中国で見つけた珍しい???

中国在住の管理人が、中国で見つけた珍しいものを紹介していきます。

中国で格闘技を習う(番外編)

2011年09月29日 22時03分35秒 | 日記
 私は2004年から中国と関わっていますが、その間に中国で色々な武術・格闘技を習ってきました。今でも印象的なのが、北京大学で習った「陳式太極拳」です。先生は30代の若い方で、始めは私たち外国人に教えるということで、張り切って太極拳っぽい服を着てきました(後の練習では、だんだんラフな格好になっていきましたが)。

 太極拳は動きがのろいですが、実際にやってみると足腰にきくので、習う人が徐々に減ってきました。私は中国武術に興味があるので、頑張って練習を続けました。

 ある日、午前中に雨がふりました。午後からは通常通りに練習が始まりました。北京大学の公園で練習を終えると、先生がいきなり公園の樹木を相手に、「発勁」(発力)を使い掌底を打ち込みました。すると、その木から雨粒がドサドサと落ちてきました。「おぉ、すげぇ!」と喜んでいると、サービス精神旺盛な先生は、私の体を利用して軽く発勁を披露してくれました。私は何歩も後退し、中国武術の奥深さを身をもって体験しました。

 私は伝統的な中国が大好きで、水増しを喜ぶ現代の文化的風潮を嫌います。

 これまで紹介してきた、テコンドーがまさにその一例でしょう。表面的な派手さ、実力を薄めた見掛け倒し、それが中国全体に一つの傾向として広まっています。建物も鉄筋を抜いた見掛け倒し、ドラマも10話で終われるものを無理やり30話にする体たらく、新聞記事では同じ文章(発言)を二度も三度も繰り返して記載し長く見せる手抜きっぷり。中国語の勉強を始めたばかりの私は、これらの現代社会の現状を知らなかったので、少々この国を買いかぶっていいた嫌いがあります。

 中国で長く生活していて、それなりに不満があります。格闘技という違った切り口で、中国人の傾向・好みを理解することができます。私にはなんとなく、中国現代文化が軽薄に見えてしまいます。


パンダはやっぱり可愛いですね。外交利用されるのは気に入りませんが、パンダ自体はやっぱり魅力的です。

中国で格闘技を習う ~其の四~

2011年09月26日 19時44分40秒 | 日記
 中国の学校は夏休みが長いため、学校の内外でさまざまな夏期講座・クラスが開設されます。前回紹介したテコンドーの道場でも、夏休み限定のテコンドー・散打クラスが開設されました。当時、上海に留学していた私もヒマだったので、午後の時間に開設された散打クラスに行きました。

 練習内容等は、前回の北京散打激闘編とかぶるので、紹介は控えたいと思います。ただ興味深かったのが、散打指導員の練習時の発言です。彼は普段、夜の時間にテコンドークラスの指導も担当しているのですが、私たち生徒(テコンドーに参加しているちびっ子を含む)の前でこう言いました。

 「テコンドーなんか、子供だましだからな」

 生活のために仕方なくテコンドーを教えている、リアルに戦える指導者の苦渋がにじみ出ています。上海で格闘技を教えている指導者は、たいてい他省からの出稼ぎ労働者です。上海の富裕層の子供を不本意ながらだまし、お金を稼ぎ生計を立てる。彼がだましているのは、あんがい子供たちではなく、大人の方なのかもしれません。

 子供のテコンドークラスには、たくさんの保護者が訪れます。練習は要するに、保護者に対する見せ物でもあります。ですから、彼らが野蛮だと感じるような、激しいスパーリングなどは決してやりません。私は道場に備え付けてあるサンドバッグに、かつて総合格闘技の某有名選手(S・A)にほめられたことのあるキックをバシバシ打ち込んでいたのですが、保護者たちに嫌な顔をされました。私も神聖なる道場のサンドバッグのそばに、保護者がのほほんと腰を下ろしているのが気にくわないので、あえて本気で蹴り続けます。

 上海留学も終わりに近づき、日本に帰国することになりました。帰国間際、私は食事をするためテコンドー道場のそばをうろついていたら、例の指導員が同じ場所でダンスを教えている美女と、宿に入って行きました。子供たちの前ではあまりイチャイチャしない彼らの、微笑ましい光景でした。


