陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「レッド・オクトーバーを追え」

2012-10-25 | 映画──SF・アクション・戦争
1990年のアメリカ映画「レッド・オクトーバーを追え」(原題:The Hunt for Red October )は、東西冷戦が瓦解する直前の旧ソビエト連邦の原子力潜水艦で起こる事件を描いたサスペンス。

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ソビエトの沿岸を出航した最新鋭巨大原子力潜水艦レッド・オクトーバーを操る艦長マルコ・ラミウス。栄えある処女航海に乗り出したラミウスの胸中にはいまだ誰にも明かされえない決意があった。海軍の潜水艦コノヴァロフと合流せよという政治士官の命をひそかに握りつぶした彼は、動力源をキャタピラー・ドライブ(磁気水力推進装置)に切り替えさせる。かくして、レッド・オクトーバーは不気味な沈黙を保ったまま海底に雲隠れした。大西洋を秘めやかに進攻し、やがてキューバに達する進路をとる。

時は冷戦時代のまっただ中。
米軍の分析レーダーに探知されないように秘かにアメリカに領域に侵入してくるソ連の潜水艦、しかも最新型原子力のそれを米国側が黙って見過ごすはずがありません。いっぽう、ソビエト海軍のツポレフ艦長率いる潜水艦コノヴァロフは、政府より公式にレッド・オクトーバー撃沈の命を受け、追走していました。

ソビエト側ではラミウス艦長が精神錯乱をきたしたと判断し、アメリカ側にもレッド・オクトーバー攻撃の援助を求めています。たった一隻の潜水艦がもとで大国間の戦争の火蓋が切られては叶わないという政治的判断なのですが、これに異を唱えたのは、CIAの非常勤分析官で軍事ライターのジャック・ライアン。ラミウスの高潔な人となりを知るライアンは、ラミウスの真意を別のところに求めていました。ラミウスに確認をとるために奔走するライアンの懸命さが実り、米国の原子力潜水艦ダラスの艦長ともどもラミウスその人に接触することに成功。レッドオクトーバーに乗り込んだ二国の乗組員が立ち向かうべきは、原子炉の暴走でしかありませんでした。

艦内に潜むソビエト人破壊工作員の暗躍や、救済する側としてのアメリカという描かれ方は、いささかアメリカこそが正義のナショナリズムを体現したかのよう。しかし、士官とともに西側への亡命というラミウスの決意は、個人的な思惑を超えて、冷戦の週末を予感させるような、米ソ高官の密談をもたらし平和への解決を両大国が探る、という道しるべを築いたかのようにも受け取れます。けっきょく、ソビエト側が行方不明になったある潜水艦について不問に付したことがそれを物語っているのではないでしょうか。(追記:不問に付したのは、ソビエト側が亡命だと気づかなかったからなんですね)

終盤の水中での魚雷の動きなどCGがしょぼくみえる部分もあったのですが、艦内の様子などは綿密に描写されていて、緊迫感がありました。海軍を扱った作品の原点であったのだなとうかがわせるシーンがあって興味深いです。

監督は「ダイ・ハード」で知られるジョン・マクティアナン。
主演のラミウス艦長にショーン・コネリー。ライアン役にアレック・ボールドウィン。
原作はトム・クランシーの同名小説。
本作を初作とするライアンを主人公としたシリーズのうちいくつかは「パトリオット・ゲーム」「今そこにある危機」など映画化されているようです。

(2011年5月2日)

レッド・オクトーバーを追え! - goo 映画


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