陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「提督の戦艦」

2016-12-07 | 映画──SF・アクション・戦争
2008年のロシア映画「提督の戦艦」(原題:Адмирал)は、ロシア帝国末期に活躍した海軍司令官の壮絶な半生をえがく史劇。

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第一次世界大戦中の1916年、バルト海。
指揮官アレクサンドル・コルチャーク率いるロシア帝国の戦艦スラヴァは、知略をめぐらした機雷戦によってドイツの最新鋭戦艦との激戦を制す。ヘルシンキの戦勝祝賀会でアレクサンドルは戦友セルゲイの美しい妻アンナと出逢い、恋に落ちてしまい…。

海洋軍事アクションと銘打ってはおりますが船上のシーンばかりではないですね。
後半は陸上での内戦状態になるのですから。

妻子ある身ながら人妻に惹かれていく主人公。そして、打ち続く戦績によって、黒海艦隊司令長官への昇進も果たす。妻アンナとアレクサンドルとのただならぬ雰囲気(といってもまったく清い関係のままなのですが)に勘づき、警戒心を強めるセルゲイに遠慮し、ふたりはいったん距離を置こうとするものの日増しに想いは募るばかり。

やがて1917年のロシア革命を迎え、ソビエト共産党政権下に。
英雄として誉れ高い海軍の勇たちが追いつめられていきます。甲板で叛乱を起こした水兵に戦艦の明け渡しを迫られるあたりは、あの「戦艦ポチョムキン」を思わせますよね。臨時政府に恭順の意を示さず亡命を決意したものの、ボリシェビキとの戦いに身を投ずるアレクサンドル。保身のために当局側に寝返った夫に愛想を尽かしたアンナは、アレクサンドルのもとへ。

こののちアレクサンドルは英仏の後援でチェコスロバキアと同盟を結び、最高執政官として反革命軍(白軍、自衛軍)の先頭に立ち東部を制圧しますが、次第に戦況が暗転。最後は裏切りによって非業の死を遂げることになります。

追いつめられていくアレクサンドルに常に寄り添い、ついには結婚を誓うアンナ。処刑を間近に控えても気丈に振る舞い、アンナのことを想うアレクサンドル。お互いに健気ですね。ラストで時間がさかのぼるのは「タイタニック」を思わせます。

アンナ、セルゲイ、およびアレクサンドルの先妻ソフィアとその息子のその後につても軽く触れられていて、史劇としては長過ぎずそこそこのできばえではないでしょうか。戦争ものはたいがい退屈なのでテンポが速いのは大歓迎。軍人の埋葬シーンが衝撃的ですね。海に帰すというのは隠蔽なのか、それとも敬意なのか。

監督はアンドレイ・クラフチェーク。
主演はコンスタンチン・ハベンスキー、 エリザヴェータ・ボヤルスカヤ。

(2011年6月15日)

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