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小沢献金問題の本質がここにある!森功氏力作の「泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴」

2011-06-28 11:04:26 | 成功するための教養本
「泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴」
筆者/森功 出版社/文藝春秋 1500円

◆目次
第1章 始動―東京地検特捜部「裏金捜査」の端緒
 特捜部が目をつけた重機裏取引
 塀の中の事情聴取
 奇怪な小沢事務所の不動産取引
 東北談合の「天の声」
 小沢一郎との出会い

第2章 汚職事件―電力事件で急成長した水谷建設
 兄弟間の亀裂
 前田建設と組んだ敦賀原発工事
 政商「白川司郎」の役割
 不発に終わった「原発利権」の解明
 検察の汚点になった福島県知事汚職

第3章 摘発―検察が乗り出した談合組織の解体
 封印された銃撃事件
 談合屋の生態
 業界垂涎の関空工事
 闇からの使者
 「俺といっしょに仕切ろうぜ」
 知事選で招集された関西談合組織
 政官業一体の現場  

第4章 裏金づくり―捜査の網をかいくぐる術
 重機取引のカラクリ
 カジノ通いの理由
 脱税捜査の壁

第5章 北朝鮮利権―羽田空港建設の裏工作
 レインボーブリッジ・小坂浩彰の計画
 ODA利権
 日朝交渉と電力開発
 プレゼント攻勢
 石原慎太郎「吉兆会談」の狙い

第6章 西松建設事件―ニ階俊博事務所の影響力
 和歌山県知事談合事件の闇
 業界人が集う談合サロン
 消えたJAL寮建設の仲介料
 VIP待遇の南白浜空港
 原発事業と族議員
 関空談合屋の中国ツアー

第7章 人脈―政官界から芸能人まで幅広い交友
 平成の政商「絶頂期」の還暦祝い
 札束が乱舞するカジノ付きディナーショー
 家族ぐるみの“愛人契約”
 亀井事務所への女性秘書派遣

第8章 政治とカネ―小沢一郎へ渡った水谷マネー
 向島の宴
 小沢裏献金の出どころ
 談合における裏金の役割
 秋田県知事と小沢秘書の蜜月
 談合のボス「鹿島建設」へのマッチポンプ

終章 宴の終わり
 口止め料の深層
 野中広務の「政界引退」の理由
 胆沢ダム受注工作の全貌
 「起訴相当」を下した検察審査会の衝撃
 政商に泣きついた小沢弁護団
 初公判のクライマックス
 運転手の個人手帳
 


原発問題の早急な解決が世界中から求められている、日本。

一方で政治は相変わらず安定さを欠き、今後のビジョンが見えてこない状況に陥っています。

こういう危機的状況にこそ求められる、リーダーシップ。

その首相候補として、今だに期待の強い小沢一郎。その政治生命を左右するのが、今回の事件です。

印象的だった箇所を、以下にご紹介します。


◆第1章 始動―東京地検特捜部「裏金捜査」の端緒

「ああ、あんたが森功さんかいな。刑務所のなかであんたの本読んどったわ」

名刺を受け取るなり、そう言う。事前に津の刑務所にいる本人宛に、近著の『と銀行―三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録』を差し入れていたので、読んでくれていたのだろう。おかげで、すぐ打ち解けた。水谷功は二年近い刑務所生活のせいで、ずい分スマートになっていた。

「刑務所はダイエットできるわ」

以前に比べ、体重が10キロ以上落ちたという。そういえば、報道で見た写真とは別人のようだ。だが、それでもかなり恰幅がいい。押し出しが強く、桑名なまりの独特な声には、妙な迫力がある。

「鳩山(由紀夫)さんの問題でも、小沢(一郎)さんの問題でも、もうちょっとあれやわな。わしらには、理解できんことが多いわな」

話題は、いきなり政治とカネになった。

「たぶん、われわれのほうが、もっと理解できてないと思います。どうなっているでしょうかね」


水谷功(2006年9月7日、保釈時)

そう相槌を打つと、水谷は話した。

「たとえば鳩山さんの政治資金報告でもな、あれはあきらかな虚偽やんか。わしなら刑務所へ行かなならん。でも、あの人なら『知らなんだ』でええわけやろ。小沢さんにしても、そうやんか。銀行の書類に本人がサインしとってやで、『わしは知らなんだ』やろ?」

