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陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「卒業」

2010-03-18 | 映画──社会派・青春・恋愛
1967年の映画「卒業」(原題 : The Graduate)は、誰もが認める優等生の青年が道ならぬ恋の泥沼に陥って破滅しそうになる危うさを描いた、アメリカン・ニュー・シネマ。
演出はひじょうにスタイリッシュでそそられるのですが、内容はいわゆる不倫もの。女性に振り回されっぱなしの青年は気の毒といえますが、危険な恋を拒めなかったがための自業自得。最後に真実の愛にめざめるものの、あまりの優柔不断ぶりで、好感がもてません。

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学業成績優秀で大学を卒業したベンジャミンは、周囲の期待をよそに、将来像を描けずにいました。そんな折、両親の共同経営者ロビンソンの妻から誘惑され、しだいに深い関係に…。

サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」をバックに流して、重ねられる禁断の逢瀬。しかし、ロビンソン夫人とベンジャミンとの関係は、ベンジャミンの娘エレーヌが登場したことで終わりを迎えつつありました。
とうしょは両親からのお仕着せで不本意に付き合っていたベンジャミンは、いつしか威丈高な夫人よりも、可憐な少女との恋に燃えるようになってしまいます。しかし、嫉妬に狂ったロビンソン夫人に関係を暴かれてしまい、身の破滅に。

ロビンソン夫人が執拗に娘との付き合いを妨害する理由を裏読みしたり、母にも娘にも捨てられた情けないベンジャミン青年がとんでもない行動に出るとか、いまなら予想できるような奇抜な展開は、その後まったくありません。

ラストの結婚式場から花嫁を強奪するシーンは、この映画があたかも最初のように言われていますが、1934年の映画「或る夜の出来事」ですでに演じられていますよね。恋愛映画の面白味としては、もちろんそちらのほうが上。

恋の何たるかも知らずに成人したお坊ちゃんが、オンナを知ったとたんに一人前の漢(おとこ)気取りなのが、失笑ものですね。最初は年上の女性に手玉にとられていたのが、初心な娘を惑わす。しかし、色男を気どっているのですが、どこか三枚目。ところどころの自虐的な演出に笑わされます。

前半はこじゃれたセンスと、ほんのりしたエロスを感じさせますが、主人公がダメ男で魅力なし。甲斐性がないのに、勢いだけで連れ出されてしまったエレーヌは、こんな男性といっしょでは幸せになれないのでは、といらぬ心配をしてしまいます。

相手の人生に責任が取れない、幸せにする力がないのに、求めるだけ恋愛は、けっして子どもを卒業したオトナがすべき恋愛ではないのでは、と私は思っています。

主演は、ロビンソン夫人に、「大いなる遺産」のアン・バンクロフト。
ベンジャミンに、ダスティン・ホフマン。「アウトブレイク」「ニューオーリンズ・トライアル」では知性ある職業人を、「レインマン」では知的障害のある兄を演じた実力派俳優。
エレーヌ役は、「明日に向って撃て!」のキャサリン・ロス。

原作はチャールズ・ウェッブによる同名小説。
監督のマイク・ニコルズは本作でアカデミー監督賞を受賞。
アメリカン・ニュー・シネマの代表作といわれていますが、無気力でいい子ちゃんな若者が中途半端な恋に溺れた衝動を緩く描いているだけで、あまり胸に残るものがないですね。

(2010年2月23日)

卒業(1967) - goo 映画

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