陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

二次創作者は、プロフェッショナルの前ではただの消費者に過ぎないわけでして

2021-01-09 | 二次創作論・オタクの位相

HSP気質の人は、他人の思惑や感情が自分のモノにできる。
なので、俳優業や作家業に多いそうです。他人のコピーができる、といえば二次創作もそうですね。

私は同人誌を出さないオン活動のみの、しがない字書きです。
以前にちょろっと洩らしましたが、若い頃には絵も描いていましたし、雑誌に投稿もしていました。なお、四コマネタ漫画は描いたことがありますが、ストーリー漫画は手掛けたことがありません。コマ割りとか、ネーム構想、下書き、ペン入れ、トーン貼り、そんな何段階も経る制作過程は私には無理です。

私はプロの漫画家もましてや小説家もめざしたことはありません。
画家や彫刻家を目指したことはありましても、そうした「楽しく」「わくわくさせる」ものを「売り物で」つくるのは、自分には向いていないという確信がありました。絵はともかく、立体物は学生時代に万を超す作品を見てきたので、一家言あります。

そんな私ですが。
高校時代に興味があって、漫画家さんマニュアル本を買ってしまったことがあります。
歴史ファンで愛読している里中満智子先生のNHK講座があったんですね。そのテレビ番組を本にしたものでした。今は捨ててしまいましたが、漫画の制作工程が載っていて、1分で読み終えてしまいそうな月刊40頁ほどの漫画でも、かなりのご苦労があったと理解できました。

同じころ、好きなアニメ作品の設定資料集もよく読んでいました。
アニメーターの絵コンテや原画が載っています。キャラクターは何度も会議にかけて、やっと決まったという。

放火事件のあった京都アニメーション社の件でも知りましたが。
アニメには色彩設計という専門職もあり、音響さんふくめ、実に多様な職種の人が関わっています。アニメヲタクは、声優か、主題歌歌手か、作画監督ぐらいにしか興味がありませんが、制作を支えている裏方さんは大勢いますよね。

こうしたプロフェッショナルの手掛けた仕事の神髄を子どもの頃から出版物などで知っている身としては、二次創作者さんが他人の生んだものを借りながら、自分のことを創作の神かのように自負することに、私はとても疑問を感じます。

漫画家でも、華々しく受賞してデヴューしても、飛ばず鳴かずの売れない期間がある。
そのあいだは、他の作家さんの下請け、アシスタントをして過ごすしかありません。自己主張の多い人には耐えられないですよね。

最近はピクシブで人気を得たり、同人誌サークルでネームバリューを得てデビューする人も増えています。でも、どこか二次創作カラーというか、一般の好事家が読むとズレているような表現や類型的なキャラ造形が目についてしまうことがあります。

もちろん。プロの作家よりも、二次創作のほうがおもしろいなんてこともあるかもしれません。
でも、冷静に考えてほしいです。
その二次創作の名前やキャラデザインや設定の原作から借りている部分をすべて抜いてみたら、ほんとうにおもしろいですか? とくに二次小説は、キャラ名をAやらBやら名無し化して読んでみたらよくわかります。自作でも、そうやって読んでみたら萌えがいっぺんに醒めます。でも、他人の創作のアイデアを借りるってそういうことですよね。まがい物は本物にはかないません。

では、創作者を自負するあなたがホンモノになるには?
それは、誰も手掛けないようなオリジナルを生む。マーケティングリサーチして、投資できる資本や支援できる人脈をも考えて、戦略を立てていく。漫画やアニメばかり真似るんじゃなくて、演劇や映画や、他のことにも関心をひろげていく。サブカル以外のひととも、幅広く付き合って刺激を受けないと、一般社会人の感覚からずれます。自分の二次創作がSNS上で評価されないだとか、プロ作家のあいつは駄目だとか、そんなことを考えている余裕なんてないはずですね。

以上のことは、ホンモノのプロ作家がいえば説得力があります。
しかし、プロの方は自分の評判が落ちるのが怖いので、賢明ながら、こんな本音を言わないし、若い後継がでてきたら応援しますよ、というスタンスを打ち出してはいます。

良心的なプロたる彼ら彼女らが、私たちのような無知なる読者を傷つけないのは、自分たちもまたすぐれた先行作品や作家に育ててもらった恩を忘れていないからなのです。


【二次創作者、この厄介なディレッタント(まとめ)】
趣味で二次創作をしている人間が書いた、よしなしごとの目次頁です。
二次創作には旨みもあれば、毒もあるのですね…。

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