今日は特に写真がないので、パンダをどうぞ……

中国で格闘技を習う ~其ノ參~

2011年09月23日 21時38分04秒 | 日記
 散打はほどほどに習い、そのまま日本に帰国しました。2年後、今度は北京に代わり、上海に留学する機会を得ました。郊外のキャンパスでしたので、やはり外国人向けの本格的なカンフー道場がなく、中国の児童向けのテコンドー道場に仕方なくお世話になりました。

 中国で最も流行っている格闘技は、なぜかテコンドーです。現代の中国は、実力よりも見かけにこだわるので、テコンドーの派手な技がありがたいのでしょう。本場の韓国ではどのように練習しているのか知りませんが、中国でのテコンドーはスパーよりも型・技・ストレッチ中心で、実際にはあまり強くなれそうにありません。成人が本格的に武術を練習したい場合は散打を選び、子供が運動程度に習いたい場合にはテコンドー、といった感じです。もちろん、子供が自らテコンドーを習いたいと思うわけがなく、大抵は親が無理やり通わせています。ろくに運動したこともない、体つきのぶよぶよした親が、分かりもしないくせに「そんな蹴りじゃだめだ!」と、わけの分からない指示を飛ばします。


時々、綺麗な女性も習っています。なんでも美容にいいとか……


 こんなしょうもない道場に通うのも気が重いのですが、丁度よい運動にはなるので、頑張って通い続けました。この道場も、北京の散打と同じく、スパーをほとんどやらず、アップばかりに時間をかけていました。またテコンドーなので、柔軟運動に時間をかけます。私は元々、かなり柔らかい体質だったのですが、必要以上に柔軟をやるので、痛くなりかえって体が硬くなりました。指導員には、「お前、来たばっかの時より、どんどん硬くなっているじゃないか!」と言われました。もっとも、この道場に通うのをやめ、日本で温泉につかったあと、ゆっくりストレッチをするようになったら、徐々に元の柔らかさを取り戻したのですが。

 さて、お約束のスパーリングです。この道場で、私と同じ年頃の会員は、私より一回り体が小さい黒帯だけでした。指導員は、「来週はブラックベルトが来るぞ!」と言い、私をけしかけました。そこでこの中国人テコンドー黒帯とスパーをすることになりました。胴体にやたら重たい防具をつけ、足にはやはり頼りないすね当てをつけました。手技はないので、グローブなしです。

 子供たちに囲まれ、スパーが始まりました。お調子者のガキが、抗日ドラマで覚えた「バカヤロウ」を言ってきます。変に雰囲気が和んできたのですが、慣れないテコンドールールに則って、ともかくスパーを進めました。私の方が足が長く、スパーリングに慣れているためか、相手がだんだんヘタってきました。私は汗ひとつかいていないのですが、相手はゼエゼエと息を荒らげています。テコンドーは、リーチが短い方がちょこまか動く必要があるので、これも仕方ありません。弱い黒帯に優勢を保ったまま、スパーは終了しました。手応えのない展開に、少々がっかりです。それは回りで見ていた子供たちも同じだったことでしょう。(続く)

中国で格闘技を習う ~其ノ貮~

2011年09月21日 16時06分50秒 | 日記
 ついに散打のスパーリングができるということで、わくわくしながら例の汚い体育館に向かいました。

 スパーリングを日常的に行わないこの道場には、いつもより余計に見物人が集まっていました。同じ時間に隣でテコンドーを練習している人たちや、他のスペースで卓球をやっているお年寄りも、なぜかこの日ばかりはどやどやと集まって来ました。

 さて、いつも通りゆっくりとアップをすると、ミットの打ち込みをやらずスパーに入りました。私の相手となったのは、身長が私よりも10センチ以上、体重が20キロ以上もあるような、少々ごつい学生風の男でした。彼は体つきがたくましく、サンドバッグやミットを蹴る姿もなかなか様になっていたので、さぞかし強いんだろうと思っていました。野次馬からすれば、二回りほど体の小さく弱そうな私がどう戦うかが見物だったのでしょう。こんな大男に勝てるわけないと思いながら、私は道場の防具を身につけましたが、これが重いばかりで効果の低い品物でした。一番肝心なヘッドギアもなく、マウスピースも用意していませんでした。すね当てはサッカーに使うような、表面が固くしかもカバー範囲が狭くて、とてもじゃないけど使えたものではありません。



