好奇心旺盛な子供たちは、私についていろいろと知りたがり、
「遊んで~」「フリスビーしよう?」「ドッジボールしよう?」とさそわれ、
「せんせー、おんぶしてよぉ」「せんせー手ぇつないで・・」と甘え盛りの子供たちにスキンシップをお願いされ、
「せんせー、いっしょにおやつ食べよう?」「せんせー、次こっちにきてよぉ」と次々声をかけられ
「せんせー、ここわかんない」と国語のプリントを持ってきたり…といった宿題のことも尋ねられたりする。
“あぁ、体が二つ三つほしい!”と思ったり(笑)
そして、「やっぱり来たか」という感じの「身の回りであることの疑問・質問」。
それはある日のおやつの時間に質問されたこと。
「せんせい、鳥って、電線に止まってもなんで感電せんがん?(しないの?の意)」
ポテトチップを頬張りながら、一人の男の子が尋ねてきた。
「いい質問だね~、たしかに不思議だね。センセ、答えてもいいんだけど…じゃあ、みんなにも聞いてみよっか?」
うん、といったその男の子の肩をぽんっと叩き、黒板のあるホール前方に行って訊いてみた。
やはり理由はわからず、「知りたい」という子が大多数。
「わかった!とまってるふりして実は空中で浮いとるんや!」(んなわきゃナイ)
「わかった!でんきタイプやから感電しんのや!」(ポケモンだナ)
「おやつ食べながら聞いてて?」といった私だったが…そうは問屋が卸さなかった。
ホール内はにぎやかなディスコの中か電車が通るガード下といったところか。
ただでさえはしゃぎまわってじっとしていられない子が多い私の学童保育―
そうこうしているうちに、黒板に電線に止まった鳥の絵を書いたら、それに落書きをしだす子供たちで溢れ返ってしまい、それでおやつの時間が過ぎて言ってしまった。
私は一時中断。
しかし、答えを知りたがっている子供が多く居たのも事実。じーっとおやつに手を伸ばしながらも私の話を聞いていた子はいたのだ、たしかに。
「わかった、うるさい中で黒板に書いてお話してもわかりづらいだろうし、落書きされちゃうのはやっぱりいやだから、センセ、プリントにまとめてきます。明日までに。それでいい?それまでに、みんなはおうちにかえって、答えを予想・・・考えてみて下さい」
(予想=よそう、という単語がわからない子・学年もあるのだ!これがクセモノ)
かくして次の日。
私は、幼い頃読んだ「学研まんがひみつシリーズ『トン・チン・カンの科学教室』」や科学関係のインターネットでの資料を基に、プリントを作った。
漢字にはルビを振り、使えそうな挿絵も入れた。
文の内容は次のとおり。
「電気がとおるには、入り口と出口がひつようなんだ。
鳥はとまるとき、1本の電線にりょうあしをのせているだけだよね?
つまり、入り口があっても出口がないから、電気は「いきどまり」になっちゃって、鳥の体には電気がながれないんだ。
それにもう一つ。電気には、いくつものとおり道があると、よりたくさん電気がながれるほうへいこうとする力がある。鳥の体の中をとおるよりも、電線をながれるほうが電気はとおりぬけやすいから、鳥の体の中をとおらず、そのまま、すどおりしていっちゃうんだ。
もし、みんながおもいきりジャンプできて、1本の電線だけにぶら下がっても、体に電気は流れないよ。でもあぶないからぜったいにしないでね。
ただし、鳥が2本の電線にとまったり、とまったまま地面からはえている木の実を食べたりすると、電気が体の中をとおって地面に流れる。つまり出口があるってことになるんだ。だから、感電しちゃうんだよ。
上の絵のように(電力会社の、凧や釣り糸が高圧線に引っかかっている絵を入れて)、体のどこかが地面にふれているままで電線にさわっちゃうと、ものすごい力の電気が体の中をとおって感電してしまう。ぜったいにさわらないでね!」
で。
おやつを食べる「集いの時間」に、読むことにした。
「みんな、せんせいはちゃんとやくそくまもったよ。きのう、『プリントにまとめてきます』って言ったよね?」
おやつに夢中の子達と、「なになに?」とこちらを見ている子が半々。
「これが、きのうのしつもんのこたえです」
というと、「あっ、きのう言ってたアレかぁ」とこちらを向く子がちらりほらり。
「みんな、よーく覚えておいてね?『感電する』ていうのは『電気が体を通り抜けること』なんだよ?」
読もうとした。
だが、ここで大失態!
8グループ分のプリントの複写を忘れていたのだ。学童にあるコピー機は、A4サイズ以外のものがコピーできず、A4二枚にまとめたプリントを、合わせてA3にコピーしてくればよかったのだ。
仕方がないので、代表して三年生の男の子数人に読んでもらったが、これもいい作戦だと思えなかった。
彼らは、決定的に「読む力」が足りなかったのだ。私と声をそろえて読んでも、ところどころつまり気味。全部ひらがなにしたところでむつかしいのは変わらないだろう。
初見の文章を読むという能力が小学校低学年・中学年ではまだまだついていない、ということの表れだった。
しかし、だ。聞いている子はちゃんと聞いていた。8つあるテーブルに、挿絵を見せて回ったところ、覗き込んで見る子の方が大多数だった。
(なぁんだ、やっぱりみんな、大なり小なり興味があったんだナ)
せっかくのおやつの時間を少なくしてはいけない、と思い、「しつもんがあるひとはあとでききに来て下さい」といい、ひとつのテーブルに座ると、おやつを食べ終えた何人かの子が
「せんせー、見せて~」とやってきた。
質問の内容は本当に十人十色で面白く、
「いっぽんの電線なら感電しなくって、隣の電線につかまっちゃったら感電するんや?」
「電線につかまったまま、体のどこか下についたらだめなんや?」
と確認してくる子もいれば
「かたっぽが手で、もうかたっぽが足でもだめなん?」「0.000001秒ふれてもだめなん?」「おもいきりジャンプできんでも、はしごでのぼって、そこからつかんだらとどくよ」などといろんなパターンを語る子もいて、
(あぁ、「小学生らしい」発想だな)と胸中で笑い、
かと思えば
「せんせー、電線を直すおじさんはあぶないね」といってくる子も居る。
そこで付け加え。
「電線を修理するときは、電気を止めて工事をするんだよ。工事するおじさんたちは、ゴムてぶくろやゴム長靴を履くんだ。ゴムは電気を通しにくいからね」
中には、高圧線に凧が引っかかった絵を見て
「そうや!お正月に凧揚げしたとき、電線なかった!運動場いってやったもん」
ということに気づく子も居た。
そして土曜日。
「せんせい、鳥の電線のお話、お母さんにしたよ。そしたら『ふーん、そうなんや~』やって」
と一人の女の子がお話してくれた。
「せんせー、どうしてそんなに色んなこと知ってるの?」
うーん、どうだろう、と答えると
「たくさん勉強したから?」
とさらに訊いてくる女の子。
それからのやり取りはいずれお話しすることにしよう。
おまけに月曜日(すなわち今日)。
おやつの時間は、色んなコトを訊いてくる子が増えた。
「せんせー、地球ってどうやってできたの?」
「せんせー、地震ってどうして起きるの?」
「せんせー、あのプリント、面白かった、っていうか・・・また別のン読みたい!また作ってきて!」
男女問わず、「科学の世界」にはみんな興味津々なようだ・・けど!
オイオーイ

Hibikiセンセ、宿題という名の仕事がいくつか増えそう(?)