みずからの裏献金告白が、小沢サイドにより、偽証呼ばわりされていることを気にしているようだ。

「知らなんだて、そんならこれ、偽造書類やないか。そういうことをあんたらは、よう追及せんのやね」

ずい分ストレートに話す。明け透けな物言いが印象的だった。

「いやいや、おっしゃるとおりです、それは。だからこうして、水谷さんから本当のところをお聞きしたいと思いましてね」

そう言葉を返すと、さらに言った。

「それで、われわれみたいな弱いもん追及しとったら、アカンわな、あんたら。あなた方は権力者に立ち向かわなアカンわな」

平成の政商と異名をとる男は、世間でいわれるほどの嘘つきではない気がした。
(※中略)

ダムやトンネル、道路といった土木工事には、ブルドーザーやパワーショベル、ダンプカーなどの重機を使った工事が欠かせない。かつての大手ゼネコンはそうした重機を所有してきたが、昨今ではほとんど下請けに任せている。下請けとして重機土木工事を担うのが、水谷建設などのサブコンだ。もっとも下請けといっても、数千万円から億単位の重機を所有するサブコンは、そう多くはない。国が発注するようなビッグプロジェクトに参加するのは、水谷建設のほかでいえば、丸磯建設、山崎建設、宮本組などに限られている。

そんなサブコンの強みが重機であり、古くなれば買い替えられる。中古重機は海外に売られるケースが多い。そうした売買を仲介するのが重機ブローカーと呼ばれる貿易商である。詳しくは後に触れるが、水谷建設は重機の売買を通じて裏金を捻出してきた。それを政界工作に使ってきたのである。

大阪トレーディングは、一時期の水谷建設が取引していた貿易会社であり、佐川はその社長だった。そこへ07年末、国税当局の査察が入る。そのときは追徴金だけでことなきを得た。だが、09年夏になり、それを蒸し返され、いきなり東京地検特捜部に呼び出されたというのである。先の水谷建設関係者が言葉を補う。

「お盆の十六日だったでしょうか。佐川本人が八月の初頭から二週間もずっと取り調べられているというのです。大阪から上京し、東京のビジネスホテルに宿泊して地検に通っているという。会長さんと会ったいきさつから個別の取引の中身まで聞かれ、それをぜんぶ話したといいます。そこから特捜部は会長本人の取調べに入ったのです」

つまるところ、裏金の原資についての捜査である。もともと水谷建設の資金操作に関しては、脱税事件以来、捜査の蓄積があった。


◆第八章 政治とカネ―小沢一郎へ渡った水谷マネー

談合のボス「鹿島建設」へのマッチポンプ

「鹿島の東北支店にクレームをつけてもらいたい」

森岡は水谷からそう頼まれた。

苦情処理は秘書時代から森岡の得意とする分野であり、逆にそれを利用してきたこともあったという。民間企業は監督官庁に弱い。建設会社なら国土交通省や地元の自治体からの行政指導や処分を恐れるのが常である。秘書生活を通じてその基本構造を熟知し、官庁にも知り合いが多い森岡は、それを利用して企業を攻撃する術を学んだ。水谷はそんな森岡の手錬手管に期待していたのだろう。

「どのような理由で森岡さんが鹿島に乗り込んだのか、それは鹿島も言わないので、わかりません。でもたしかに鹿島は彼を恐れていました」

水谷建設の元東北支店幹部は、そう明かす。

森岡が仙台にある鹿島建設東北支店に乗り込んだ際、受付にある防犯カメラが、そのときの模様を撮影していたという。

「当時の水谷建設東北支店長が、その録画ビデオを見せられたらしい。それで、支店長は鹿島建設の呼び出され、『この人は水谷さんと親しいそうですね。なんとか押さえてもらえませんか』と相談されたようです。先方もそれ以上のことは言わないから、こちらは事情が詳しくわかりませんが、聞くわけにもいかない。ただ、鹿島が困って相談されれば、こちらにとっては貸しになります。それを狙ったのは間違いないでしょう」

クレーマーを使って騒動の火種を起こし、相手が対処に困ると苦情の火を消す。典型的なマッチポンプだが、鹿島建設側にもそれなりの弱みがあったのだろう。水谷はそれも計算ずくだったに違いない。そうして相手を取り込んだ。

こうして水谷は鹿島建設へのパイプを太くしてきたという。大手ゼネコンでもなく、元請け業者にもない水谷建設にとって、仕事をとるためには綺麗ごとでは済まない。これが水谷流のビジネスのやり方の一端であり、建設業界で通用してきたのもまた事実だ。(※中略)


◆終章 宴の終わり

胆沢ダム受注工作の全貌

「最初の五千万円のときは、川村も相当慌ててたと思う。大久保から受け渡しの連絡あったんは、海外出張している最中やった。いつもなら桑名の本社へ戻ってから出直す。その余裕がなかったから、金をとり寄せたんや」


