陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「雨の朝パリに死す」

2010-07-10 | 映画──社会派・青春・恋愛
1954年の映画「雨の朝パリに死す」は、タイトルからしてなかなか衝撃的で犯罪映画なのかと思わせますが、じつはただの夫婦の愛の破綻を描いたもの。とくに何かしかけがあるわけでもない。
主演のエリザベス・テイラーの魅力で持っているような映画ですね。

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第二次大戦後のパリ。米国の中尉チャールズは、美しい娘ヘレンと恋に落ち結婚。昼間は通信社の記者として働き、夜は小説執筆に明け暮れる。二人の間には愛くるしい娘も生まれた。
しかし、作家として一向に芽が出ないチャールズは焦燥感を抱え、深酒に。いっぽう、夫の執筆活動を影ながら支えながらも、満たされない妻のヘレンは、夜遊びざんまい。夜会でもてなしてくれる成功した画家や作家に囲まれている妻に、チャールズは鼻持ちならない。しかも、妻はポールに惹かれてしまう。

ヘレンへのあてつけに、取材で知り合った貴婦人と遊ぶチャールズ。酔いつぶれて帰宅したまま、眠りこんでしまった。そこへ雨に濡れたまま、夫がドアを開けてくれるのを待っているヘレン。彼女はその雨がたたって、翌朝息をひきとってしまう。

いっけん妻の方が遊び人ふうで無責任に思われるのですが、随所に夫のことを想っている場面がちらほら。浮気したのも夫に振り向いてほしかったからなんでしょうけど。そして、このチャールズ、舅の財力に頼って生活しているし、舅だって彼の才能を責めてはいないのに、男の沽券が台無しにされたなどと文句をいう。

しかも、ヘレンの死後、義姉のマリオンに預けていた娘を取り返そうとします。
自分の執筆にじゃまだからと追い払ったくせに、今さら虫がよすぎませんか。しかも、マリオンは元もとチャールズのことを愛していたんですね。ですから、チャールズ夫妻は、ヘレンの姉夫婦も不幸にしていると言わざるを得ない。

お涙ちょうだいのメロドラマを狙ったのでしょうが、まったく感動できませんでした、私には。

主演はエリザベス・テイラー。共演は、夫のチャールズ役にミュージカルスターのヴァン・ジョンソン。ヘレンの物まねをして夫婦喧嘩を一人芝居で口走る部分はこっけいです。
ポール役が、「007」シリーズで売れっ子になったロジャー・ムーア。

監督はリチャード・ブルックス。
原作は、フランシス・スコット・フィッツジェラルドの短編小説「バビロン再訪」
フィッツジェラルドは「華麗なるギャッツビー」で知られる失われた世代の作家。ヘミングウェイもそうだけど、この第一次世界大戦後の無気力感や退廃主義はあまりなじめないです。とかく90年代以降無感動・無関心・無気力といわれる若者にあてはまりそうな現象だといえなくもないけれど、こういう何かを諦めたムードっていつの時代もあったのではないでしょうか。



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