陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「パーフェクト・ワールド」

2017-07-31 | 映画──社会派・青春・恋愛
1993年のアメリカ映画「パーフェクト・ワールド」(原題:A Perfect World )は、脱獄囚と人質の少年との友情を描くヒューマンドラマ。
主演はケヴィン・コスナー。監督はクリント・イーストウッドで、警察署長役でも出演。

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1963年、テキサス州のアラバマ刑務所を脱獄したブッチ・ヘインズは、おなじく脱走したテリー・ビューとともに、八歳の少年フィリップの家に押し入る。やむなくフィリップを人質にして逃走した二人。しかし、フィリップに危害を加えようとしたがため、ブッチはテリーを射殺してしまう。

父親のいないブッチ少年の境遇に、みずからの悲しい生い立ちを重ねあわせるブッチ。母子家庭で宗教上の理由から、子供ながらの楽しみを奪われて寂しい思いをしてきたフィリップ。ふたりは逃避行を重ねながらふしぎな友情を紡いでいくとこになります。ま、主演が主演だけに極悪人であるはずはないんですけれどね。タイトルのパーフェクトワールドとは、ブッチが父親との思い出にまつわる場所アラスカのことでした。

事件の指揮をとるのは警察署長のレッド・ガーネット。
彼はまだ幼くして過ちを犯したブッチの更生を期待し、あえて保護観察ではなく少年院送りにした人物でした。しかし、少年院を出所したブッチは、つぎつぎに犯罪に手を染めていったのです。レッドはそのため自責の念にかられ、みずからブッチの逮捕に乗り出したのでした。
追う側の方にもドラマあり。仕事ひと筋で硬派、捜査班の意向お構いなしmpレッドに、なにかともの申す新人の女性犯罪心理分析官サリーのあいだに芽生えるほのかな交情。このあたりはイーストウッドの映画ではおなじみの構図ですね。

ブッチとフィリップは親子と偽りながらの逃亡先で、二、三の家族連れや大人たちに出会います。中流家庭ながらしつけの厳しい母親、子供を殴りつける黒人の祖父、ほんのささいな出来心で子供を叱りつける店員。ブッチが彼らに向ける怒りは、すべて虐げられた幼年時代の仕打ちに対する敵討ちのようなものでした。

フィリップに銃の構え方を教えるブッチは、自衛策を教える親心であるともいえる。しかし、愛情を得られなければ暴力で応えてもいいというブッチは、「悪のヒーロー」というきれいな呼び名では片づけられない犯罪者であり、人生からの落伍者に過ぎない。ブッチと疑似親子のようなやりとりを結んでいても、フィリップは犯罪者の息子にはなりきれない。「テルマ&ルイーズ」のように追いつめられたパートナーに引きずられて良心的な方が同化してしまうというパターンではありません。

少年フィリップの勇気ある行動がブッチを追いつめてしまい、しかし、少年の優しさが絶えずみずからの手を血で染めつづけねばならなかったブッチの悔悛を誘います。しかし、悲しい別れが…。

警察署長のレッドの存在は、読者の代弁者とでもいうべき立場。
誘拐事件を政治に利用する判事の思惑など、アメリカならではの生々しい事情も描かれています。一度でも銃やナイフを抜いた者には銃やナイフで立ち向かわねばなならない。悲しい武力の報酬が起こしてしまう結末です。

札付きの悪人の父親から引き離されたがために、ならず者へと落ちくれた主人公はまた、よかれと思って子供のためにした行動のために報いを受けてしまう。傍目から見れば虐待や懲罰、教育に悪いと思える親の振る舞いは、当の子供本人にとっては幸せの許容範囲でもある。フィリップがブッチを傷つけてしまったのは、彼があくまでほんとうの父親ではなかったから。完璧な愛情のある世界など存在しないけれど、不完全である人間がやさしさで触れあおうとする世界は存在する。その一端を示しただけで救いはある物語といえます。

(2011年6月27日)

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