陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

戦争を考える映画「ライフ・イズ・ビューティフル」

2023-08-15 | 映画──SF・アクション・戦争
※この記事は2009年8月14日分を、入院中に再投稿したもの。



アウシュヴィッツ強制収容所を描いた作品といえば、「シンドラーのリスト」や「戦場のピアニスト」が想起されるが、この「ライフ・イズ・ビューティフル」(1997年、イタリア映画)もまた、この忘れてはならない人類史上の闇をあつかった名作。ただし、こちらにはほどよくユーモアがあって、悲愴感が削がれている。
第71回アカデミー賞で7部門にノミネート、主演男優賞、作曲賞、外国語映画賞を受賞した感動作。

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1937年、イタリアトスカーナ地方の田舎町。
主人公は、本屋の開業を夢見て、友人とともにこの町に移ってきたイタリア系ユダヤ人青年グイド。
生活費の工面のため叔父の口利きのホテルボーイをしていたグイドは、ひと目惚れした小学校教師ドーラに、さかんにアピール。ドーラはこの土地の家柄のいいイタリア人のお嬢さんで町役人と婚約していたが、押しが強く魅力的なグイドに、惹かれてしまう。ホテルで行われた婚約パーティの席上から、ドーラを連れ去ったグイド。ふたりはめでたく結ばれて、数年後には男児をもうけた。

だが幸せな日々は、ムッソリーニ政権下のユダヤ人迫害の気運によって、壊される。グイドと息子のジョズエは叔父ともども、強制収容所に送還。妻のドーラも彼らを追って、あえて収容所送りの列車に乗り込む。
絶望と死の恐怖が満ち満ちた収容所の生活。周囲は暗い顔をした人間ばかりだが、グイドは幼い息子を怖がらせないために、楽しい嘘を語って聞かせる。やがて、それは命がけで息子を救うことになる。

前半部のグイドの求婚時代のドタバタ劇がなんとも愉快爽快。
婚約式から未来の花嫁を連れ出すなんて使い古されたパターンであるけれど、イタリアを舞台に身分違い、民族を隔てた恋というのはあの「ローマの休日」にも似ている。グイドはかなりの三枚目で、いっけん貧弱そうにみえますが、かなりの勇気と行動力の持ち主。そして、家族への愛情に溢れている。
みずからの危険をかえりみず、妻や脅える息子を機転を利かしたやりかたで励ます手法はみもの。
チャップリン映画のような、ペーソスたっぷりのおもしろさに溢れている。だが、ラストは涙を誘わずにはいられない。

原題は「La vita è bella」で、邦題は英訳をそのままカタカナにしたものだが、軽い感じがするので、できたら適度に翻訳してほしかったところ。タイトルからして、当初、キザな詩吟めいた告白をするだけのメロドラマチックな恋愛劇かと思っていたが、予想を大きく裏切られた。主人公はけっしてかっこいいわけでなく、どちらかといえば損な生き方をしているような気がするが、こういう逆境でも明るい笑いを忘れない強さこそが、すばらしい生き様なのだということを教えてくれるような気がする。

余談だがレンタルしたビデオがかなり痛んでいたので、途中から早送りでしか観れなかったが、字幕版だったので筋書きだけは追えた。ただ肝心のシーンの声の調子や音楽が聞けなかったので、再視聴したいところである。

監督・脚本・主演の三役をつとめたのは、イタリアの喜劇俳優ロベルト・ベニーニ。2002年公開の『ピノッキオ』でゴールデンラズベリー賞を受賞するなど、実力派。ドーラ役の女優ニコレッタ・ブラスキとは、実生活でも夫婦。

(〇九年七月二十八日)

ライフ・イズ・ビューティフル(1998) - goo 映画

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