陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

熱闘すぎる甲子園

2017-08-03 | フィギュアスケート・スポーツ
高校野球といえば、四年に一度は夏季五輪に話題をさらわれるけれど、あとの三年はかならずスポーツ記事の多くを占める夏の風物詩。
現在は朝日新聞の主催ですが、なんと、明治末には、野球は不良がおこなうスポーツと揶揄されていたそうです(「野球害毒論」)。大学野球の高ぶりに危機感を覚えた教育者たち、『武士道』を著した新渡戸稲造、あるいは乃木希典までもが、健全な青少年の教育に相応しからずと唱えたのだとか。しかも、当時、野球批判の急先鋒を担いでいたのが、朝日新聞(当時の東京朝日新聞)だったというから驚きです。これに抗して擁護論を展開した弁士たちもいたらしく、読売新聞社は職業野球ならばよかろうと、東京巨人軍というプロチームを組織。のちのジャイアンツですね。

実際のところ、当時、野球に入れ込み過ぎて留年したり、応援合戦が白熱しすぎて場外乱闘まがいだったり、道具などが華美を極めて勉学を疎かにする学生が続出だったようで。趣味に走り過ぎて、家庭を顧みないとか、生活能力がないというのもたしかに考えものではあります。

そろそろ高校野球の甲子園出場校が出そろう見通しですね。
プロ野球には興味はなくとも、野球のルールには疎くても、ど田舎だと、必須の関心ごとだったりします。自分の母校の、地元の、晴れ舞台に一喜一憂しない人は少なくないはずです。

ここ数年興味深いのは、伝統ある古豪と呼ばれた高校があっさり負けたり、新進気鋭の高校が大穴で浮上したりすること。昨年本選でいいところまで進んだチームが敗退してしまうのは、やはり引退して顔ぶれが変わったためなのか。

私の母校は進学校でグランドが狭かったせいか、もともと弓道やバドミントンなどの室内競技のほうが優秀。私の在籍中は、硬式野球部はありませんでした。しかし、なぜか、ここ数年、歴史浅い硬式野球部ながらも、地方大会でわりと勝ち進んだりしています。いちども甲子園は出たことがないのですが、甲子園で名を馳せた有名校を打ち破ることがたまにあって。これはなぜかといいますと、かつての強豪校は実業高校や、有名監督がいる地方高校が多くて、甲子園に行く高校というだけで就職できました。田舎ですと、甲子園でベンチ入りだっただけで、旧国鉄(現在のJR)にすんなり職を得たというお話もちらほら。それだけ、甲子園に行くということが神聖視されていたのですね。ところが、最近は、大学進学する野球部員が多いからと考えられます。高卒でプロ野球入りしたけれど、引退後に指導者になるために大学進学した有名選手もいますし。すぐにプロ野球選手になれる実力者ならばいいけれど、…という万が一を考えての保険なのでしょう。監督の引き抜きで学校のパワーバランスが変わることもありようですね。

それにしても、決勝戦が近づくにつれて連日連戦で過酷になるスケジュール。
野球のスパイク、けっこう凶器になりますし、ボールも当たれば痛い。投手は投球しすぎで肘を壊す。捕手は激突してくるスライダーで負傷。ナインが熱中症で倒れて、というケースも。

今年の地方大会、話題をさらっていたのは、高校生記録タイに並ぶホームランを放った超有望株・清宮選手。ところが、所属する早稲田実業が惜しくも決勝で敗れ、記録はここでストップ。少し前の将棋界の新星・藤井聡太四段に対する加熱報道が語るように、どこの業界でも世間は記録破りの若き天才を求めているものです。しかし、ハンカチ王子だのなんだの騒がれた選手がいまは見る影もなく、殿堂入りを果たしたかつての伝説の球児が麻薬に溺れたりもする。

高校野球、別に我が母校が出場しなくともよいが、おのが地元校がそれなりに勝ち進む分には興味をもってラジオを聞くぐらいの関心。母校が連戦連勝するのはおめでたいけれど、寄付金の回収も増えてくるようです。遠征が大変だから、本命の地元校が敗れたならば、エリート校ではなく、遠方の田舎で少人数で回しているような、ぽっと出の奇跡のような出場校を応援したくなります。

三年後に開催予定の東京五輪も、猛暑日記録更新中の熱地獄日本のありさまを鑑みて、どうやら危機感が募っている模様。熱中症の後遺症を考えますと、そろそろ甲子園ではなく、東京ドームのような屋根付き屋内球場での試合も悪くないのかも、と考えてしまいます。

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