缶コーヒー「サントリーBOSS レインボーマウンテン」のテレビCMシリーズ。
「上を向いて歩こう」をBGMで使用した、タクシー運転手の「おじいさん篇」
「明日」がBGMで流れる、「夜明け」が印象的の「2011特別篇」
その続編がついに登場。
残雪まばらなとあるローカル線の駅。
駅手前のホームに、ディープマリンブルーとホワイトに塗られた2両編成の列車が止まっている。
ナレーション:「この惑星の『駅』と呼ばれる場所では、出会いと別れが繰り返されている」
「宇宙人 ジョーンズ 地球調査中」のテロップ。今回の仕事は、駅長さんらしい。
乗降口で吉岡秀隆さん:「どうしても行くのか」
車内の佐藤江梨子さん:「・・・。」
開かれた窓越しに池脇千鶴さん:「どうしても行くのね」
車内のヒロシさん:「・・・。」
佐藤さんの「・・・ごめん・・・」という声とともにドアが閉まり、
ジョーンズ:「シュッパツシンコウ」
佐藤さん、車内を駆け、「私なんかより、もっといい人見つかるから・・・!」
池脇さん、列車を追いかけ「ヒロシーっ」
ヒロシさん、窓から顔を出し「ごめんなぁーっ!」
ジョーンズ駅長の、「ヨシ」の声とともに、列車はホームを去り、吉岡さんと池脇さんが並んで残される。
ナレーション:「ただ・・・この惑星では・・・」
ジョーンズ、ホーム下を指差し、「ヨシ」といったかと思うと、池脇さんの右足のヒールが折れた!
倒れ込む池脇さんを抱きとめる吉岡さん。
互い未に見つめあう二人。
吉岡さん:「付き合っている人・・・」
池脇さん:「いません・・・」
ナレーション:「別れがないと、出会えない」
二人の成り行きを見守り、小さく「ヨシ」と指差したジョーンズ。
そしていつものとおり、BOSS レインボーマウンテンブレンドをゆっくり口にし、駅の遠くを見つめるジョーンズなのであった・・・。
さぁさぁ、このCM。初めて「ドラマ『Dr.コトー診療所』」のファンであり、吉岡秀隆くんの大ファンである母とともに見たとき。
母:「あらぁ、吉岡くんこんなとこにも出てて・・・」
私:「母さんファンだものね。すごいよね、いい演技してる」
私は、好きなお笑い芸人の1人であるヒロシさんが出てくれたことが嬉しかったのと、「展開早っ!」という突っ込み満載のストーリー展開とでぷぷっと笑っていたのだが。
母:「?!?!ねー、あれ、あの駅ってもしかして・・・」
私:「はい~?」
母の観察力はすごかった。
あのCMのロケ地を、一発で見抜いたのである!
佐藤江里子さんが列車内を駆ける窓の後ろ。
青い看板に白いフォントの文字。そこには「のとな・・・」と見えた。
列車が走り去ったホームに残された二人の後ろにある青い貨車。
あれは、旧国鉄時代に使用していた、郵便車。
そして、冒頭に映し出される駅の様子。そこに止まっている車両がとどめの一発。
列車の先頭部にオレンジで描かれたロゴは、紛れもなく「のと鉄道」のものだ。
もう間違いない。母と二人で確信した。
「あのロケ地は、石川県の第三セクター『のと鉄道』の『能登中島駅』だ!!」
2005年に、穴水‐蛸島間が完全廃止され、今そこの区間では線路を敷いていた砂利跡が残るだけ。国道を走ればトンネルの跡も見えるけれど、そこにはもうあの列車は通らない。
学生時代、旧国鉄の列車を使用して通学していた母にとって、そして、奥能登を愛する人たちにとって、鉄道ファンの人にとっても、忘れられない路線であり、第三セクター鉄道。
前述の郵便車は、小さい頃、図鑑で見て知った。
貨車の中で郵便の仕事をする車輌があるということを。
しかし、調べているうちにわかった。
需要の低下とともに失われてゆき、車輌も解体され、今ではあの能登中島駅に保存されているものを含め、たった4両しか保存されていないと。
しかも、能登中島駅に保存される数年前は、母が利用していた「甲駅」に保存されていたということを。
ちなみに、のと鉄道についてはこちらを参照のこと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AE%E3%81%A8%E9%89%84%E9%81%93
現実を帯びたネタバレ話を一つだけすると、CM内で列車が走り去る方向は、上り線ではなく下り線。金沢の方向へ行くには、反対側のホームに立っていなければならないのだ。
でも、駅という題材を用いてCMを作るに当たり、サントリーのCM担当さんは、とてもすばらしい場所を選んで下さったと思っている。
ユーミンの「春よ、来い」に乗せて、曇り空の中の、別れのシーン。
CMには映し出されていないが、駅舎をくぐってすぐの目の前には波静かな湾が広がっているのだ。
そして、このシリーズには欠かせない(?)、思わず笑ってしまうシーン。
これをお読みになって下さった皆様。特に県外の皆様。
この喜びを、こみ上げるさまざまな想いを誰に伝えよう―
そう思って、私はこの記事を書いている。
時々、ラジオや道行く人での話題になるのですが、「石川県の『穴場スポット』って何処?」という質問が寄せられるときがあるのだが。
ここも・・・その一つだ。
鉄道ファンならずとも、訪れて欲しいのと鉄道沿線。
ここから先の中能登~奥能登にかけては、まだまだ風光明媚な美しいところがたくさんあります。
ドラマや映画だけではなく、CMの撮影で使われた「メイキングスポット」を巡ってみるのも、旅の一プランとしては面白いのではないだろうか。
あの駅も
誰かの出会いと別れの場所だったのでは・・・
そんな想像をしつつ―