【イントロダクション】
「やりたい仕事が、ここでしかできないだけなんだけどなぁ・・・」
「お父さんが単身赴任してからお母さんがずっと元気がないです」
「じゃあお母さんに何かごはん作ってあげるといいよ。おいしいもの食べると元気が出るでしょ?」
「うんっ」
『どんなときも、おいしいものを食べると元気になれる。』
実際に南極で料理人だった原作者の著書を元にした、コメディ&ハートウォーミングドラマ!
【ストーリー】
氷点下54℃、日本までの距離14,000km。標高3810mの所にある、南極・ドームふじ基地。
そこは、ペンギンも、アザラシも、ウィルスさえいない所。
そこで、8人の観測隊員たちがここで生活することになる。
恋人にも会えない 家族とも離ればなれ・・・まさに“究極の単身赴任”。
1997年、海上自衛官だった西村淳は、ひょんなことから(?)南極観測隊員として任命され、南極で一番過酷な環境として知られる“ドームふじ基地“に派遣された。そこで彼は、南極独自の調理方法で、観測隊員を支えるため絢爛豪華な料理をふるまう。そこで繰り広げられる8人の男たちの生活は・・・。
【メインキャスト】
西村淳(調理担当):堺雅人
本さん(雪氷学者):生瀬勝久
タイチョー(気象学者):きたろう
兄やん(雪氷サポート):高良健吾
ドクター(医療担当):豊原功補
主任(車両担当):古舘寛治
盆(通信担当):黒田大輔
平さん(大気学者):小浜正寛
西村の妻・みゆき:西田尚美
西村の娘・友花:小野花梨
KDD清水さん:小出早織(現・早織)
鈴木:宇梶剛士
船長:嶋田久作
【スタッフ・詳細情報】
原作:西村淳『面白南極料理人』『面白南極料理人 笑う食卓』(新潮文庫刊)
監督・脚本沖田修一
音楽:阿部義晴
主題歌:ユニコーン「サラウンド」
上映時間:125分
2009年8月8日劇場公開
DVD発売元:ポニーキャニオン
【コメント】
最近、邦画のDVD鑑賞にハマっている私が、とあるDVDの本編前に流れるPR映像で知った映画です。
そしてこの映画は、3月11日(以下「3・11」)の東日本大震災の地震が起きる直前の日曜日に家族で見ました。
“衣・食・住”
人間にとって、なくてはならないモノ―
彼ら8人にとっての「衣食住」・・・
部屋は狭くとも家はある―
着ている服は、極地用の特別装備―
それに、お酒を飲んだり、麻雀に興じたり、時にはみんなで乱痴気騒ぎをやらかしたり。
でも・・・
遠く日本を離れ、家族や恋人と1年以上別々の暮らし。
電話は繋がる、でも1分\740(!)
水は自分で雪を解かして作らなきゃならない。
「南極料理人」というタイトルを聞いて、昭和基地の南極観測隊の調理人さんなのかなと思っていたら、そこよりもさらに過酷な地の観測隊・・・男8人という生活。
撮影そのものは北海道で行われたそうですが、現地の苦労が偲ばれる描写が多数描かれで、南極ではないといえかなり厳しい様子が伝わってきました。
仕事とはいえ、さまざまな意味で大変なことは確かです。映画の中でさえそのご苦労を感じたのですから、本当の南極観測隊の苦労はそれをはるかに超えるものなんだろうなぁと想いました。
その苦労の中、生きるために・生き延びるために・生き抜くために
そして、何よりの楽しみ―それが「ごはん」。「食事」。
それも、「心のこもった料理」。
料理を作るには、食材がなきゃ話にならないですよね。
この映画を見たあと放送が始まった、少年ジャンプ連載コミック『トリコ』には、「オラたち人間は、自然からいのちをいただいております」というAC JAPANのCMを見聞きするまでもなく、嫌味なくスーッと心に染み入るキメ台詞がありますね。
【この世のすべての食材に感謝を込めて いただきます】
そこに食べられるものがあるかないかという制限がかかる南極という地での調理の仕事。
もちろん滞在期間中の食料は、それなりにたっぷり用意されてはいるでしょう。だから自然災害や飢えにあった人々とはリクツが違うかも知れません。
でも、それらをキッチリ管理する―それだけでも「南極料理人」の仕事は大変です。
食材を無駄なく、効率よく使用するために、たとえばシチューなんかを作ったら、あまったシチューで何か別の料理を。それがあまったらまた別のメニューを・・・と作り変えてゆくんだということを、母がテレビで見て知ったそうです。「工夫しておいしいものを!」というコンセプトは幼い頃から今でも、母の料理のポリシーみたいなものなんです。
これだけでも、母や堺さん扮する西村隊員の苦労と工夫が間接的にですがわかります。
それに付け加えて、毎日誰かのために食事をつくるということがどれだけ大変なことか・・・限られた食材で、どんな風に料理しようかを考え、毎日毎日繰り返される調理という、ある意味メンドウで、でも底無しに奥が深い仕事です。
ちゃんと食材があるだけじゃなく、人に作ってもらって、「どうぞ、召し上がれ」と出してもらって
「○○が食べたい」というリクエストにこたえてもらって
「冷めないうちに食べなよ」って言ってもらえて
「おいしい」「うまっ」と言える・・・そんな料理。
この映画を見て、さらに「3・11」の直後、私は本当に「食べること」ということについて真剣に考えました。何気ない毎日の生活・・・とりわけ毎日の食生活を「当たり前」と思いかけている私が、ビンタでもくらったような感じでした。
そして思いました。『いつでも・どこでも・どなたでも 食の幸せだけは失いたくない、失ってほしくない』、と。
食べることと心―
「心=体」と「精神」の絆が、「頭」の命令との単純な結びつき以上に大切な、私たち人間。
「悲しいことがあっても、とりあえずモノが食べられたら、少しは精神状態もましになる―だから人間、食べるってコトをしなきゃ、ね」
そう教えてくれたのは母や祖母でした。
率直に心あたたまる映画だったと思いました。
内容的にもほのぼのとしていますし、可笑しくて、いろんなところで笑ってしまいますよ。
西村隊員の「『してやったり』といった感じの『逆襲』」をはじめとした、表情や手つきなどのすばらしい演技をはじめ、各キャラクターの個性の強さにぐいぐい引かれていき、本編時間の長さとは裏腹に、「あれ?いつのまに終わったの?」という感じでした。
年月がたつにつれて髪の毛が伸びてきていたりする演出も、雪色一色に思われる南極という地に、さまざまなカラフルなアクセントがついている景色やセットの配色が素敵なのと、それの有無によってガラリと変わる風景も、よい見せ方をしています。
ふっくらおにぎりも
みんなで作ってハフハフいいながら啜りたい豚汁も
カリッカリのエビフライも
ジューシーなステーキも
海上自衛官は金曜日に必ず食べるカレーライスも
全国にたくさんのお店が立ち並び、今じゃインスタントでも食べられるラーメンも
誕生日には欠かせないケーキも
お弁当の中に入っていると嬉しい鶏の唐揚げも
みんな、誰かが食材を手に入れ、誰かが料理しなくちゃ食べられない―
なんでもかんでも今回の震災に結びつけて考えるのはよくないことだとはわかっていますが、お腹を満たしてくれる、おいしいご飯が食べられることに、これからも感謝―
食をめぐって展開される人間模様の暖かさと、食べられる幸せ食事が出てくる幸せをかみ締められると思える映画です。
自信を持ってオススメします!