陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

好きで楽しい仕事だからといって、続けられるとは限らない

2023-06-23 | 仕事・雇用・会社・労働衛生

私はすでに不惑の年を迎えています。
会社員として転職するにしても、もう先行きが見えています。労働条件や勤務地の近さを優先すれば、どうしても、ほんらい自分がしたかった職種をあきらめざるをえません。ちなみに、個人事業主のほうは法律好きな私の性分に合っているといえますが。

今から10年ぐらい前のこと。
ちょうど拙ブログ初期のころの日記にも書きましたが。当時、私は専業の会社員でした。


私は願ってもない職種にありつくことができました。
企画編集職で、当時使いこなしていたイラストレーターやフォトショップを使用する。しかも正社員職。アットフォームな会社で経営者は三代目の老舗企業。私には社風が合っていました。直属の上司は芸大出身者で、美学美術史専攻の私と気が合いました。

はじめてのクリエイティブな仕事。
私はとても浮かれていました。デザイン関連の書籍を買い、カラーガイドを買い、休日は産業企画展に顔を出し、商品ディスプレイの取材をする。データは自宅に持ち帰って作業、朝は早ければ7時前出勤、夜は遅ければ21時まで。そんな生活が続きました。手取り額としてはかなり低く、家賃と生活費を払えば、3万円ぐらいしか貯金できない。

その仕事が楽しかったのは最初の数箇月のみ。
次第に企画編集とは異なる仕事が増えはじめます。営業さんの企画提案書の下書き。それをもって契約にこぎつけた営業の手柄で、こちらには実績にならない。営業さんからはいろいろな雑用を頼まれ、経営者からはしまいには私の自腹(あとで精算してくれたが)での買い出しすら、依頼されました。

正社員として会社に雇用されることは、自分が好き勝手に自由な仕事を選べないことなのだと気づいたのは、すでに30歳になっていたときでした。私のほかに、その商品企画部にはデザイナーさんもいましたが、その人は勤続年数が長いにもかかわらず、ボーナスもなしの薄給で飼い殺しにされていました。あんなに素早く、素敵なデザインができるのに、あんな待遇だなんて。会社からすれば、利益を生まない専門職に高給を与える必要はないと。いまならば、こうしたクリエイティブ職すらアウトソーシングになっています。

イラレやフォトショというDTPソフトを極めるには、かなりのお金もかかります。毎年のようにバージョンアップするソフトウェア。とてもその薄給では割に合わない。からだを壊し、家庭の事情もあって、私はその職を辞します。

いまでもその仕事に未練がないかといえば、そうでもありません。
画像をいじったり、フォントを変えたりして印刷物を作成する作業が楽しくないはずがありません。学生時代に学内刊行物をいくつも手掛けてきた自分からしたら。

しかし、長時間も、休日も、その仕事に没頭していて、私は頭痛や吐き気に悩まされることになりました。社内イラストレーターをしていて過労死した家族のことも、頭をよぎりました。

転職活動のたび、職務経歴書では、その最初の正社員職が話題になります。
イラレやフォトショが使えるんだ、じゃあ社内パンフやポスターを作ってもらおうかな、合間時間に。そういわれるたびに、ぞっとします。企業にとっては広報物は、ただの雑用仕事でしかなく、さっさと終わらせるべき仕事。当人がどれだけ感性を駆使したかなんてどうでもいい。

だから、私はいま、クリエイティブに見える仕事に就きたいなんて思いません。
とても身も蓋もない言い方ですが、自分が好きで楽しい仕事を続けるには、強靭な肉体と鋼のメンタルが不可欠です。仕事ははじめるよりも、続けるほうが難しい。

もし現在、そのお仕事に就かれている方がいましたら。
どうかご自身のおからだけは大切になさってください。

(2020.06.18)





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