は―。

【主演および詳細情報】
玉木宏(瀬川誠人役)/宮崎あおい(里中静流役)/黒木メイサ(富山みゆき役)
製作年度:2006年
製作国:日本
上映時間:116分
原作:市川拓司『恋愛寫眞 もうひとつの物語』
主題歌:大塚 愛「恋愛写真」

【コメント・感想】
とにかく、今まで触れてきた恋愛物語の中で、一番心に響いた!というのが第一印象です。原作もストーリーも何も知らないまま観に行って、ここまで泣けた作品ははっきり言ってありません。
主人公の誠人は「自意識過剰になってしまうがゆえに人と距離を置いてしまうところ」「内気なマイナス志向の強いところ」「ヘタレなところ」、静流は「子供っぽい言動をとってばかり(かと思ったら、ある一瞬で年齢に似合わない、大人びた言動をする)こと」」「『死ぬ気で』人を好きになるところ」がそれぞれ自分と似ている、というか通じるものがあって、どんどん映画の世界の中に入り込んでいきました。
キャストの皆さんの演技もさることながら、それだけ上手に作られていたのだということが言えるのかもしれません。エッと驚くような展開、フィナーレにまで何も違和感を感じなかったのは、「ピュア」で、「リアル」な物語だったからでしょう。

自分も大学時代を経験しているので懐かしくもあり、撮影場所も美しい場所が多く、実際に行って見たくもあり、心に響く名台詞も多く、宝物にしたくなるような映画作品です。


覚えていますか―?
恋をした瞬間の胸の高鳴りを

思ったことがありますか―?
「自分という人間に生まれてきてよかった」というコトを

そして、経験したことがありますか―?
失って初めて気づく大切な人の存在を
そして今目の前に居る、自分が大好きな人の存在を大切にしたくなるという想いを…

天国は待ってくれる 英題『heaven can wait. maybe...』(監督:土岐善將)

2007-08-02 13:21:23 | シネマレビュー
【ストーリー】
舞台は東京・築地。子供の頃からずっと一緒だった、宏樹、薫、武志の3人(うち、宏樹は小学校五年生の時に転校してきた)は、かけがえのない大切な仲間だった。
広場で作った、“聖なる三角形”、それは“永遠の三角形”―。3人の友情は、ずっと続くと思っていた。
時は流れ、3人は東京を離れることなく、宏樹は朝日新聞社に、武志は家を継ぐ形で築地の魚市場に、薫は銀座の文具店に就職し、社会人としての日々を過ごしていた。
そんなある日、武志は、宏樹の目の前で、薫に突然プロポーズをする。武志の突然の告白に、顔をまともに見ることができない宏樹。とまどいを見せながらもそのプロポーズを受け入れる薫。
しかし、その数日後、薫の実家である喫茶店で行われるはずだった結婚式を控え、「どうしても行かなければならないところがある」と出かけた武志は・・・!
そして、「ずっと一緒にいたい」と願い続けた3人の行く先にあるものは―。

【出演】
井ノ原快彦(宏樹役)/岡本綾(薫役)/清木場俊介(武志役)

【コメント・感想】
原作本を本屋さんで紹介されたとき、タイトルと「3(人)」という数字を目にした瞬間、「これは原作を読むよりも先に映画をチェックしよう!」そう思い、観に行った映画です。「天国」というコトバから、誰かの死を連想したのですが、「待ってくれる」とはどういうことだろう…?それがずっと気になっていたのです。

まず、ストーリーは、『今、会いにゆきます』で有名な脚本家・岡田恵和が出したかったという、永遠のテーマ「男女の友情は成立するのか?」というのがキーワードになっています。(しかも、原作本の出版を前に映画化する!という前代未聞のコトです)
ネタバレがほんの少し入りますが、幼馴染の3人、という3。「武志だけを置いて流れていった時間(と表現しましょう)」であるところの3年間。メインテーマ曲として流れる切ないメロディも3拍子。そして、宏樹・武志・薫を取り巻く(親を含めた)大人たち、その中心人物も3人なのです。これは非常に面白い演出・効果だと思います。
「3」という数字、あなたはどう思いますか?
1.5という小数、3分の1という分数を使えば割り算はできます。そして、「1、2の3」「ワン・ツー・スリー!」という掛け声があるように、とてもなじみのある数字でありながら、とても重みのある、そして難しい数なのです。
この映画のもう一つのキーワードは「3」という数字なのではないかと私は思っています。

また、築地の市場の中を撮影する、朝日新聞の本社で撮影をするという、難しいことをやってのけたスタッフの苦労もすごいな、と思いました。

脚本の岡田氏は「一人が二人を想い、二人が一人を想う。誰よりもお互いを想う3人が願ったハッピーエンドの形を描いた」と語っていますが、私からすれば、「ハッピーエンドであって、ハッピーエンドじゃない!」と言えるでしょう。
あまりに悲しすぎて、エンドロールが流れ出した途端、まだ暗い劇場の中を一人逃げるように後にし、トイレの中で泣きました。

アニメーションやPCゲームに詳しい方でご存知の方がいらっしゃるであろう「君が望む永遠」。これとストーリーが酷似しているので、最初は、原作者はこれを元にしてるのではないかと疑うくらいでしたが、それは映画を観終わった後、全然別のモノだった、ということに気づかされます。
主人公のキャラクターへの思い入れはそれぞれ強く、宏樹は不器用な優しさを持っている所、薫はさりげない、気取らない優しさがあるところ、武志は、友達思いだけど寂しがり屋な所がすごく素敵で、どこかで自分を重ねていたのかもしれません。私がこの3人の誰になれるか・なるか、という想像をしたのなら、間違いなく武志でしょう。

ただ、惜しかったのは、ところどころの節目となる演出がちょっとオーバーだったカナ、ということ。あと、歌手である2人の歌を映画の主題歌・挿入歌として持ってくるのは正しい選択かもしれないし、脚本家のコンセプトが「ハッピーエンド」というのならば致し方ないかもしれませんが、私としては、もう少ししっとりとした切ないながらも温かみのある歌を最後に流して欲しかったです。

しかしながら、これはいい映画です!
ストーリーとメイン・サブ問わず、役者さんの演技や表情に注目して、じっくりと観て下さい!


あなたは、男女間の友情を信じますか―?
かつて好きだった異性の幸せを心から祈れますか―?
もし、明日「世界が終わる」ではなく「あなただけが天国に行かなくてはならない」としたら、その前に何をしたいですか―?