陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

選挙の盲点

2014-11-20 | 政治・経済・産業・社会・法務
今年ももう50日もないなんて、驚きです。
ほんとにいろいろありましたよね。ありすぎて、もう1箇月前に何が起こったか覚えていないくらいです。もう国民の皆さんも驚き疲れたのでため息しか出ない。で、極めつけはこれです。師走の忙しい時期に、衆議院の解散総選挙。

決まっちゃったものですから、行くか、行かないかしかないわけです。
でもねえ。もう忘れられてるんでしょうけど、大義なき選挙っていうのが、つい最近もありましたよね。すごく既視感がありますよね、このやり口。そう、今春の橋下徹氏による大阪市長選。勝つのが分かってるのに、自身の主張する大阪都構想に固執して、その信を問うために、わざわざ出直し選挙。で、どうでした? もちろん、橋下さんは勝ちますが、彼の主張するとおりにはなりませんでした。あたりまえですよね、だって、その構想には莫大な経費がかかることが市民に知れ渡ってしまったから。

そのとき、橋下氏に対する抵抗勢力となったのは自民党。
大義なき選挙だと鼻であしらって、対立候補すら立てませんでした。で、どうです。今度はその自民党のトップたる安倍首相みずからが、解散総選挙やるというのです。ミイラとりがミイラに、ってことでしょうか? ちなみに橋下さん、自分の我がままで市長に再選されたのに、また椅子放り投げて、今度は国会議員になるそうです。責任逃れだとしか言いようがありませんよね。

安倍首相いわく、「消費税増税の信を問うため」らしいのですが、すでに先送りが与野党合意で決まっているので、それは選挙の争点じゃない。だとすると、野党もごたごたして抵抗力がないうちに、自民党有利なうちに選挙して人員入れかえておこうという腹づもりらしいです。これまでなら、ひとつの内閣がぽしゃると、次の首相候補が立候補して党内でポストを下げ渡していくのが習慣でした。それに比べたら、国民に直接投票してもらおう、というのはよい機会に聞こえますよね。

でも、現実、日本国民のほとんどは日本のトップがすげ替わることを望んでいないように思います。だって、民主党で政権交代したときに外交が混乱して地獄を見てしまったから。勢いのある維新の党も、ならず者の寄せ集めで当てにならないと悟ったたから。だから消去法でまだ自民がましだろう、と。諸外国だって、まーた日本選挙やるの? また首相替わるの? と白い目で見ているとか。

まあ、安倍政権はちょっと暴走しすぎかなという気もしないでもないので、お灸を据えるにはよい機会と見る向きもあるでしょう。でも、選挙には700億円の税金がかかる。そのお金をなぜ復興に用いないのという意見もありますよね。

私、いつも思うのですが、この選挙って、これまでの政策、もしくはこれから行おうとする政策の良し悪しを、国民が直接聞けるようにできないものかな、と思うんですよね。人名や党名を書くだけではなくて、こんな政策をしてほしいとか、この政策はよかったとか、採点できるようなシステム。だって、メディアが出口調査なんかで出してる数字はいじってる可能性ありますよね。

この人ならだいじょうぶ、と思って投票したのに、当選した途端、公約を破るという例が後を絶たない。汚職をしたのに、すぐに復職してしまう。国民が忘却することに味を占めてしまったので、政治家はちょっと傷ついても、裏に引っ込んでれば回復できるようになったのです。その最大のリセットイベントが総選挙。だって、政権交代前にあれほど叩かれていた麻生さんなんて、アベノミクス効果が出始めると世界中でちやほやされて英雄扱いになってましたよね。

国民も政治家に失望してますけど、同じくらい、政治家も日本の国民に、というか債務残高が先進諸国内トップであるという状況に絶望しているのではないでしょうか。過去に大阪府の財政赤字を好転させた橋下さんですら、かつての存在感はありません。ちょっと景気がよくなってくれば、過去の業績を忘れてしまいます。

アベノミクスで景気が上向いたのは事実です。
最低賃金が上がり、求人数も増えました。しかし、8パーセントの消費税増税と円安による原料高でインフレが進んでいます。投資家と輸入先の多い大企業は懐があったかいでしょうが、多くの中小企業は減益になっておりました。社会保障費も値上げし、個人の所得税に復興加算税もあるのに、法人だけは免除。実質賃金は変わりないのに生活費がかさみ、消費が抑制されたのでけっきょく内需は膨らまなかった。円安は、外国に所得をばらまいただけです。しかも、安倍政権は諸外国歴訪で、つぎつぎに他国に支援を大盤振る舞いしていました。お金で買った外交になんの意味があるのやら。

他にも、この政権でおかしな政策はありました。私が記憶にあるかぎり、列挙してみると。

・カジノ法案による経済振興
・派遣法改正、残業代ゼロ法案による労働者いじめ
・野田政権と約束した議員定数削減の無視
・大学入試センター試験に変わる新たな学力テスト導入や道徳の義務教科など、子どもに負担のかかる教育政策
・名ばかりの「女性が輝く社会」推進政策
・北朝鮮拉致問題解決の会談で弱腰対応
・無駄な公共事業の復活で建設費用の高騰、民間工事を圧迫
・特定秘密保護法の強制成立
・集団的自衛権の行使容認

どのような政策にも一長一短あり、すべての政権があらゆる国家の抱える難題を解決できないのは道理です。でも、集団的自衛権の行使容認にいたっては、あきらかに国民の声を無視していますよね。

代議士って、国民のあくまで代理人なのであって、自分の名声を残すために自分がしたい政策を他人のお金をつかって行える人ではないはずなんですよね。怖いのは、いま我々が選んだ政治家が行ってきた愚策のツケが廻ってくるのが、数十年も先で、責任を取らないでいいのを承知で、老獪な政治家が平気でそれを行っていることです。

自分の子どもや孫に膨大な借金を残す、負の遺産をむりやり受け継がせることがわかっているのに、いま、どうでもいい道路づくりや、頼んでもいない政策に湯水のようにお金つかう人がいますか。

子どもを産もうとしなかったり、働こうとしなかったり、買い物をしようとせずに貯金に励むのは、すべて国の先行きに期待がもてないからです。日本は暴動こそ起きないですが、穏やかなテロが進行しているだけです。消費税についての文句は言うのに、子育て財源が、介護や医療費の財源がというのに、いまの年金受給者の誰ひとりとして、では年金を削ってください、私は我慢します、これからの世代のために、とは言いません。投票権を18歳に押しさげると共に、政治家に65歳までの定年制をもうけるぐらいでないと、おそらく,同じことは永遠に続くんでしょうね。

問題なのは、すでにシニア世代とされる現代の日本人のほとんどが成熟していないことに尽きます。いつまでも、誰かが、次世代が解決してくれるだろう、という考えが席巻しているのです。自分のできなかった不安を、子どもや孫に大きな負担と過大な期待として押し被せているのです。むしろ、経済成長を望まず、身の丈にあった暮らしを望むつつましい若者たちのほうが、これからの時代にあった生き方ができると言えそうですね。若い方には、ぜひとも、今回の選挙に足を運んでほしいものです。目先の派手な候補者の言動に惑わされないように。


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