陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。

映画「アンダーグラウンド」

2017-08-05 | 映画──SF・アクション・戦争
戦争をあつかった映画をある程度観てきたが、仮にもまったくの作り話とはいえ、そこには制作者の反戦メッセージなり何なりが籠められていた。
だが、この映画、1995年作の「アンダーグラウンド」はどうだろう。正直、度し難い。序盤はあまりにもおふざけすぎていて話にならないが、後半になると一挙にシリアス。しかも、卓越した構成で視聴者をラストまでひっぱっていってしまう。

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念のためにいっておくが、これは明らかにうまい虚構だ。できすぎた話だ。しかし、あまりに現実味が合ったと思ったのは、その五〇年に及ぶクロニクルのせいだろうか。
ストレートに描くよりも、これほど変化球に富んで戦争批判をした映画は、かつてなかったようにすら思われる。

物語は三部構成をとっている。
1941年、ナチスドイツに侵略されていたユーゴスラビア。
悪徳武器商人のマルコは、電気工だったクロを誘い、共産主義者のチトーに与してゲリラ活動を展開、義賊と評判を得る。マルコは弟のイヴァンやクロの家族らを、自分の邸の地下室に避難させた。
また、逮捕されたクロを救出した際に、誤爆で負傷し、地下に匿われることに。
45年に終戦を迎えたが、地下の避難民たちには知らされなかった。

1961年、ユーゴスラビア連邦のチトー政権の片腕として出世したマルコ。かつて、クロの愛人だった女優のナタリアは、彼の妻にされていた。いまだ地下に潜むクロは、自分が革命の英雄として亡き者扱いされていることを知らない。
マルコは、避難民をいまだドイツの占領下だと騙し、武器を製造させては、海外に密売していたのだった。だが、ある日、クロは息子のヨヴァンとともに地上世界に顔を出す。20年ぶりに訪れたそこは、はるかに発達した文明社会で戦争などなかった…。

と、ここまで書くとただのタイムスリップ物みたいに思われるのだけど、そこで終わらない。
さらに第三部のユーゴスラビアの国はすでになく、内戦が激化していた1992年。生き延びたマルコはあいかわらず、戦争で儲けようとするも、悪事が暴かれてしまう時が来る。しかも、誰あろう意外な人物によって。

ラストを現在の忌まわしい混乱の祖国から一転、幻想的なシーンにしたのは、監督の願いだったのか。
音楽がかなり軽妙に用いられているので、重いテーマを扱っているにもかかわらず、暗さがない前半。だと思っていたら、最後にはかなり煙に巻かれた気分になる。
マルコによって騙されていたのは、むしろ我々視聴者なのだろう。

監督は、エミール・クストリッツァ。あまりにも斬新だがスキャンダラスに満ちた内容だったため、公開当時、海外で賛否両論絶えなかったとか。

アンダーグラウンド(1995) - goo 映画

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