 これの相当ぼろいモノだと想像して下さい。

 戸惑っているうちに、スパーが始まってしまいました。これほどひどい防具を使うのだから、本気で戦う訳にはいかないと、手を抜くつもりでいました。しかし相手はめったにスパーをやらないためか、変に力んでいて、怪我させられるような攻撃をバシバシ打ってきます。相手の体が大きく力もあるものだから、私も手を抜いていては殺られてしまいます。それに安全意識ゼロの指導員兼審判の男性は、「本気を出せ」と私をけしかけてきました。

 そこで若干ムキになって反撃に転じたのですが、意外や意外、相手が見掛け倒しであまり強くないのです。普段はサンドバッグを蹴るだけなのか、まずガードが全くなっていません。動作も全体的に大ぶりで、無駄があります。馬力だけは旺盛ですが、私が総合格闘技で習ったタックルを仕掛けてみると、何の抵抗もなく簡単に倒されてくれました。周囲の野次馬からは「好!」という声が漏れてきます。

 勢いに乗って来ました。私もちょっと派手なことをしてみたく、試みに適当な距離から回し蹴りをやってみました。これがなんと命中! 私はもう8年間くらい格闘技を練習していますが、回し蹴りがあごにヒットする相手はこれが最初で最後でしょう。この日本人の意外な活躍に、審判をしてくれていた指導員まで「好!」と言いました。圧倒的リードを保ったまま、私は日のスパーを終えました。とりあえず、誰にも怪我がなくてよかったです。

 それから道場の人の、私に対する見る目が変わりました。「日本円見せろよ」と言い私にちょっかいを出していた子供も、恐れをなして距離を置くようになりました。いい形で彼らを見返した形です。なんだか漫画みたいな展開ですが、記憶に残る一日となりました。(続く)

中国で格闘技を習う ~其ノ壹~

2011年09月19日 10時39分46秒 | 日記
 高校を卒業すると、私は大学に通うため東京に引越しました。アパートから自転車で30分くらいのところに、ブラジリアン柔術を教える総合格闘技の道場があったので、ここで格闘技を習うことにしました。寝技の他にも、週に2回ほど打撃の練習をしました。修斗フェザー級1位の人に厳しく教えていただいたので、教科書通りのミドルキックを身につけることができました。

 それから1年数ヶ月、私は北京の北方工業大学という所に、長期留学に行きました。場所は「石景山遊楽園」ですっかりおなじみになった石景山区、大学の裏側には汚いスラム街が広がり、北京の庶民生活を垣間見ることができます。

 さて、中国に来ると時間が余り、食べては寝るの生活になるため、運動不足に陥ります。私はせっかく中国にいるのだから、本格的なカンフーを教えてくれる所を探しましたが、まったく見つかりませんでした。近くで見つかったのは、大きな体育館の地下にある散打とテコンドーでした。散打とは中国のキックボクシングとも呼ばれ、ポイントと組み技を重視し、極端にKO率が低いため、競技としては面白くありません。しかしテコンドーよりは中国らしいと思い、しぶしぶこの体育館にお世話になることにしました。



 外国人は私の他にも、一人の欧米系の白人がいました。日本人は珍しいので、すぐに会員たちに覚えてもらいました。会員の中には数人の子供がいて、私が日本人であることを知ると、「日本円見せてくれよ」とからかってきました。私は体型がヒョロヒョロしているうえ、顔がいかにも弱そうなので、若干なめられていました。

 練習は余り満足できるものではありませんでした。土足であがる汚いマットの上で走り回り、格闘技に使うのか?と思われるジャンプ等おかしな運動で体を温めると、横一列に並びワンツー等の練習をしながら前進します。ときどき、後ろからついてくる人が「うひょう、うひょう」と、ブルース・リーを意識したような声を出します。こんなことをしばらく続けると、練習の残り時間が30分弱になります。残った時間でミットを使った打ち込みをして、練習が終わります。グローブもミットもボロボロで、まさにチャイナクオリティです。私は軍手を用意してましたので、これで何とか匂いの問題は解決しました。

 1週間に2回くらい通っていましたが、スパーリングがほぼ行われなかったため、いつも物足りない気分でした。スパーをやらずして強くなれるはずがありません。スパーをやらないなら、道場に通う必要さえないのです。こうして不満を抱きつつ通い続けると、指導員が「今度の練習では、スパーをやる!」と前もって宣言しました。どうやら道場生同士のスパーは、ちょっとしたイベントのようです。とにかく、中国人と戦うのは珍しいので、次の練習にも休まず参加しました。(続く)