岩手県奥州市にある「胆沢ダム」。まだ建設中だ

水谷建設の元首脳が、献金の模様を詳述する。

「川村に五千万円を届ける役目は、桑名で川村の隣に住んでいる水谷建設の役員やった。出金したのは財務担当の中村やと聞いたで。その五千万を受け取った役員は、クロネコヤマトの宅急便の袋に現金を詰め、新幹線に飛び乗ったらしい」

水谷建設の裏金は、クロネコヤマトの茶色の紙袋で持ち運ぶことが多いという。数千万円程度なら一万円の束がすっぽり入るうえ、宅急便向けビニールコーティングされているので丈夫だからだ。元首脳が現金授受の情景を思い浮かべる。

「川村はその袋を抱え、会社の社用車を使って港区にある全日空ホテルに向かった。そやから、運転手もクロネコヤマトの袋のことを覚えていたらしいで。車を降り、川村はしっかり紙袋を抱えてホテルの玄関に消えたそうや。運転手はそのまま川村が出てくるのを待っていた。それで、車に戻ってきたときには、紙袋を持ってなかったというんや。そうなると、やっぱり川村がネコババしたとは思えんやろ」

よほど急いでいたのだろうか、ヤマトの紙袋はフロント前のソファーで渡されたという。いわば、これが胆沢ダムにおける三度目の裏金工作だ。川村の相手は、小沢事務所の事務担当秘書だった石川知裕である。(※中略)


石川知裕

最後がその五ヶ月後の05年9月。総選挙の準備と称し、盛岡市内のホテルで川村が大久保に二千万を提供したとされる。02年から05年までの三年間のあいだ、水谷建設による胆沢ダムの工事の受注工作は五度におよぶ。うち小沢側に渡ったと水谷側が証言する裏金だけに限っても、一億二千五百万円にのぼるのである。(※中略)


「起訴相当」を下した検察審査会の衝撃

「意外な結果で驚いている」

この日の小沢一郎は、いつになく目が泳ぎ、声も上ずっていた。2010年4月27日、検察審査会による「起訴相当」議決が発表された当日のことである。(中略)

「最終的には検察当局の適正な判断がなされると信じている。国民の皆さんも納得してくれると思っている」

最後はそう締めくくった。だが、やはり動揺の色は隠せなかった。(※中略)

「だから四億円を隠したいのが、第一ではないんですよ。やはり不動産の購入で、痛くもない腹を探られるというのが第一。だから、(四億円は)二番手なんです。小沢さんの四億円は、どうしても引っかかるんです」

かなり微妙な言いまわしである。世田谷の土地を買ったのは小沢から預かった四億円を含めた手持ち資金である。その四億円をはじめ、是が非でも、それらの資金工作を隠そうとした意図だけは否定しておきたい。そんな心情が見え隠れする。

もとより、石川はこの再聴取に臨むにあたり、弁護団と綿密な打ち合わせをしてきたに違いない。それでいて、ついこのような供述をしてしまったのは、取調べ検事の腕がいいからかもしれない。検察側が提示した録音記録が読み進められるにつれ、十一人の弁護団の大半が、苦虫をかみつぶしたような表情に変わる。そうして静寂に支配された法廷は、よりいっそう重苦しい緊張感に包まれていった。


小沢一郎(起訴相当の議決を受けて)


裁判の行方が注目される、小沢献金問題。

これは一つの疑獄事件にとどまらず、政界の実力者の失墜を左右するだけに今後の行方が非常に気になりますね。


最後に、著者のプロフィールを以下に記します。

◆森功(もり・いさお)
1961年、福岡県生まれ。新潮社勤務などを経てノンフィクション作家となる。2008年、「ヤメ検―司法に巣食う生態系の研究」、09年の「と銀行―三菱東京UFJの闇」(ともに月刊現代)の両記事が二年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。
主な著作は『サラリーマン政商―宮内義彦の光と影』(講談社)、『黒い看護婦―福岡四人組保険金連続殺人』『ヤメ検―司法エリートが私欲に転ぶとき』(以上、新潮文庫)
『許永中 日本の闇を背負い続けた男』『と銀行―三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録』(以上、講談社+α文庫)
『血税空港―本日も遠く高く不便な空の便』(幻冬舎新書)、『腐った翼―JAL消滅への60年』(幻冬舎)等。


森功氏


◆リンク集
・水谷建設
・マスコミ不信日記:水谷建設事件が急展開
・特捜“料亭密会写真”を入手 水谷建設からの接待証拠か


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